不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
公開日: |更新日:
このページでは、相続した土地をすぐ売却するメリットや注意点などをまとめて解説しています。
相続した土地をすぐに売却する主なメリットには、税制上の仕組みに起因する「固定資産税」と「譲渡所得税」の2つが挙げられます。
固定資産税と譲渡所得税は課税対象金額や課税時期が異なっているため、まずそれぞれの仕組みについて理解することが必要です。
固定資産税は不動産の所有者に課せられる税金であり、税額は所有している不動産の評価額によって変動します。
被相続人から不動産を相続した場合、翌年からは新しく不動産を相続した名義人が固定資産税を支払っていかなければなりません。
ポイントは、固定資産税の支払い義務は、「毎年1月1日時点で不動産を所有している人に発生する」という点です。つまり、その年の1月2日から12月31日までの間に不動産を相続した上で、さらに不動産の売却も完了した場合、相続人に対して固定資産税が課せられることはありません。
土地の価格が高まるほどに固定資産税も増大していくため、固定資産税の支払い義務が解消されるとすれば、それは相続した土地をすぐ売却する上で大きなメリットといえるでしょう。
相続した土地を、相続税を支払ってから一定期間内に売却した場合、譲渡所得税についても「取得費加算の特例」を受けられる可能性があります。
取得費加算の特例は、対象となる相続財産に対して支払った相続税のうち、一定金額を譲渡資産の「取得費」として加算できるという税制上の特例です。また対象の相続財産は、相続によって取得した土地や建物、株式といった財産となるため、土地だけの相続であっても利用できる可能性があることも重要です。
なお、相続した土地の譲渡所得税について取得費加算の特例を受けるためには、以下のような要件が定められています。
参照元:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例[令和3年4月1日現在法令等]
相続した土地に関して、譲渡所得税のメリットを得ようと思えば、上述したように「相続開始日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内」の売却が必要となります。
ただし、メリットの内容を具体的に把握するには、まず譲渡所得税の仕組みや関連制度について理解しておかなければなりません。
譲渡所得税とは、不動産を他人へ売却して得た譲渡所得に対して課税される税金です。
譲渡所得は不動産の取得にかかった費用の総額(取得費)に対して、売却によって得られた収益の方が大きくなった場合に得られる差益を指します。そのため、不動産を取得した際に支払ったコストよりも、売却額(譲渡価額)の方が少なくなれば、譲渡所得が発生しないため譲渡所得税も発生しません。
相続した土地について譲渡所得を考える場合、土地の取得費は被相続人が土地を購入した時点の金額を参考に計算するのが一般的です。
つまり、相続した土地の譲渡所得については、大まかに以下のような考え方に基づいています。
なお、譲渡所得には所得税(国税)と住民税(地方税)がそれぞれ課税され、両方を合算して譲渡所得税と呼びます。
より具体的に譲渡所得を求める場合、以下のような計算式を用います。
重要なポイントは、物件の売却価格や購入価格だけで譲渡所得が計算されるのでなく、諸経費についても差し引きした上で、利益として得られた金額を譲渡所得にするという点です。
取得費と、物件を売却するために支払った諸経費(譲渡費用)を合わせて必要経費としますが、どのような費用が必要経費として計上できるかは専門的な判断が必要。計算にはプロのアドバイスを受けることが大切です。
参照元:国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)[令和3年4月1日現在法令等]
被相続人が亡くなって土地の取得費が分からなくなった場合、「譲渡価額の5%」を概算取得費として採用できます。
譲渡所得税の計算式は以下のようになります。
そのため、譲渡所得税を算出するためには、所得税率と住民税率を正確に調べましょう。
不動産の譲渡所得税については、所得税と住民税のそれぞれにおいて税率が定められています。その数値は主として「不動産の所有期間」に応じて決定されるのが重要なポイントです。
不動産の所有期間は、5年以下(短期)と、5年超(長期)にそれぞれ大別されます。譲渡所得税の税率と、不動産の所有期間との関係は、以下のようになるため把握しておきましょう。
不動産の所有期間とは、「不動産の取得日から、売却する年の1月1日までの期間」を指しており、相続人が不動産を相続してから売却するまでの期間ではないことに注意してください。
そのため、被相続人が不動産を取得したタイミングによっては、不動産の売却時期におけるメリットの考え方にも注意が必要です。
参照元:国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)[令和3年4月1日現在法令等]
譲渡所得税に関連して、取得費加算の特例を活用する場合、取得費に加算する相続税額を決定しなければなりません。
取得費加算の特例において、取得費として加算する相続税の額は、以下のような計算式で求めます。
相続税額は、相続した土地の評価額だけで決定することはできず、全ての相続財産について価値を求めた上で算出することが必要です。
そのため、税金や相続税に関する専門知識や経験を有していない一般人の場合、具体的な金額の計算には税理士などへ相談することが無難でしょう。
相続した土地をすぐ売却して得られるメリットについて、固定資産税に関する内容は素人であっても理解しやすいでしょう。
一方、譲渡所得税に関してメリットを最大化しようとすれば、譲渡所得の計算や相続税などの算出が不可欠な要素となり、考えるべき内容が複雑化します。また、不動産の所有期間によっても譲渡所得税の税率が変動する点は無視できません。
加えて相続人が複数いる場合、相続人の中には土地を売却せずに運用した方が得だと考えて、迅速な売却に応じようとしない人まで現れるかも知れません。相続した土地をどのような時期に売却するのが最も理想的なのか、またそもそも売却すべきなのかについては、相続人だけで話し合うのでなく、早めに専門家へ相談した上で、総合的な観点から検討することが大切です。
Copyright © 遺産分割でもめたくない!不動産相続ガイド All Rights Reserved.