不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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代位登記とは、不動産を相続する予定の相続人が金融業者からお金を借りていた場合、本人に代わり債権者が不動産の登記申請をする行為です。このページでは、代位登記の問題点や代位登記を回避する対策などについて解説しています
相続権を有する債務者(相続人)に代わって、相続人にお金を貸している債権者が相続不動産の登記申請を行うことを代位登記といいます。
債権者にとって、債務者が相続権を有する不動産は将来的に資産となり得ます。そのため、現時点で債務者からの返済が困難になっている場合、債権者は債務者の資産を差し押さえる目的で、相続人である債務者に無断で不動産を相続人名義へ変更することが可能となります。
代位登記は「債権者代位権」という法的に認められた権利が根拠となっており、未払いの貸付金を強制回収するための準備段階だと考えられています。
債権者の債権者代位権は強力な権利ですが、みだりに手続きすることはできません。実際に債権者代位権が認められるには、以下の3つの要件を全て満たしていることが必要です。
債権者代位権は、返済能力が認められない債務者に対して、債権者が自らの経済的利益を守る目的で活用される権利です。そのため、不動産相続の代位登記を実行したいなら、まず手続きをしなければ債権者として経済的損失を被るという状態でなければなりません。
例えば、債務者に資産があり、現金で債務を返済できるような場合、債権者は代位登記を行うことができません。
債権者代位権が認められるには、債務者に返済能力がなく、無資力状態であることが必要です。
いつまでにお金を返すといった約束の日付を弁済期と呼びます。弁済期に達していない債権については、債権者代位権を認める根拠になりません。
そのため代位登記には、債務者がすでに支払期日を超えているにもかかわらず、返済金を支払っていないことが条件となります。
なお、具体的に支払期限を約束していない契約については、未払いの状態が継続して、事前の契約にもとづいた「期限の利益」が喪失された時点で、弁済期に達したと判断されます。
債権者代位権や代位登記の対象となる資産は、必ず他人による差し押さえや譲渡が可能だと認められているものでなければなりません。そのため、相続対象となる不動産であれば代位登記の対象になり得るものの、例えば遺産の遺留分や生活保護受給権など、相続人の本人にしか権利が認められていないような対象については、債権者代位権や代位登記で取り扱うことが不可能です。
言い換えれば、不動産相続の対象となるような物件に関しては、本要件を満たすことになるでしょう。
代位登記と、相続人が指定した代理人による登記との違いは、債権者が条件的に適用となる場合、相続人に対して無断で代位登記を行えるという点でしょう。
つまり、債務者である相続人の知らないところで登記申請が行われているため、本人達は状況に気づかず遺産分割協議などを継続しているというようなケースが想定されます。
なお、代位登記を実行できる債権者には、消費者金融や金融機関といった民間業者だけでなく、地方自治体や国といった公的機関も考えられます。
通常の相続登記なら、不動産の持分を遺産分割協議で決定することが前提となります。しかし代位登記では相続人に無断で行えるため、遺産分割協議による持分決定を待つ必要がありません。
代位登記や債権者代位権は、あくまでも債権者が債務者である相続人に対して、経済的利益を確保する目的で行使されるものです。そのため、代位登記では債務者の持分について強制的に決定されてしまいます。
相続人が債務者のみの場合、代位登記は単独所有として登記されますが、相続人が複数である場合、各人の法定相続分をそのまま持分とした共有登記となります。
権利関係によって大きく3つのパターンが想定されます。
被相続人が借金を抱えたまま亡くなり、それらの債務が負の遺産として残されることもあるでしょう。遺産を相続した相続人は、被相続人を債務者とした債務も同時に承継するので、債権者が相続不動産の代位登記を行えるようになります。
被相続人が債務を抱えたまま亡くなるケースには、「借金をしたまま亡くなった場合」「損害賠償請求をされている中で亡くなった場合」「不動産を担保に被相続人へ金融機関が融資を行っていた場合」などが想定されます。
相続人に債務があり、その債権者が代位登記を行うケースです。シンプルな代位登記のケースだと考えられるでしょう。
相続人が債務者となる事例としては、相続人が金融期間からお金を借りていたり、損害賠償請求をされていたりする他にも、税金や健康保険料の滞納で国や地方自治体が債権者になるといったケースが考えられます。
民間の金銭貸借契約の他にも、被相続人や相続人が債務者になるケースはあります。
まず考えられるのが税金の滞納です。
税金の滞納は自己破産でも免責されるものでなく、例えば被相続人が税金を滞納したまま死亡したり、相続人が税金を滞納している場合、行政は債権者として代位登記を行うことが可能です。
基本的に行政機関でも民間業者でも、代位登記を行うことを債務者へ事前に知らせることはありません。また、代位登記が完了したことを知らせる通達が相続人へ出されることもありません。
だからこそ、代位登記が実行されていると債務者や相続人が気づくことは容易でなく、後々さらなる遺産問題へ発展する恐れもあります。
そもそも代位登記が行われるような状態になっているということは、債務者に債務返済能力がないと客観的に認められているということ。債権者は迅速かつ確実に債権回収へ乗り出します。
例えば事前に代位登記を行うと通達してしまえば、債務者である相続人や他の相続人が共謀して遺産分割協議を有利に運び、債権者の経済的利益が損なわれる可能性もあるでしょう。
代位登記は債権者代位権という法律によって認められている権利が根拠となっており、代位登記が実行されると、債権者が一方的に経済的損失を被る恐れがあります。
そのため、代位登記の解消を一方的に求めることは困難です。
代位登記を解消して、改めて相続不動産の登記や持分について他の相続人らが協議したいのであれば、先に債権者へ弁済を完了し、債務を履行することが必要となります。
あるいは、相続人が相続権を放棄するといった方法もあります。
相続放棄とは、相続人が不動産を含めた被相続人の遺産の全てについて、相続する権利を放棄する手続きです。
債務者が相続人として相続放棄をした場合、債務者には一切の遺産が相続されず、不動産も持分の全てを失います。
債権者が代位登記を完了する前に相続放棄が実行された場合、債権者は相続不動産について債権者代位権を行使することができません。この場合、更正登記を元相続人が行えば代位登記を無効にできます。
なお、相続人が相続放棄する前に債権者が代位登記を行った場合は、代位登記自体を無効化できないため、持分移転登記という制度を利用することが必要です。
代位登記問題は借金問題や相続問題などと複雑に絡み合っており、さらに個人の問題に他の相続人を巻き込むことになります。そのため、問題が深刻化・複雑化したりすることも珍しくありません。
代位登記の問題は個人で解決しようとせず、不動産相続に詳しい専門家へ相談して、解決への道筋を立てることが大切です。
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