不動産の相続でお悩みの方へ

不動産の相続でお悩みの方へ

お身内の方が亡くなり、不動産を相続することは、頻繁に起こることではありません。初めてのことで、何をどうすればよいのか分からない方のために、不動産相続に関する知識やルール、事例などをまとめました。

詳しく解説しているページもあります。ぜひお役立てください。

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こんな時どうする!?
不動産相続トラブルQ&A

不動産の相続におけるトラブルは実に様々で、ひとつとして全く同じということはありません。ここでは、家族間における不動産相続のトラブルにスポットを当てました。「兄弟姉妹編」「夫婦編」「親子編」に分けて様々なトラブル事例をQ&A形式でご紹介いたします。

ご自身が抱える悩みに近いものもあると思いますので、参考にしてみてください。

田中健太郎 弁護士

東京スカイ法律事務所監修:田中健太郎弁護士(第一東京弁護士会所属)

このページは、東京スカイ法律事務所の田中健太郎弁護士に監修していただいています。
不動産相続での実績があり、各種事例から問題解決のお手伝いをしてくれます。平日は22時まで、土日の相談にも対応しており、LINEからの予約も可能です。

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~兄弟姉妹編~

現金とは異なり、不動産は簡単に分けられないものであることから、ご両親が保有する不動産の相続における兄弟姉妹間の紛争というのは、相続に関して生じる紛争の中でも一番起こりやすい傾向にあると言えます。

兄弟姉妹の間での生前のご両親との関係性の違いや、法律の定めと心情とのギャップ、さらには誤解や思い込みなどによるボタンの掛け違いなど、様々な要因によって引き起こされるトラブル事例を、Q&A形式で紹介していきます。

親と同居していた家の売却を兄弟から要求された

親(被相続人)の死去まで同居し、介護をしていた長男。引き続き住み続けたいのに、他の兄弟から退去・売却を迫られたというケースです。

A.親(被相続人)が死去した時点で、親の所有していた家は相続人全員による遺産共有状態に。長男の要望を叶えるには、遺産分割協議にて、相続人全員の合意が必要になります。

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遺言書により格別な相続分の指定もないのに、兄が他の相続人に無断で不動産の登記名義を兄単独のものとして変更した

相続するはずの親の不動産を、兄が無断で兄単独の名義で登記したというケースです。

A.このケースは兄が、正式な手続きを経ず、遺産分割協議書を偽造して登記手続きを行ったと考えられます。登記は無効にすることができます。

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相続時に、異母(異父)兄弟がいることが判明!相続はどうなる?

父親の死後、父親の離婚歴と、父親と離婚した女性との間に子供(異母兄弟)の存在が判明したケースです。

A.前妻に相続人としての権利はありませんが、異母兄弟にはあります。遺産分割協議に参加する権利があり、連絡しないと遺産分割協議は無効です。

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兄弟で相続した不動産を共有の物にすることにして登記も共有名義としたけれど、良くない?

亡くなった父親名義の不動産をどうするか遺産分割協議で決着がつかなかったため、3兄弟の共有名義で相続登記したというケースです。

A. 遺産分割協議で決着がつかないからといって、共有名義にするのは問題の先送りにすぎません。後々のトラブルの火種になることも…。

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親の生前に、1人だけ親から財産の贈与を受けていた相続人の相続財産の取り分は減額できる?

3兄弟のうち、長男だけが生前に父親から、現金贈与を受けていたというケースです。

A. 長男が受けた生前の贈与は、特別受益というものです。贈与の確固たる証拠があれば、その贈与分を差し引いて分配計算をすることができます。

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親の面倒をみていたのは自分。他の兄弟より多く遺産をもらえる?

父親の晩年、兄弟の中で長男だけが脳梗塞を患い要介護となった父親を介護していたというケースです。

A. 寄与分が認められれば、他の兄弟より多くの遺産を相続することができますが、寄与分は、単に介護をしただけではなく、「被相続人の財産の維持や増加」に貢献した場合に認められるものです。

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~夫婦編~

相続において、被相続人(亡くなった人)の配偶者は、常に相続人となります。義理の両親や兄弟姉妹が配偶者よりも相続において優先されることはありません。

ただし、油断は禁物。以下のような事例をケーススタディとしてご覧ください。

子供がいない場合、配偶者は全ての遺産を相続できる?

