東京で「空き家」を相続する際の注意点

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日本の首都である東京。土地の価格は日本一高く、その価格変動もダイナミックです。このために相続した場合の相続税や諸経費も、その申告方法など対応によって大きな振れ幅があります。

細かい配慮により思わぬ利益が生まれることもあれば、逆に大きな損失が生まれてしまうケースもあります。ここではとくに東京で空き家を相続する場合の注意点についてまとめてみました。

東京で空き家を相続する場合の事例集

人生のなかで相続をする機会は、それほどに数多いものではありません。

とくに空き家を相続するケースは誰にとっても「まれ」な事件といっていいでしょう。手続きの仕方から税務までわからないことだらけで困惑してしまう人も多いようです。また、どこに相談に行けばいいのか迷ってしまった話もよく聞きます。

一方で最近は東京でも空き家問題がクローズアップされてきました。相続する段階での建物の状況、築年月、また土地の所有者や借地などの特殊状況によって考慮すべきポイントも変わってきます。

これに加えて東京の特殊状況として地域差・価格差が大きいとという点も上げられるでしょう。都心、下町、山の手、三多摩と、それぞれによって空き家相続に対する考え方も変わります。

以下に最近相続された東京の空き家に関するいくつかの事例を紹介します。参考にしていただけたら幸いです。

空き家の課題を分類すると、こうなる

土地や建物に関する課題

金銭関係に関する課題

人に関する課題

最近の東京の空き家事例

事例1:売却契約がなかなかまとまらない物件。個人ではなく業者への売却で解決

状況と課題

戸建住宅、築47年、木造2階建て。所有者が高齢になったため施設入居費用を捻出するために空き家を売りに出したが契約がまとまらない。家屋はかなり老朽化していて居住するためには相当額のリフォームが必要になる。また、近接道路を複数で所有しているために承諾なしに建て替えもできない状況にある。

所有者の成年後見人は費用がかからない売却を希望したが、現状では個人への売却は困難に思われた。

解決方法

個人ではなく業者への売却を検討。買主である不動産会社に測量や解体などの費用を負担してもらう前提で売却を提案した。

売却金額は当初希望より安くなったが、早期解決、売主の負担減が達成された。

売主は金額よりも早期解決し、施設入居費用を獲得できた結果に満足している。

事例2:借地契約のために空き家の処分が困難だった物件は、賃貸住宅として運用して解決

状況と課題

戸建住宅、築38年、木造2階建て。親から相続した空き家を売りに出したが借地上の物件のため買手はなかなかみつからなかった。不動産会社に売却を依頼したのち1年以上買手がつかない状態。

ただ建物自体は5年間にリフォームが終了しており良好な状態。物件の周辺には大きな公園、保育園、小学校などがあり生活環境は恵まれていた。

解決方法

売却以外の解決方法が検討されていなかったため、地域の賃貸需要を調査した結果、むしろ賃貸物件としての可能性の方が大きいことが判明。賃貸物件として借主を募集したところ、ファミリーが入居して安定した賃貸収入を得られるようになった。

事例3:残留物が多くて売りないと思っていたが、一括購入者を探して解決

状況と課題

共同住宅、RC2階、延床47㎡。親から相続したが、ゴミや遺品など多くの残留物があり売却は困難に思われた。売却により得られた資金で新たな物件購入を検討していたので早期解決が望まれた。

残留物を処理してから売却しようと思っていたが、多忙のために業者選定が進んでいなかった。

解決方法

残留物を処理したのちに売却するのではなく、現金化を優先させるために残留物を残したままで購入してくれる業者を探す解決方法を選択した。

残留物の処理業者にコネクションをもつ仲介業者への購入を働きかけることにより、残留物のあるままで現金化を実現。結果として室内を清掃する費用を差し引いて考えれば問題ない資金取得を、当初希望どおりのスケジュールで行うことができた。

事例4:道路が周囲にない土地を隣接地主に購入を働きかけて解決

状況と課題

戸建住宅、築53年、木造平屋建て。所有者は東京から田舎に引っ越し、子どもたちも独立していたので10年以上も空き家のままだった。土地の周りに道路がない状態で建て替えも不可能。建物の管理が不十分だったため倒壊の危険があり、早急な対応が迫られていた。

