事故物件の相続

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殺人事件、自殺、孤独死があった不動産は事故物件と呼ばれます。その所有に心理的・経済的負担を強いられるもの。事故物件を相続することになった場合、相続人はすすんで住みたいとは思わないでしょう。また、売却を考えても買い手がつくかどうか悩みます。事故物件を運用するにも、リフォームなどが必要です。事故物件を相続せざるを得ないときの対応について考えていきます。

そもそも事故物件の定義とは?

事故物件を定義した法律はありません。事故物件の定義は曖昧ですが、殺人、自殺、孤独死があった不動産と考えられています。そして、殺人事件と孤独死では、事故物件に住むことの心理的影響の度合いも異なります。

不動産の瑕疵は、関係法令に沿わない法律的瑕疵、建築物の物理的問題である物理的瑕疵、その他の瑕疵である心理的瑕疵に分類されます。

不動産の瑕疵というのは不具合と欠陥のことです。この事故物件の瑕疵は、不動産の心理的瑕疵に分類され、この心理的瑕疵は曖昧になります。例えば、事故物件の売却には告知義務がありますが、心理的瑕疵の場合は売主が黙っていたらばれないこともあるでしょう。事故物件の心理的瑕疵を評価することは難しいですが、事故物件の種類により影響度も異なり、不動産価格への反映も異なります。

事故物件の影響度

殺人事件や自殺・事故死があった不動産に特殊清掃後でも住みたいと思う人は少ないでしょう。孤独死であるならば、内装をやりかえれば住んでもよいと考える人もいます。事故物件の度合いによる、不動産価格への影響について考えてみましょう。

事故物件の種類による住人への影響度は、不動産価格に反映されます。不動産価格への影響度は、孤独死、自殺・事故死、殺人の順で影響度が変化。例えば、殺人事件があった不動産は、通常価格の半分以下程度になってしまいます。そして、もともと不動産価値の低い物件の場合は、買い手がつかなくなるケースもゼロではありません。このような事故物件を相続した場合は、処分に困ることになります。

事故物件には「告知義務」がある

不動産の心理的瑕疵に当たる事故物件を販売するとき、売主は買主に告知する法的義務があります。しかし、売主が告知せずに不動産仲介会社にする可能性も。不動産仲介会社も調査をしなければ、事故物件であるかを把握できません。その点が不動産の法律的瑕疵や物理的瑕疵とは異なります。事故物件であることを告知せず、通常価格で販売できたとしても、近隣住民からの話で事故物件であることが分かり、法律問題に発展してしまう可能性もあります。その他、事故物件掲載サイトや不動産登記情報を確認すれば、買主側が調べられるものです。

こうした点から事故物件であることを隠しての不動産売却はトラブルのもとになるため、法的義務にも反します。事故物件を相続した場合には要注意です。

事故物件を相続放棄したい場合の注意点

事故物件は資産価値だけでなく、多くのデメリットがあることが分かりましたが、事故物件をそもそも相続しないという選択もあります。事故物件を所有するだけでも、相続人は精神的負担と経済的負担を負うもの。相続手続きは、戸籍に基づく行われるため、面識のない親族からの意図しない相続もあります。その対象不動産が事故物件である場合などは、相続したいと考えない人も多いでしょう。ここでは、相続放棄の注意点について考えていきます。

相続放棄はすべての財産の放棄となる

相続対象は、被相続人の全ての権利義務に及びます。相続放棄をする場合は、被相続人の財産の一部だけを相続し、その他を放棄することはできません。

つまり、事故物件だけを放棄して、資産価値のあるもののみを相続することは認められないのです。事故物件の売却目途が立つ場合は、事故物件を含めた被相続人の資産を相続し、売却などの対応をすることになります。

相続放棄には申請期限がある

相続放棄申請期限があります。相続開始から3カ月以内に申請の必要です。3カ月以内に被相続人の資産や負債を把握し、事故物件の資産価値と売却可能性を調査することは事実上難しいです。特に事故物件の資産価値と売却可能性を調査することは、3カ月では難しいでしょう。事故物件を相続する可能性がある場合は、できる限り早い調査をする必要がありますが、人の死と関わるために実情は難しいといえます。

相続財産の管理責任が残る

相続放棄しても手続きがすぐに完了するわけではありません。次順位の相続人の相続や相続財産管理人の選任まで、事故物件の管理責任が残ります。相続財産管理人は、家庭裁判所に申立てを行う必要があり、その費用もかかります。事故物件の相続放棄をしても、相続財産管理人の選任まで管理費用の負担などの責任を負う必要があるのです。相続放棄したからといって、すぐに事故物件から解消されるわけではありません。

事故物件の相続はメリットもある

事故物件の相続にもメリットはあり、相続人が事故物件を不動産会社に売却する場合は、現状のままでも可能です。不動産会社は事故物件のリフォーム工事などを行うため、不動産会社への売却価格は安くはなります。それでも、事故物件をリフォームすることで資産価値が残れば、相続人にお金も入ります。

事故物件の相続税は、通常の不動産価格よりも低く評価される可能性もあります。入居者に人気のエリアであれば、事故物件をリフォームすれば、資産価値が上がるでしょう。相続税を抑えて不動産を手に入れられるため、事故物件をうまく運用できれば、相続人にメリットになるわけです。このように、事故物件は、不動産会社への売却や運用など、適切な対応を行えば相続人にメリットをもたらすことも可能性もあります。

事故物件の相続は専門家に相談を

事故物件を相続した場合、不動産を売却することと運用することの選択が必要です。事故物件の売却は、通常の市場価格よりも低くなります。リフォームやリノベーションが必要になるためです。また、事故物件を運用するにしても利回りを検討も必要でしょう。

相続時の事故物件の評価は、難しいものです。相続税の減税に関しての決定権は最終的に税務署であるため、相続人は事故物件の不動産価値の評価の根拠を示すことが必要です。また、事故物件が絡むような特殊な相続は、親族間でも争いになるケースも多い傾向にあります。

このように、事故物件を含む相続は、複雑な要素も絡むために専門家に相談することが大切です。事故物件に詳しい不動産会社や税理士などに相談するとよいでしょう。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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