ご主人を亡くし、義理の親兄弟も他界しているのに、ご主人の兄弟の子である甥と姪から遺産分割を求められるというケースです。

A.残念ながらこの場合、遺言書で甥と姪に遺産を譲らないと明記されていない限り、遺産分割をしなければなりません。

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内縁関係で同居していた被相続人の家は取得できる?

婚姻届は出していないものの、内縁関係にあった方が亡くなり、その親族から明渡しを求められたケースです。

A.遺言書にて内縁女性へ遺産を譲ると明言されていない限り、残念ながら遺産は取得できません。亡くなった内縁男性の法定相続人は、内縁配偶者ではなく、内縁男性の親族になるためです。

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~親子編~

親を子が相続する場合のトラブルについて、代表的なものを見ていきましょう。

両親と絶縁状態でも両親の遺産を相続できる?

息子さんが、結婚を反対されたことで長年ご両親と絶縁状態となっていたというケースです。

A. たとえ勘当されていたとしても、相続欠格や相続廃除などの手続きがされていない限り、遺産相続の権利はあります。

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赤の他人に全財産を譲ると遺言書に書いてある。取り戻したい!

亡くなった父親の遺言書に、全財産を馴染みだったホステスに譲ると記載されていたというケースです。

A.一定の法定相続人には遺留分というものがあり、遺言書の内容に関係なく、一定の遺産相続は保障されています。ただし、遺留分減殺請求をしても、ホステスに遺留分を除いた遺産は取り戻すことはできません。

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被相続人の子供が先に亡くなっているケースでは、相続人は誰になる?

被相続人の子供が先に亡くなっているというケースです。

A. 代襲相続によって子が亡くなっている場合は孫、孫も亡くなっている場合はひ孫が相続人になります。ただし、先に無くなっている子が養子の場合、養子縁組前に生まれた孫には相続人としての権利がありません。

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養子縁組した子供は何人まで相続可能?

親である被相続人の子供の中に、養子がいるというケースです。

A. 相続自体は何人でも可能です。ただし、相続税の控除の対象になるのは、普通養子縁組による養子の場合2人まで(実子もいる場合は1人まで)です。なお、特別養子縁組による養子の場合は実子と同じく、相続税の控除の対象人数に制限はありません。

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連れ子は義理の親の遺産を相続できる?

ご夫婦のいずれも実子(いわゆる連れ子)がいらっしゃる状況で結婚され、結婚後実子が生まれたというご夫婦のお一人が亡くなるというケースです。

A. 養子縁組をしない限り、ご主人が死去した場合は奥様の連れ子にご主人を相続する権利はなく、奥様が死去した場合、ご主人の連れ子に奥様を相続する権利はありません。

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胎児は相続人になれる?

懐妊中に不幸にもご主人を亡くされてしまったというケースです。

A.胎児も法定相続人と認められるため、ご主人の親兄弟は、相続人にはなりません。ただし、死産の場合は話が変わってきます。

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自分でやると大変!
不動産相続の手続きの流れ

自分でやると大変!不動産相続の手続きの流れ

身内の方が亡くなるというのは精神的なショックが大きいものですが、感傷に浸っている暇はありません。

否応なく、想像しているよりもはるかに膨大、かつ煩雑な手続きを行わなくてはなりません。ここでは時系列に沿って、やらなければならないことを確認してみましょう。

相続の開始

銀行口座は、名義人死去を銀行が認識した時点で凍結され預金や出金不可能になります。口座の解約には相続人全員の自筆署名や実印の押印などの手続きが必要になります。
また自動引き落としされている公共料金、税金、ローン会社などへ直ちに連絡し、健康保険や年金に関する手続きなども必要です。そして忘れてはならないのが、市区町村役場への被相続人の死亡届の提出です。提出期限は被相続人が亡くなられた日から7日以内と法律で定められており、期限内の対応が必須です。