解決方法

接道がない土地。この条件により、一般や業者への売却は困難と考えられた。このために隣接地の地主に売却するのが最善の解決策となる。

売却のための測量や解体などの費用は買主の負担とするように交渉。たまたま隣接地の所有者に駐車場がほしいとの希望があったために話はとんとん拍子で進む。

最終的には提案の金額から買主による測量・解体費用を差し引いた金額で契約がまとまり、売却困難を覚悟していた売主は意外にスピーディな解決に大変に満足したという。

事例5:庭木が伸びすぎて自治体から対応を要請された空き家は管理サービスに委託契約して解決

状況と課題

戸建住宅、築24年、木造2階建て。高齢となった親が施設に入居したために空き家になっていた家に関して自治体から対応要請の通知が届いた。それ以前は2ヵ月に一度足を運んで清掃などを行っていたが、多忙により3ヵ月ほど放置したところ自治体の目に止まったようだった。

庭木が伸びてしまったことが原因。近隣に迷惑をかけたくないという想いも強かったので早急な対応が迫られていた。

解決方法

近隣に迷惑をかけたくないという気持ちを優先するために、まず管理体制を整えるところから対策はスタートした。

業者に依頼して庭木せん定の作業を開始。それと同時に定期的な点検管理の委託と管理中を示す看板を設置した。

業者と交渉して、庭木の管理と点検のオプションをつけて管理サービスを受託。定期的な点検の報告が得られるために家のなかの状況もわかり、看板で管理中であることを示すことにより近隣に対する不安も解消することができた。

それまで重荷に感じていた空き家の管理を低価格で依頼できたので負担感も少なくなり、またそのぶんの労力を施設に入った親のケアのために注ぐこともできるようになったという。

事例6:親族間で共有名義の建物活用、意見が合わないときはリスクを検討して解決

状況と課題

戸建住宅、築49年、木造平屋建て。両親が亡くなり空き家になった実家を複数の家族で相続。共同で所有している。その処理方法において「収入が安定する賃貸住宅」と「短期間で現金化できる売却」の間で共同所有者間の意見が分かれ、事後の方針に関しては立ち往生している状況になっていた。

調査した結果、建物自体は築年数の割に痛んでいなかったが設備が古いために解体を前提に検討する必要があった。

解決方法

賃貸に使用と売却する場合のメリットとリスクを再検討、相談者はアパートの初心者であるため入居者を確保できないケースが考えられ、その場合にはローンの返済に支障がでるなどのリスクがあることがわかってきた。

共同所有者間で、賃貸住宅の事業としての可能性について再度議論した結果、売却を選択する方向で話がまとまる。

建物に関しては所有者の負担で解体工事を行うことになり円満に解決された。

権利者間で意見が合わないときには、専門家に助言を求める姿勢が解決に近づくということを痛感できたと所有者は感想を述べている。

事例7:借地の返還を要求された場合には、借地契約を更新し賃貸住宅に建て替えを選択して解決

状況と課題

戸建住宅、築82年、木造2階建て。借地権の土地にある家、祖母が住んでいたが施設に入居してために空き家になる。1年半経過したところで土地所有者から土地の返還を求められ、どうしたらいいかわからなくなり東京都の窓口に相談した。

調査の結果、建物は築年数のわりにはダメージは少なく、入居可能な状態。ただ、そのままの状態で賃貸への流用や売却を行うのは困難に思われた。

解決方法

相談者と土地所有者の間の話し合いに自治体の担当者が同席し、土地所有者にも土地の有効活用という点でのメリットある賃貸住宅への建て替えを提案した。

相談者は以前より持ち家があったので、この提案を歓迎。土地所有者も、地代・更新料などのメリットが提示され、借地契約を更新した上での賃貸住宅への建て替えが行われた。

借地権の土地に関して返還を求められた場合にはYesかNoか二択ではなく、土地所有者にメリットをもたらす第三の提案が解決をもたらすケースを示す事例となった。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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