不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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家族が亡くなったあとテナントビルが残されるケースがあります。東京都区内の場合、評価金額が億単位にのぼる場合が普通でこのために相続税が高額になる場合もあります。手続き方法や正しい税務が資産を守る近道になりますが、一方で判断を誤ると思わぬ損失になってしまう場合も起こり得ます。ここではテナントビルを相続した場合に考慮すべき注意点や、相続事例を紹介します。
テナントビルを相続した場合は様々なテナントに応じた電力供給システム、セキュリティー対策、エレベーターの保守点検など環境を整えなければなりません
ビルを維持管理するために諸費用が掛かりますが、個人での確保は難しいものです。そこで、金融機関から設備投資費用を借り入れる方法があります。
ですが、テナントビルの設備投資は賃貸アパートや1戸建て住宅よりも融資条件が厳しく、かなり時間がかかります。また、金融機関の中にはテナントビル向けの融資を行わない機関も存在します。ビルの改修が出来ずにテナントが入らなくなってしまうと、相続した後の経営に悪影響を与えかねません。
テナントビルを相続しようと考えている場合は、テナントの利用者がいるかどうかも相続するか、放棄をするかの大きな基準判断となります。賃貸物件と違い、テナントビルは一つのフロアを1社が利用することも少なくありません。契約している会社や景気の良し悪しに影響されやすく、会社が経費削減のため必要だと判断したら、促退去をします。
会社が退去してしまうと、収入が一気に減ることは避けられないでしょう。また、空室期間が長くなればなるほど損失は膨み、収入がマイナスなる可能性も考えなくてはいけません。そうならないために、相続するテナントビルの事前調査は必ず行いましょう。
税制面においてもテナントビルは、賃貸マンションや住宅のような軽減措置をうけられません。そして、テナントビルの相続を考えている人は都市部や地方に関わらず安定して経営できるかどうかを必ず確認しましょう。
テナントビルを運営する費用を確保できるか、利用者がいるかを確認したうえで取れる対策として、「売却」と「有効活用」のいずれかを選ぶことになります。
「ビルを相続する」と聞くと、限られた人だけの特権という印象を抱くこともあります。しかし、忘れてはいけないのは、保有するビルを活用も売却もしない状態で放置していると、日々費用がかかり大切なお金が削り取られていくことです。
ビルを保有しているだけでかなり高額の固定資産税がかかります。東京都内の場合には、これがとくに高額になります。また、ビルの設備が故障した場合のメンテナンスコストも軽く見ると痛い目にあうかもしれません。
ビルを相続する可能性のある人におすすめしたいのは、なによりも「判断をいそぐ」ことです。売却して現金化するか。高収益化するか。あらかじめ検討して方向性を固めておくことが大切でしょう。
家族などから相続したビルを売却する場合、まず相続を完了させてから販売して現金化する2ステップの手順が必要になります。
まず「誰がビル相続するか」明確にする必要があります。通常以下の3つの方法から選択します。
それぞれに手順は異なりますが、ここでは「換価分割」を選んだとして先に進めます。
ビルを売却する場合、当然ながら自分の名義の不動産にしなくては売却できません。このために「所有者名義の変更(相続登記)が必要になります。
相続人のなかに宅建資格の取得者がいるような場合をのぞき、専門の不動産会社に販売を依頼することになります。相続したビルを売却した場合には相続・税金関係に詳しい業者を選ぶのがいいでしょう。
いくつかの不動産会社と面談して販売力などの条件を検討したあとには『媒介契約』を結びます。これにより業者に販売活動を委託し、成約後には仲介手数料を払うという契約が成立します。
このあとは基本的に販売活動に関する中間報告を聞きながら成約を待ちます。
換価分割の場合、ビルの名義人=売主は分割相続人の一人で、手続きを代行する立場にあります。
売却がなされ代金が得られたあとには、事前の話し合いにより分配されます。
ビルを相続した場合には、あらかじめ固定資産税評価額などを確認しておくのが大切になります。
固定資産税を支払う財力がない場合には選択の余地なく売却することになりますが、固定資産税が払える場合にはビルの価値を向上させて、さらに収益を得ていく選択肢もあります。
リフォーム、コンサルタントに依頼して新たなコンセプトの設定、テナントの再検討・・・など。積極的経営により収益性の向上も可能になっていきます。
たいせつなのは、ここでも「できるだけ早く対策を立てる判断」です。相続するビルがある場合には、早めに専門家に相談して『生前贈与』『ビル管理運営会社の設立』などの選択肢を含めて、ビルから最大限に安定して収入を得られる手段を検討しておくといいでしょう。
14年前小さなテナントビルを父親から相続。わずかな入居者だけで赤字状態が続いたために、売却を検討しました。しかし、入居者にその旨を伝えると莫大な立ち退き料を請求されました。入居者との関係を悪化させずに退去してもらい、テナントビルを売却したいと考え何度も説得を試みますが、立退料の折り合いが付きません。
売却が進まず、空室になっているフロアは毎月赤字を出している状態です。さらに毎年の固定資産税の支払いなども加わると、かなりの痛手になります。テナントは、「要求通りの立退料を支払わない限り退去しない」という強硬な姿勢を見せます。
テナントとの賃貸契約をする会社にもどうにかならないかと頼みこみますが、テナントオーナー次第だとはぐらされてしまいます。根気強い交渉の結果数店舗は立ち退きに応じました。しかし、その中でも頑なに要求通りの立退料を払わないと立ち退かないというテナントに困り果てています。
テナントを相続したものの、立地や景気によって営業が難しくなり売却を選択する場合があります。入居しているテナントに立退料を支払い退去してもらう必要があるのですが、なかなか了承をもらえず困っているテナントビルオーナーも少なくないでしょう。
こういった場合は強制退去手続きが可能です。ですが、様々な法的専門知識が必要となるためテナントとオーナーの間に入って仲裁をしてくれる弁護士に依頼することをおすすめします。トラブルを解消してビルをスムーズに売却することが出来るでしょう。
テナントビルの相続をめぐっては、家族間でトラブルが起きることも少なくありません。ここではそのトラブルを回避するための方法を紹介します。
テナントビルの相続で家族間トラブルが起きる原因の一つは、ビル所有者の遺書がないことです。遺書が残っていれば、その内容に従って粛々と相続手続きを進めることができますが、遺書がないと、それぞれの相続人が故人の意思をめぐって意見を戦わせることになり、収拾がつかなくなります。こうしたトラブルを避けるには、所有者が存命のうちに、早めに遺書を書いてもらうことです。遺言があれば、法的にはその内容が優先され相続人は従わざるを得ないので、無用なトラブルを避けることができます。
テナントビルを遺産分割で相続するとき、時価や賃料収入の点で不満が出て、家族間トラブルに発展したというケースもあるかもしれません。このようなトラブルを回避する方法としては、資産の組み替えがあります。資産の組み替えとは、資産価値が低下した不動産を収益性の高い不動産に組み替えることですが、これを行うと現在の資産価値を高めることができ、遺産分割における不公平感を解消できます。そして時価や賃料収入でも相続人の不満が出にくくなり、相続がスムーズに行えるようになります。
テナントビルの相続をめぐる家族同士のトラブルは、なるべく当事者で話し合って解決するのが理想ですが、それができない場合は、プロに相談するのも一つの手です。そのプロとは、相続問題が専門の弁護士です。弁護士に仲介を依頼すれば、相続財産や相続人の詳しい調査をしてもらえることはもちろん、遺産をどのように分けたらいいか、揉め事をどう収めたらいいかなどについて、的確なアドバイスをもらうことができます。
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