遺言書があるかどうか確認

遺言書の有無および内容を確認します。公正証書遺言ならば公証人役場にて確認できますが、自筆証書遺言などの場合は、遺言書がどこにあるか、しっかりと探す必要があります。
また、公正証書遺言は家庭裁判所の検認(遺言書の形式的な状態を調査確認する手続き)は不要ですが、自筆証書遺言等の場合には、家庭裁判所の検認が必要で、封印されている場合は、家庭裁判所において相続人又は代理人の立会いをもって開封しなければなりません。
遺言書を勝手に開封すれば、5万円以下の科料に処せられます。遺言書がある場合とない場合では、手続きの流れが大きく異なります。遺言状がないことを前提に相続手続きを完了後、遺言状が見つかると、その後の対応に非常に苦労します。早い段階で十分に有無を確認してください。

相続人の調査・確定

誰が法定相続人になるのか、面識のある親族の他に法定相続人はいないかを確定するため、戸籍の調査などが必要になってきます。弁護士や司法書士などの助けを借りるとよいでしょう。
未成年者や重度の認知症患者などがいる場合は、遺産分割にあたり家庭裁判所にて特別代理人や後見人の選任手続きが必要です。
ちなみに遺言書がない場合に必要となる書類の詳細は、被相続人死亡日以降の相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票、被相続人の出生時から死亡時まで全ての戸籍謄本、本籍が記載された住民票の除票、そして遺産分割協議書、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書です。

相続財産・債務の調査

被相続人名義だった不動産物件をはじめ、現金や有価証券などがどれくらいあるのか、逆に債務などの負の遺産があるのかを調査します。
相続放棄や限定承認をする場合は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に申請が必要ですが、相続財産についての調査が困難な場合等は家庭裁判所に伸長を請求することも可能です。
こうした調査は時間を要してしまうケースも多く、特に債務などの負の遺産に関しては、相続人の想定外のそれらが発覚し、結果的に相続することにより、債務を負ってしまう場合もあり、細心の注意が求められます。

所得税、消費税の申告(準確定申告)・納税

被相続人が生前に得ていた所得に対する所得税ならびに消費税の申告、納税作業を、相続開始のあったことを知った日から4ヶ月以内に行う必要があります。なお、その場合にも相続人全員の署名と認印が必要となりますので、時間に余裕をもって予め準備しておくことが望ましいと言えます。
被相続人が個人事業主で、青色申告もしくは白色申告をしていた場合、勤務先への確認とは違い、生前の所得の確認に手間取る場合が想定されます。作業に窮した場合には、速やかに弁護士や司法書士に相談してください。

遺産分割協議書の作成

遺言書の内容や、上記の相続財産・債務の調査内容、各相続人の法定相続分の割合などを考慮した上で、遺産分割協議を行います。相続税や所得税、消費税なども考慮した上での遺産分割案を検討し、相続人全員が合意したら、その内容を書面とし、全員で署名・押印を行います。
不動産は現金とは違い、簡単に分割するわけにはいかず、全員が納得する何らかの方法の検討が必要です。ちなみに不動産相続時の主な遺産分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有の4つがあげられます。

不動産の名義変更
(相続登記)の必要書類

遺産分割協議の内容に応じて不動産の相続登記をする場合は、所定の登記申請書に加え、各種の必要書類も添付する必要があります。遺産分割協議書も必要となり、相続人全員が実印で押印して相続人全員分の印鑑証明書も添付します。不動産を相続する相続人の住民票や固定資産評価証明書なども必要になります。

いずれにせよ、かなり煩雑な手続きですので、弁護士や司法書士のサポートを受けることをおすすめします。相続人がそれぞれ遠く離れて暮らしている場合や、それぞれの期限に追われる形で相続に対応している場合、準備が必要な書類の欠落が生じるリスクが高まります。相互間での確認作業を徹底してください。

