田舎の家を相続した場合

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田舎の家を相続した時、その家が相続するに値する物件かどうかをしっかりと判断しなければ、結果的に相続することでマイナスとなってしまうこともあります。このページでは、田舎の家を相続した場合の考え方や、もしも相続によって不利益を被ると判断された時の対処法について詳しく解説しています。

相続によるトラブルや後悔を回避するためにも、田舎の家の相続ポイントに関してしっかりと把握しておきましょう。

相続した田舎の家を手放す方法

相続した田舎の家を手放す方法は大きく2つ

田舎の家を相続することになったとして、相続人が相続対象の家や財産を手放す方法には大きく2種類があります。

1つは相続した家を第三者へ売却する方法です。もう1つは、相続した家を第三者や公共機関などへ寄付するといった方法です。

重要なポイントは、どちらのケースであっても田舎の家をすでに相続しているという点であり、一度でも所有した不動産は簡単に捨てられないという点を意識しておかなければなりません。

売却によって田舎の家を手放す場合

売却によって田舎の家を手放す方法は、基本的に通常の不動産取引と変わりません。

ただし、そもそも相続して所有し続けたくないと考える理由が、田舎の家に不動産としての価値がないと思ったからであれば、当然ながら購入を希望する人を探すことも難しくなります

また、不動産の売却のために不動産会社を利用した場合、仲介手数料などのコストが発生することもポイントです。ただでさえ売却益が少なく想定される場合、そこへ手数料などのコストが重なれば、結果的に得られる利益が減少することもあるでしょう。

不動産会社を介して田舎の家を売却する

不動産会社へ取引の仲介を依頼した場合、仲介手数料などのコストがかかりますが、一方で不動産会社が買取希望者を探してくれることは魅力です。特に地域密着型の営業を続けている不動産会社であれば、地元住民や不動産会社とネットワークを構築しており、不動産の購入に意欲を示す人を速やかに見つけられるかも知れません。

そのため、自分で買取希望者を探して契約をまとめるよりも、スムーズに取引を終えられることは重要です。

また、どうしても個人の買取希望者が見つからない場合でも、不動産会社が買主として家を購入してくれることもあります。

不動産会社へ家を買い上げてもらう場合、個人の買主へ売る場合よりも金額は低くなりがちですが、どうしても購入希望者が見つからない場合は直接買取を依頼することも有効です。

個人で田舎の家を売却する

個人で相続した家の売却先を見つけることは、不可能ではありませんが、難しいことも事実です。特に自分が暮らしている地域でなく、遠方にある田舎の家を相続したような場合、地域住民との関係や地元の不動産ニーズなどを把握しきれず、迅速に売却先を見つけたり円滑な取引をまとめたりすることは困難になるでしょう。

もちろん、すでに売却先のめどが立っている場合は別ですが、一から買い手を探す場合は不動産会社や地元の事情に詳しい専門家へ相談することが賢明です。

なお、どうしても個人で売却先を探したい場合、家の隣人が最初に想定される候補者となります。

寄付によって田舎の家を手放す場合

売却先が簡単に見つからない場合、寄付によって田舎の家を手放すといった方法もあります。

基本的に、寄付は無償で相手へ資産を譲渡する行為であり、田舎の家を寄付することで得られる利益はありません。むしろ、寄付する前に土地の整理をしなければならなくなったり、建っている家を解体しなければならなかったりとコストが発生する可能性もあります。

明らかに利用価値のない家を寄付によって手放すことができれば、将来的な負債やデメリットを軽減できる可能性があります。

一方、寄付によって相手が税金を支払わなければならないこともあり、利用価値のない家については「タダでもいらない」と断られる可能性も考慮してください。

個人へ寄付する

個人へ家を寄付する場合、それは一般的に「贈与」として扱われます。そのため、家を寄付された側は不動産や土地の評価額に応じて贈与税を支払わなければなりません

また、贈与後に問題が発覚してトラブルに発展しないためにも、贈与の際にはしっかりと「贈与契約書」を作成して互いに署名捺印しておき、所有権移転登記も忘れずに行います。

なお、贈与契約書は法的に書式が定められているものでありませんが、作成の際には司法書士や弁護士といった専門家へ協力を依頼することが無難です。

自治体へ寄付する

個人の寄付先/贈与相手が見つからない場合、自治体へ相談して寄付が可能かどうか考えてもらうことも有効です。ただし、自治体ごとに寄付できる条件が異なっているため、必ず窓口で詳細を確認するようにしてください。

なお、自治体にとって不動産の寄付を受け付けるメリットはあまりなく、断られる可能性が高いことも覚えておきましょう。

法人へ寄付する

法人にはいくつもの種類がありますが、中には土地の寄付を受け付けてくれる地元の団体が存在するかも知れません。

ただし、法人には営利法人と公益法人があり、営利法人が寄付を受け付ける場合は不動産取得税や法人税が課せられます。そのため現実的に法人への家や土地の寄付を検討する場合、公益法人を探すことが一般的です。

その他、法人への寄付については「みなし譲渡課税」も無視できません。みなし譲渡課税(みなし譲渡所得税)とは、実際に現金の授受がなくとも、資産価値のあるものを譲り渡すことで現金を渡している場合と同様に課税される制度です。

活用しない田舎の家をそのまま所有するデメリットとは?

