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このページでは、相続において、養子はどのような立場となり、また相続人としての資格はどうなるのかといった事柄について解説します。
養子には、実は「普通養子」と「特別養子」の2種類あることをご存知でしょうか?それぞれの違いは、以下の通りです。
尊属や年長者を養子とすることはできませんが、それ以外の場合であれば年齢制限はなく、実親との親子関係も継続したままで、当事者間の合意があれば養子縁組が成立します。ただし、未成年者を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が必要となるのが原則です。
原則6歳未満が対象(ただし、6歳未満から事実上養育していることが認定された場合は、8歳未満まで可能)で、実親との親子関係は断絶され、家庭裁判所の審判を受けなければなりません。
つまり、養子とひと口に言っても、養子には2種類あることがお分かりいただけるでしょうか。相続の権利は養子の種類により異なることはありませんが、相続税の算出にあたり、普通養子と特別養子では違いが生じます。その点を踏まえ、以下の例を見てみましょう。
A.養子の方は全て相続人となります。ただし、普通養子の場合、相続税の計算をする場合に、相続税の控除の対象として法定相続人の数に入れられるのは2人まで(実子もいる場合は1人まで)となっています。一方、特別養子の場合に相続税の控除対象として参入できる人数に制限はなく、何人でも相続税の計算をする場合の法定相続人の数に含めることができます。
ご覧の通り、普通養子と特別養子では、違いがあります。なぜこのようなことになっているかと言えば、相続税の節税対策として、安易に法定相続人の数を増やさせないためです。相続人の数が多ければ、その分相続税の控除額は大きくなります。この制度を悪用し、節税対策で養子を増やすという不正があったため、このような決まりとなっているのです。
一方、普通養子にあって特別養子にない特色としては、普通養子は実親、養親の両方の相続人となることができるという点があります。前述の通り、普通養子は養子縁組をしても、実親との親子関係が断絶されるわけではないためです。
もうひとつ、普通養子の場合、代襲相続に関する注意が必要です。「子供が先に亡くなっている場合、相続人は誰になる?」のページでも触れていますが、養親より先に養子が亡くなった場合、養子の子供(養親から見て孫)が代襲相続できるか否かは、この孫が養子縁組前に生まれたのか、養子縁組後に生まれたのかによって変わります。前者だと代襲相続できず、後者なら代襲相続できます。
以上の通り、養子の相続は、様々な要素によって、相続権の有無や相続税の算出方法に違いが生じます。不明点がある、対応策に悩んでいるという場合には、専門家である弁護士の助言やサポートを受けるのが賢明です。
養子縁組を行うことで、相続時に以下のようなメリット・デメリットが生じます。
血縁関係のない子どもを幼少期から育てていた場合でも、養子縁組の手続きを踏まなければ相続人としての権利が得られません。子どものいる相手と再婚した場合も同様です。血縁関係がなければ立場上赤の他人と見なされ、相続権も扶養義務も発生しません。養子縁組をしておくと、実子と同様の立場が保証されるため、養子になる子どもとしても安心です。
相続する人数が多ければ多いほど、相続税は少なくなります。相続税には、「3,000万円+法定相続人×600万円」の基礎控除額というものがありますが、この制度の悪用を防ぐため、法定相続人として認められる養子は2人までと決められています。実子が1人いる場合は、実子1人、養子1人の計2人までです。相続税以外にも、生命保険金・死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算において、相続人が多いほうが有利となります。
また、養子縁組は子だけでなく、孫とも結ぶことができます。養子縁組した孫に相続させることができれば、子に相続させた財産を、子の死亡後に孫に相続させる、という過程を一代飛ばすことができます。そのため、子と孫で二度支払うべき相続税が一度で済むため、相続税が有利になる可能性も。ただし孫養子の場合は相続税が2割上乗せされるため、必ずしも有利になるとは限りません。事前にシミュレーションをして検討するとよいでしょう。
相続人が増えることで相続税は有利となりますが、実子にとっては本来もらえるはずだった金額が減ってしまうことになるため、注意が必要です。例えば、父・母・長男・次男という家族構成だった場合、長男の嫁と養子縁組を結べば次男の取り分が少なくなります。控除される相続税の額と、相続人全体で受け取ることができる総額、相続人一人当たりの取り分を包括的に考えて判断する必要があります。
夫婦間で相続する場合、配偶者の税額が軽減される特例が適応され、「1億6,000万円または法定相続分のいずれか高い金額」までであれば相続税がかかりません。この配偶者の「法定相続分」は、子がいない場合は2/3または3/4、子(実子・養子)がいる場合は1/2と決められています。つまり、子を持つ夫婦のほうが、配偶者に対する特例の対象となる「法定相続分」が少なくなるため、相続税の面で不利になる場合があります。養子縁組を行う際には、配偶者の相続税に関しても事前に考えておく必要があるということです。
ここでは、養子と相続人の法的な取り扱いについて解説します。
被相続人の養父が死亡した場合は、養子も法定相続人となります。また、別途手続きをする必要がありませんので、実子と同様に自動で法定相続人として相続手続きを進めることが可能です。
ちなみに法定相続人は民法で決められていて、被相続人との関係性で相続人と相続の優先順位などが定められています。