相続税申告・納税

相続した不動産や財産の範囲、評価額などの資料を揃え、税務調査を受け、相続税の申告、納税を行います。基本的には相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行います。なお、相続税を数年に分けて納税する「延納」や、不動産等の物で納税する「物納」の申請も行うことができます。
以前であれば相続税の対象となる被相続人はごく一部の人に限られ、結果相続税が非課税となる人がほとんどでした。ですが平成27年の相続税改正により、基礎控除の金額が40%減額されており、申告対象となる相続が増加しています。

不動産相続手続きにおける注意点

不動産相続手続きにおける注意点

不動産は預貯金などの現金とは異なり、金額で分配することができず、相続手続きが難航する傾向が避けられません。そこでまずは一般的な不動産の4つの分割方法を理解しておく必要があります。

1つ目は不動産をそのままの形で複数の被相続人に分ける「現物分割」です。例をあげると、建物は長男、土地を妻に振り分ける形ですが、最もシンプルな方法と言えますが、こうした相続は登記時の手続きが煩雑になりがちで、さらに後々難しい状況が生じるリスクが想定されます。

2つ目は不動産を売却して現金化し、それを相続人間で分け合う「換価分割」です。これを実行するには相続人全員の実印と印鑑証明書と署名が必要で、売却時には全員が出席しなければなりません。時間が経過しまうと相続人間での連絡が取りづらくなる、売却に手間取ってしまうなどのリスクが懸念されるため、この方法で合意した場合、速やかな初動が望まれます。

3つ目はまずは1人の相続人が対象となる不動産を個人で相続し、他の相続人に生じた不足分を現金で支払う「代償分割です。不動産を相続する相続人が負担する代償金が高額となり、譲渡に際して生じる譲渡所得税の扱いが複雑になるなど、想定されるリスクを十分理解しておかねばなりません。

そして4つ目が相続対象となる不動産の名義を、相続人の共有名義のままにしておく「共有分割」です。厳密にいえば分割ではない相続で、その時点では最も波風が立たないであろう方法ですが、後々に複数のデメリットが避けられない方法です。

その後の不動産の扱いに関し、各相続人の意見の食い違いが生じた場合、より複雑なトラブルが想定されます。しかも共有名義の財産のあらゆる取り扱いに関しても、共有者全員の承諾が必要なため、共有者の中から亡くなる人が出てしまった場合、その人自身の相続が生じてしまい、権利者全員の同意を取ることが極めて困難となってしまいます。結果相続人間で話し合いがつけられなくなり、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことになります。

この調停は数回で解決する場合のあれば、審判に移行する場合もあり、.前者の場合は調停調書、後者であれば審判所が作成され、これらはいずれも分割後の不動産名義変更の登記時に必要な、非常に重要な書類です。ただしここまで状況がこじれてしまうと、相続人間の人間関係を元の良好な関係に修復することは、極めて困難と言わざるを得ません。

他にも固定資産税の通知が被相続人に届く、対象となる不動産の管理や所有権の所在が不確定な状況による、第三者間のトラブルの元となるなど、不動産相続には数多くのリスクが避けられません。こうした負の連鎖に陥らないためにも、相続した不動産は一刻も早く、相続登記手続きを完了する姿勢が大切です。

自分で不動産相続手続きを行うリスク・デメリット

不動産相続手続きには、それぞれの作業に対して細かく期限が設定されており、準備すべき書類の数も少なくありません。自分で対処することは可能ですが、いざ実際に行ってみると、想定以上の時間と労力、そして諸費用の負担が求められてしまいます。

まずは不動産相続の手続きに関する、正しい知識を理解しておかねばなりません。また準備作成した提出書類に僅かでも不備があれば、公的機関は受領してはくれず、結果二度手間となってしまいます。

次に平日に役所や法務局に自ら足を運ばねばならず、サラリーマンの方であれば、こうした時間を確保すべく、仕事を休まねばならないケースが避けられません。また相続人が複数の場合、必要となる全員の書類を準備せねばならず、さらに相続人に未成年者や認知症、入院中の方がいらっしゃる場合、書類の準備を含めた手続きがより複雑化してしまい、予想以上に時間を要してしまいます。