家は所有し続ける限りコストが増大する

不動産は所有しているだけで固定資産税が発生する上、空き家として放置していることで老朽化が進み、万が一にも事故や火災が起きれば賠償責任が発生します。また、家の劣化を防ぐためにメンテナンスを続ければ、コストがどんどんとかさんでいくことも問題です。

相続したものの、活用法も売り手も見つからず、寄付することもできず、毎年の固定資産税や維持管理費で支払いが続くとなれば、時間がたつごとに損失が増大していきます。

近隣住民や自治体からのクレーム

人が住んでいない家は急速に劣化して荒れていきます。自分が住んでいない田舎の家だからといって放置していれば、庭の草木が過剰に育って害虫の温床になったり、老朽化が進んで倒壊事故などのリスクが悪化したりします。加えて、放置された家が問題のある人々のたまり場になって、事件や事故の現場になるかも知れません。そうなれば、近隣住民から家が危険な対象として認識されることもあるでしょう。

日常的に近隣住民と付き合いがなければ、住民は役所へ問題を相談します。

近隣住民へ何かしらの被害があったり、問題が深刻化して行政指導の対象になったりした場合、損害賠償請求訴訟などに発展してしまう恐れもあります。

突発的な災害による被害

田舎が豪雪地帯であったり、大規模な台風の通り道であったりする場合、突発的な災害によって家が倒壊したり損壊したりするリスクも深刻です。また、海に近いエリアの家であれば潮風による錆びも要注意です。

例えばメンテナンスを怠った家の屋根瓦が台風によって飛んでしまい、近隣住民の家や所有物、人へ衝突すれば大きなトラブルに発展しかねません。また、誰も住んでいない家は放火魔のターゲットになりやすいことも重要です。

当然ながら、トラブルが発生した後は一層に管理コストや修繕コストが増大するため、早め早めに対処しておくことが望ましいといえます。

次代の相続問題の火種になる

田舎の家が負の遺産として放置されたまま、現在の所有者が亡くなった場合、次の相続人に負の遺産が押しつけられる形になります。

その上、現在の所有者が相続した時よりも不動産の状況は悪くなっていると考えられるため、相続問題がより一層に激化するかも知れません。

田舎の家を相続すべきか相続放棄すべきかの判断基準

負の遺産を抱える前に「相続しない」という選択

相続放棄とは、相続人が被相続人の遺産を「相続しない」と決めることです。

すでに田舎の家を相続してしまっている場合、すぐに家を手放そうと思ってもなかなか解決策が見つからないこともあります。しかし、相続放棄によって最初から田舎の家を相続していなければ、利用価値のない不動産を所有し続けるデメリットを回避することが可能です。

田舎の家を相続すべきか否かについては、主として以下のようなポイントが判断基準となります。

相続財産のバランスを考える

相続放棄に関して忘れてはならない点として、自分にとって不要な田舎の家だけを選択的に放棄することはできないということです。

原則として、相続放棄を選択する場合、田舎の家だけでなく他の相続財産についても相続権を手放さなければなりません。

例えば現金や金融資産が十分にあり、田舎の家を相続するデメリットを大きく上回ると考えられれば、全ての財産を相続すべきと考えられます。

反面、田舎の家の不動産評価額が相続財産の2割以上を占めるような場合、相続放棄によって全財産を手放した方が結果的にお得ということもありえます。

全ての資産価値やキャッシュフローを試算して相続の価値を判断する際は、専門家のアドバイスも聞きながら冷静に計算するようにしてください。

寄付の実現性を考える

仮に家を相続したとして、その後に寄付先があるかどうか事前に確認しておくことも大切です。田舎の家を寄付しようとしても、すぐに受け入れ先が見つかるかどうか分かりません。そのため、事前に寄付先の選定や、寄付の実現性を考えておくようにします。

なお、仮に寄付先が見つかったとしても、寄付を受け付けてもらえる条件や、それを達成するためのコストも確認しておきましょう。

不動産の活用法について考える

家自体に価値がなくとも、土地活用によって収益化を目指せることはあります。

土地活用の方法は複数あり、賃貸物件を建てたりレンタルスペースとして活用したり、あるいは立地環境によって太陽光発電といったプランもあります。

ただし、土地活用によって利益を得るには土地の特性や地域のニーズをしっかりと分析しておかなければなりません。

売却メリットの有無を考える

相続した家を売却するとして、それまでにかかったコストや譲渡所得税などを差し引いても利益が出るかどうかは必ず考えます。

売却先が見つかっても取引の条件が悪ければ、売却によるメリットはあまりありません。

あらかじめ不動産の売却を検討した上で、メリット・デメリットを細かく把握しておくことが大切です。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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