また、法定相続人の数について制限はありませんので、養子が10人・20人と多数存在していたとしても、全員法定相続人となります。しかし、税法上では、養子2人までしか基礎控除に含まれないため、節税目的で養子を増やしても控除額は増額できません。
実子が1人存在する場合、基礎控除に含まれる養子は1人です。
続いては、相続権について分かりやすく解説します。実子と同様ですのでシンプルな仕組みです。
相続権とは、被相続人から財産を相続する割合や相続順位を示したものです。
そして養子の相続権は実子と同じ扱いとなるので、実子と均等に遺産を分割します。以下に相続例を分かりやすく紹介します。
相続割合は配偶者が最も多く、次いで実子と養子に均等分割となるのが基本的な仕組みです。ただし、上記の例に被相続人の父母や兄弟などが加わった場合は、相続割合は変化します。
ここでは、実親と養親の相続に関する基本的な取り決めを解説します。養子として家庭に入ったとしても、実親との関係は残るので相続時には慎重に相続財産や割合などを確認しましょう。
普通養子として養父母と親子関係のある場合でも、養子と実親との間で親子関係が法的に残っています。そのため、実親の死亡によって相続手続きを行う際は、養子も法定相続人として財産を相続可能です。
以下に実親と養親との親子関係が残っている場合の、相続割合を紹介します。
そして養父母でも相続が発生した場合は、養子も法定相続人として相続財産を受け取ることができます。
まとめると普通養子は、実親と養親どちらの相続権も保有している立場となります。また、あくまで普通養子のケースのため、次に紹介する特別養子縁組は仕組みが異なる点に注意が必要です。
実親との親子関係および法定相続人は、あくまで普通養子のケースです。もう1つの養子制度の特別養子縁組は、家庭裁判所にて実親(父母)との親子関係を法的に断ち切っています。
そして実親との親子関係だけでなく、法定相続人としての権利もありません。つまり実親が死亡し、相続が発生した際でも養子に相続権はありません。
特別養子縁組は実親から子を離すべき状況の際、養親が家庭裁判所にて申し立てを行うことで養子と養親を実親のような関係にできます。そのため養親が死亡した場合は、自動的に法定相続人として相続財産を受け取れます。
特別養子縁組として養子を迎え入れた養親は、自身の相続財産や子への相続割合などを考えるのみで問題ありません。
続いては養子の子供が、代襲相続する場合の条件と注意点を紹介します。ちなみに代襲相続は、被相続人から相続を受ける人が亡くなってしまい、別の方が代わりに相続を受ける制度のことです。
たとえば被相続人の子供が亡くなってしまった場合、その子供の子供が代襲相続の制度を利用して、相続財産を受け取ります。
1つ目の条件は、養親より先に養子が亡くなっている状況にあることです。
代襲相続とは本来相続すべき法定相続人が相続できない状況で、活用できる制度です。そのため、被相続人である養親の法定相続人、養子が亡くなっていることが代襲相続の条件に該当します。
ただし養子が相続放棄した場合は、代襲相続の条件に該当しませんので養子の子や孫は代理で相続できません。
2つ目の条件は、養子の子は養子縁組した後に生まれていることです。つまり以下のようなケースで、代襲相続の条件に合致するか変わります。
代襲相続の難しい問題の1つですが、子の生まれるタイミングと養子縁組として手続きを進める時期を合わせるのは容易ではありません。それぞれに事情があり、親子で養子縁組に入るケースもあれば、養子として迎え入れてもらった後に結婚、子が生まれるケースもあります。
ポイントは子が生まれるタイミングですので、以下に例を分かりやすく紹介します。
代襲相続では、養子の兄弟姉妹間でトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。たとえば兄には相続されないのに、弟にだけ相続されるケースがありうるからです。
養子縁組になった後に生まれた子供は代襲相続できますが、前に生まれた子供は条件から外れます。そのため、養子(子から見て実親)が亡くなった際に、相続財産を受け取れるのは養子縁組になった後に生まれた子のみです。
養子に関する相続で気になるのは、孫への相続時に発生する相続税ではないでしょうか。ここでは、孫を養子にした場合の相続税の仕組みや、二割加算の特徴や得・損するケースも解説します。
父母から見て、孫を養子にすることは可能です。しかし、2003年の税法改正によって、二割加算と呼ばれる相続税に関する法律が適用される点に注意しましょう。
二割加算とは一親等の血族・配偶者以外、つまり父母から見て孫を養子にした場合は相続税の20%を加算する制度です。(代襲相続人以外の孫・特別縁故者・配偶者の父母なども含まれる。) 通常の相続税に20%が加算されるため、税負担が大きくなりやすいといったデメリットもあります。ただし、相続財産を孫へ直接相続できるので、手続きの手間を減らしたい方にとってはメリットの方が多いでしょう。
孫を養子にすると二割加算が適用されるため、相続税の負担を大きくしてしまいます。しかし、必ず相続税が高くなる訳ではありません。
孫を養子にしなかった場合は、養子への相続と孫への相続2回分の相続手続きおよび税負担が発生します。
一方、孫を養子にした場合は、相続登記や相続税の負担を1回にまとめられるため、状況によっては相続税を数100万円単位で抑えられるケースもあります。
孫を養子にするか悩んでいる方は税理士へ相談し、どちらのケースが結果的にメリットの多い選択肢なのか慎重に判断しましょう。
養子には普通養子と特別養子の2種類存在し、それぞれ実子との親子関係や相続権などに違いがあります。また、養子に子が生まれるタイミングと養子縁組に組み入れるタイミングによって、代襲相続人に適用される変わります。
2003年には法改正によって二割加算制度も導入され、養子関係の相続や相続税は複雑です。
近い将来養子関係の相続が発生する可能性のあるご家庭は、税理士や司法書士など専門家へ相談しておくことをおすすめします。