こうした数々のデメリットを考えた場合、やはり弁護士や司法書士などの専門家の助けを借り、確実に相続を完了する方法がおすすめです。

不動産を相続する際に
知っておきたい情報

親や配偶者の死去によって不動産を相続する際、それまで認識されていなかった、さまざまな事実が判明して相続問題を決着させるのに時間がかかってしまったということは、よくある話です。

そのため、不動産を相続する前に知っておきたい情報をまとめました。

まずは、弁護士や司法書士に相談をしましょう。相続に伴う手続きや考慮すべき事項を明らかにしつつ、相続人が明らかにならなければ、問題なく手続きを完了させることはできません。

被相続人の配偶者や子は法定相続人となりますが、被相続人に離婚した経験がある場合、籍が抜かれていても、元配偶者との間に生まれた被相続人の子も法定相続人となりますので、その子も交えて遺産分割について話し合いをすることが必要となります。これは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せることで全てを把握できます。

また、被相続人がどれだけ資産としての土地や家屋を所有しているかも確認します。これは、資産評価証明書を取り寄せると、被相続人が所有する土地や家屋を把握することができます。また固定資産税を計上するために必要な評価額が記載されています。相続税もこの評価額に準じて計上されますので、遺産分割を行う際には、相続税額にも注意が必要です。

また、評価額を知るだけではなく、全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せて遺産である不動産が登記されているか否かも確認します。それに合わせて所有者名義も確認しましょう。

以上のような点を調べるだけでも時間がかかりますが、相続税の申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内となっています。早期に対応が必要ですので、弁護士や司法書士に早めに相談した方が賢明です。

【1】生前の対策により節税ができる

相続税額は、遺産の評価額に応じて決定されます。そのため、遺産である不動産の評価額が高ければ、その分だけ相続税額は上がるといえますが、不動産の評価額が下がれば、節税が可能といえます。

上記を踏まえた節税対策として、たとえば、土地については、被相続人が生前に、土地を更地のままとせず、土地の上に建物を建てて賃貸することで、貸家建付地としての評価として、更地の場合よりも20~30%程度の評価額の引き下げを図ることが考えられます。

上記以外にもいくつかの方法がありうるため、被相続人が生前に対策を講じることは有効です。

【2】不動産相続時に課税される税金の種類

不動産の相続では、どのような税金が課税されるのでしょうか。相続に伴い課税されるのは、相続税だけではない点に注意が必要です。

不動産を相続する際には、相続登記を行い、不動産の登記名義を被相続人から相続人に変更する必要があります。相続登記の際、不動産評価額に対し1000分の4に相当する登録免許税(1000円未満切り上げ)を支払います。

これは、相続する土地や家屋の数だけ課税されます。

なお、相続登記が完了後、不動産の所有者となった相続人には固定資産税も課税されますので、注意が必要です。固定資産税は土地や建物の評価額に応じて算定されますが、評価額は、中古住宅などは低く、新築住宅でも年数を経過するごとに評価額が下がるといえます。相続した不動産の数が多い場合は、課税される固定資産税も高額になるので注意が必要です。

【3】不動産相続をしたら管理責任者になる

不動産相続をしたら、それだけ自分自身の資産が増えますが、それと同時に不動産を管理する責任者となることも覚えておきましょう。

固定資産税を支払うことやその土地・建物に関する管理について責任を負うことにもなります。一例を挙げると、建物の修繕を行うといったことが含まれます。

不動産の相続後、固定資産税等の税金を支払うことや管理を行うことにより、継続して費用を負担することになるといえます。このような責任を負うことも含めての「相続」であることを肝に銘じておきましょう。

もし、土地や建物のメンテナンスを怠ったことで第三者に損害を生じさせたり、納税の義務を果たさなかったりした場合には、第三者から損害賠償請求がされることや滞納処分を受けることも考えられます。

