不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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分筆登記とは、1つ(1筆)として登記されている土地を複数に分割して登記し直すことを意味する用語です。ここでは、不動産相続に際して把握しておきたい用語「分筆登記」について解説します。
分筆登記とは1つの土地を複数の土地に分けることを意味する用語です。「筆」は土地を数える際の単位で、「分筆」とは文字通り「筆=土地の単位を分ける」という意味を持ちます。
「登記」は土地や住宅など不動産に関する権利関係を公的に示す制度です。例えばすでに登記されている土地について分筆した場合、それぞれの土地について改めて登記し直し、権利関係や所有者を明確にする必要があります。
なお、分筆前と後では土地の所在地(番地)についても、それぞれの土地を区別するために変更が生じます。具体的には「○○町8番地」の土地を2筆に分筆した場合、一方の土地の所在地が「○○町8番地1」、もう一方が「○○町8番地2」となります。
例えば、親が1つの広大な土地を持っており、親の死後複数の兄弟姉妹でその土地を相続するとします。この場合、土地の相続方法としては大きく2種類が考えられます。
1つは相続人がそれぞれ土地の共有名義人として登記されるという方法です。この場合、土地そのものは1筆として扱われますが、所有権は相続人ごとの持分によって分けられます。分筆登記は不要なものの、将来的に相続人の誰かが土地の売却を希望したとしても、共有名義人全員の同意を得なければ不動産の売却が叶わないため、手続きに手間がかかる可能性があります。
もう1つの相続方法は、分筆登記を行い分筆された土地ごとに、それぞれの相続人が所有者として登記されるというものです。分筆登記をしていれば、誰かが土地を売りたいと思った場合本人の所有する土地については本人の意思で自由に取り扱えるため、他者の同意は必要にならず、手続きが煩雑になるリスクを抑えられます。
土地売却は登記されている土地ごとに行われます。東西に伸びた1筆の土地を所有していたとして、西側だけを売却したいと思っても、東側を含めた1筆を売却することになります。
こういった場合、売却前に分筆登記を行い西と東の土地を分けておけば、西側だけを売却し東側の土地をそのまま所有し続けることも可能です。
親が広い土地を所有しており、その土地に実家が建ち親と子どもが同居しているケースを例にとりましょう。親の所有している土地内に子どもが改めて住宅を新築したいと考えた場合、分筆登記をした方が良い場合があります。
建築基準法において、建物と土地の関係は「一敷地一建物」。これは、「1つの土地には1つの建物しか建てられない」というルールです。
とはいえ、実際の「敷地」の設定に関して厳密な定義はなく、分筆登記をしなければ敷地内に新しい家や建物を建てられないとも限りません。
ただ、あらかじめ分筆登記をしておき親と子どもで土地の所有権を分けていれば、権利的にも法的にも問題のない状態を保てます。
なお、分筆登記をせずに建物の数を増やしたい場合、敷地のみを分割する「敷地分割」という選択も。この場合、分筆登記よりも手間やコストがかからないというメリットがある反面、土地の名義人は親のままになるため、子どもが住宅を建てる上で土地を担保に金融機関からの融資を受けられなかったり、ローン返済が滞った場合に親の住居がある土地まで差し押さえ対象になったりするといったデメリットもあります。
1筆として登記されていた土地を分割することが分筆登記です。反対に、複数の土地を1筆にまとめて登記することもできます。この作業は合筆登記と呼ばれ、隣接する複数の土地について合筆登記すれば一つの土地として取り扱えるようになります。
合筆登記をするためにも複数の条件が定められており、場合によっては分筆登記をする際より手続きが困難になる場合も。分筆登記、合筆登記いずれの場合にしても、現在の土地の在り方や価値だけでなく将来的な問題について考えた上で選択することが大切です。
土地の登記内容は公的に認められる情報で、土地の取引や税金の計算などにも関わる重要なポイントです。そのため、既存の土地を分割しこれまでの登録内容を変更する分筆登記を行う際は、その作業を代行して良いと国から認められている資格を持った人へ依頼する必要があります。
分筆登記を行える専門資格は、国家資格である「土地家屋調査士」。民間のアドバイザーやコンサルタント、あるいは他の有資格者が分筆登記を代行することはできません。
土地家屋調査士は国家資格であり、取得すれば全国で通用するでしょう。しかし、例えば分筆登記を希望している人が、その後の土地に家を建てようと考えているような場合、自治体によって敷地面積の最低条件が定められていることを知らずに手続きを進めてしまえば、いざ家を建てようとしたときに許可が下りないという可能性があります。こういった観点から、分筆登記を行う際はその土地に詳しい地元の土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。
特定の地域に詳しい土地家屋調査士を探したい場合、日本各地域に展開されている「土地家屋調査士会」の力を借りましょう。自分で調査士を見つけられない場合、この土地家屋調査士会に連絡をとれば紹介をしてもらえます。
土地所有者が自分の都合で分筆登記を行いたいと考えた場合、分筆後の各土地について所有者は自分のままとなっているため、権利の譲渡は行われません。土地の所在や番地のみに変更を加える「表題部」の変更にとどまるこのケースでは、分筆登記を土地家屋調査士に一任できます。
ただし、分筆によって分けた土地を子どもや他人へ譲渡したり売却したりする場合は、その土地に関しては改めて所有者を変更しなければなりません。
権利に関わる部分に変更が生じる場合、権利登記は土地家屋調査士でなく司法書士の領分になるため、司法書士への手続き依頼が必要になります。
不動産の相続や売却などに関連する分筆登記では、土地家屋調査士と司法書士の2つの専門資格が必要であり、これらの有資格者は互いに連携して業務を請け負うことも少なくありません。
個人で土地家屋調査士・司法書士それぞれ探し依頼することも可能ですが、どちらに関しても知り合いがいない・伝手もないという場合、土地家屋調査士会に依頼して地元の土地家屋調査士を紹介してもらい、信頼できる司法書士も一緒に紹介してもらうという流れをとるのも一般的です。
分筆登記をすれば、親から相続した土地を複数の相続人がそれぞれ自分の土地として所有できるため、遺産分割協議やその後の取引が簡単になるでしょう。トラブルの予防としても効果的です。
土地にはそれぞれ土地の用途である「地目」が定められており、例えば宅地として登録されている土地に畑を作ったり、農地として登録されている土地に住宅を建てたりすることはできません。
分筆登記によって分けた土地の地目変更が認められれば、農地から宅地へ転用して家を建てられるといったことも可能になります。
土地に建物を建てたいと思っても、その土地が接道義務や敷地面積の基準を満たしていなければ建築が許可されないことも。
一方、接道義務のような各種条件を満たすことばかりを優先して分筆してしまうと中途半端な土地が生じ、その部分の価値が下落してしまうリスクもあります。
不動産には固定資産税がかかりますが、住宅の建っている土地については税制上の優遇措置を適用できるといった条件があります。分筆登記によって「住宅の建っている土地」と「更地」に分割された場合、後者に対する軽減措置は適用されず、固定資産税の総額が上昇してしまうというデメリットがあります。
地域によって、土地の面積に対し建築できる建物の大きさが制限されている場合も。住宅の新築や増改築において、このルールは無視できません。
仮に自宅のある土地を分筆登記するとして、敷地面積は分けられた1筆ごとに考えるため、当然ながら分筆後の土地面積は減少します。つまり、分筆によって必要な敷地面積が確保できなければ、現在の家を将来的に増改築しようと思っても建築許可が下りないといったリスクが生じます。
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