相続後の税金や管理費のことで悩んだ場合は、相続後に土地を売却することも視野に入れておくとよいでしょう。

【4】不動産の分割方法

相続物件の中に不動産が含まれている場合、相続人同士で誰が不動産を所有することとするか話し合いをする必要があります。これを「遺産分割協議」(いさんぶんかつきょうぎ)といい、この協議の結果、「遺産分割協議書」が作成されます。この遺産分割協議書は、協議の結果を踏まえた相続登記の手続き等に必要な書類となります。遺産分割協議は、相続人全員で行います。遺産分割協議書を作成する場合は、法律上有効となる要件を備えた書類作成が求められますので、弁護士や行政書士、司法書士等に対応を依頼することをおすすめします。

相続人は複数いるのに、遺産が一つの不動産しかないという場合は、どのようにしたら良いのでしょうか。相続人には法定相続分が定められており、遺産が特定の不動産のみであっても、各相続人に法定相続分について相続の権利が認められます。相続放棄をすることも可能ですが、何らかの形で公平な遺産分割をしたいという場合の方法を説明いたします。不動産に関する遺産分割方法をご紹介いたしますので、参考になさってください。

現物分割

遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法です。

たとえば、土地が一つしかない場合、法定相続分に応じた面積によって分筆を行うことが考えられます。具体例でいうと、遺産である土地Xを土地Aと土地Bに分筆し新たに地番を設けた上、土地Aを相続人A、土地Bを相続人Bというように分ける方法です。

その他、もし遺産に土地と預貯金がある場合、たとえば、土地は相続人A、預貯金は相続人Bとして分割する方法も考えられます。

税金負担の認識が不十分であった場合等では、不平等が生じる可能性がありますので、不動産の全部事項証明書等の必要な資料を取り寄せて、話合いを進めましょう。

代償分割

現物分割が困難な合に、共同相続人等のうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人等に対して債務を負担する方法です。

例えば、相続財産が一筆の土地しかない場合、相続人Aが土地を全て相続し、相続人Bがその土地の評価額の法定相続分にあたる額を相続人Aから現金などで受け取ることが考えられます。

平等な遺産分割方法と言えますが、相続人が多い程、土地・建物を取得して他の相続人に現金等を支払う相続人の負担が大きくなります。

相続人の経済的事情なども関係しますので、遺産分割協議において納得のいく分割方法を話し合う必要があります。

換価分割

相続財産を売却して現金とし、その現金を相続人間で分配する方法です。

現時点で相続対象の土地を利用する予定がないという場合や、管理ができないという場合に最適な方法です。ただし、相続財産そのものに資産価値がない場合や、売却のタイミングによっては評価額が低くなり、現金で分割をした際に手元に残るのがほんのわずか、という場合も考えられます。

被相続人となる人が生前に整理できる土地はまとめて売却をしておくというような「終活」により予め現金化しておくことも一案です。

共有分割

相続財産を複数の共同相続人の共有物とする方法です。共有分割により、郷土相続人はそれぞれ1つの相続財産に対して平等に所有権を有することになります。たとえば、相続人Aと相続人Bの2名で共有分割した上で相続登記をすると、「相続人A(持分2分の1)、相続人B(持分2分の1)」というような表記がなされます。

平等な分配方法と言えますが、相続人が死亡した時にはその土地の持ち分に対する新たな共同相続人が増えることになりますし、その土地に家を建てる等という場合、共有者の了解を得ずに行えば新たなトラブルが起こる場合がありますので、避けた方が良いと考えられます。

不動産別の相続人
チェックしたいポイント

例えば複数の相続人がいた場合、相続する不動産の種類によって、遺産分割の方法に違いが生じたり、相続の際に注意すべきポイントが異なったりするため、トラブルを避けるためにも不動産ごとの相続について個々に内容を把握しておくことが大切です。

土地のみを相続する場合のチェックポイント

相続対象の不動産が土地のみの場合、遺産分割の方法としては現物分割・代償分割・換価分割、そして複数の相続人による共有名義での不動産管理(共有分割)と、あらゆるパターンが考えられます。

例えば、現物分割を行うにしても、土地のみであればそれぞれの相続人で分けて相続することができる上、その他の方法についても相続人の同意を得られれば後はスムーズに処理を進められます。

遺産分割のやり直しが難しい

土地の相続は比較的シンプルに考えやすいからこそ、相続人の合意もスムーズに得られることがありますが、だからこそ一度でも相続手続きが完了してしまえば、その後に遺産分割をやり直したいと思っても手遅れになることが大半です。

また、相続時にはきちんと地価を確認して公平に分割したと思っていても、周辺地域との関係などにより、後から一部の土地の価格が値上がりし、結果的に不公平感のある遺産分割になるといったケースも想定されます。

そのため、様々な場合を想定しながらきちんと相続人同士で意識共有を行い、それぞれが納得した上で相続の手続きへと移ることが肝要です。

土地の相続に絡む税金

土地を現物分割で相続するとして、相続税や登記費用といった税金の他に、翌年から固定資産税も土地の価値に応じて発生します。また、単なる更地は住宅用地の特例といった税制上の優遇措置を受けられないため、課税標準額も住宅用地と比較すると高額になる点が重要です。

住宅用地を相続する感覚で土地のみを相続した場合、固定資産税の支払額が予想以上に高くなる可能性があることは、十分に注意しておかなければなりません。

もちろん、土地を売却した場合は、譲渡益に応じて売却翌年度に譲渡所得税が発生します。

戸建て物件を相続する場合のチェックポイント

土地の上に住宅が建っている戸建て物件を相続する場合、まず一般的には現物分割による相続を選択することはできません。そのため、遺産分割方法も代償分割・換価分割・共有分割の3つから選択することになるでしょう。

また、現在その住宅に誰かが暮らしているのか、あるいは空き家であるのかという点も重要です。

例えば、すでに家族の誰かが暮らしている場合、そのまま居住を続けるのであれば代償分割によって居住者が戸建て物件を相続し、他の相続人には相応の額の現金を分配するといった流れになります。この場合、小規模宅地等の特例を受けられるため、相続税の税率において優遇される反面、他の相続人へ支払うための現金を用意しなければならないといったハードルも発生するでしょう。

誰も相続する物件に居住する予定がなかったり、共有する意思がなかったりすれば、売却によって現金化し、分配する換価分割を選択も可能です。ただし、その場合は小規模宅地等の特例を受けられない上、譲渡所得税についても考慮しなければなりません。

共有分割はひとまず問題を先送りできるものの、改めて相続が発生した際の権利関係が複雑になる可能性もあります。

配偶者居住権によって得する人・損する人

基本的に、戸建て物件の相続についてはどのような方法を選択するにしても、事前にきちんと協議して相続人の総意を得られていなければ、後々トラブルが生じるリスクが残ってしまいます。そのため、特に住宅での居住を希望する相続人がいる場合、状況によっては法定相続分に固執せず、それぞれの相続人が合意できる条件を設定すべきかも知れません。

また、民法改正に伴って2020年4月1日より「配偶者居住権」が認められるようになりました。

これは故人の配偶者に対して、生活の安定化を図るため相続物件を自宅として居住する権利を認めつつ、他の遺産も相続できるように認めた権利であり、配偶者にとって有利なものといえます。

ただし、配偶者居住権を行使すると、不動産の価値が一気に下落してしまう可能性があり、やはり後の相続時を想定して他の相続人から同意を得られないといったケースもあるでしょう。なお、配偶者居住権は権利人である配偶者の死亡によって消滅します。

戸建て物件の相続に絡む税金

戸建て物件の相続問題が解決しない場合、空き家として共有分割するといった方法も選択可能です。しかし、空き家を放置していると行政から管理不行き届きとして認定され、「特定空き家」に指定されてしまうリスクもあります。また、行政の指導や助言に従わずに空き家を放置すれば、住宅用地の特例から除外され、税額が数倍に上がってしまうことも、それに加えて、地域によっては固定資産税だけでなく都市計画税なども課せられるため、空き家をそのまま放置することは大きなリスクといえます。

一方、空き家を第三者へ売却する場合、譲渡所得に対して2023年12月31日まで「3,000万円特別控除」が適用されるため、換価分割などにおいてメリットを得られる可能性もあります。

空き家問題は全国的に是正が進められており、その点も考慮して協議するようにしてください。

マンションを相続する場合のチェックポイント

マンションを相続する場合、現物分割を選べないことは戸建て物件の相続と同様ですが、土地を含めてマンション一棟を所有している場合でなければ、土地については除外して考える必要があります。

また、居住用のマンションなのか、あるいは不動産投資として運用している物件なのかでも、注意すべきポイントは変わってくるでしょう。

マンションは築年数によって価値が変動するため、居住用としても賃貸用としても時間経過による影響を考えることが不可欠。加えて、管理費や積立金などの支払いについても考えなければなりません。

配偶者居住権とマンションにおける問題

配偶者居住権は「配偶者に対して居住する権利」を認めるものであり、絶対に配偶者が居住する必要はなく、配偶者居住権を行使した上で物件を使って収益を得ることも可能です。しかし、分譲マンション(専有部分)について配偶者居住権を行使する場合、マンションの価値に対する考え方と、配偶者の生活を優先する配偶者居住権が対抗するケースも想定されており、法的に複雑な問題へ発展する可能性も懸念されています。

もしも法的な問題が生じた場合、素人だけで判断できないため、専門知識を備えた弁護士へ相談してください。

※参考資料:神奈川県弁護士会専門実物研究14号,佐藤元,「配偶者居住権とマンションにおける管理費等支払義務」[pdf](http://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/torikumi/study/pdf/14/professional_practice_research14_4.pdf)

マンションの相続に絡む税金

例えばマンションを売却すれば譲渡所得税がかかります。また、不動産投資を承継する形で賃貸用物件を相続すれば、賃料による収益に対して所得税が発生します。

マンションは活用法を色々と想定できるからこそ、それぞれのケースに応じた節税対策や相続問題の解決法を考えることが必要です。

不動産相続にもある!負の遺産は相続放棄が必要

不動産は資産価値が高いため、相続時には親や先祖代々の土地を受け継ぐことが慣習でした。ところが最近では、不動産自体の価値が下がり、他方で固定資産税等の負担が生じることから、不動産を所有することは必ずしもメリットがあるとは言えない場合が多いといえます。

たとえば親が住んでいた土地や家を相続した場合、税金等の費用負担が生じます。まずは親から相続する際に相続税という税金が課せられます。相続税は一定の資産を相続する人に対して課せられる税金であり、課税される場合には、高額の税金が課税されます。

たとえその不動産に誰も住まない場合でも、管理費や固定資産税といった費用や税金の負担が生じます。

もし不動産を相続したことで、上記のような費用等の支出が家計を圧迫するようになるのなら、最初から相続をしないという選択肢もあります。それが相続放棄です。

ただし、相続放棄を選択した場合は、不動産だけではなく、預貯金など全ての遺産について放棄する必要がある点で注意が必要です。

相続すると大変!?不動産相続によるリスク

不動産の相続であっても、相続人の資産が増えるどころか、かえって負の遺産として相続人に負担が生じる懸念があります。相続した建物や土地を自ら利用せず、誰かに貸すことも売ることもできないと、税金や費用の負担だけが増えてしまいます。

建物と土地を相続するためには、場合によっては相続税がかかりますし、管理コストも生じます。建物については、人が居住しなくとも劣化が進みますし、日ごろから適切な管理をしておかないと、知らぬ間に犯罪に使われる危険性もあります。さらには火災保険などの保険料や、固定資産税の支払いも必要になります。

負の遺産に該当する3つのケース

親や先祖から引き継ぐ全ての土地や建物が負の遺産となるとは限りません。もしも負の遺産となることがある程度予測できたら、相続放棄をするという選択肢も考えなくてはいけません。不動産が負の遺産となり得るケースが主に3つあります。

まずは入居者が入らない空き家となる場合です。相続人が既に別の場所で家を所有しており、たとえ相続をしても自分や兄弟など誰も住む予定がない家であれば、誰かに家を貸すという選択肢もあるでしょう。

しかし、誰かに貸すといっても、簡単に入居者が見つかる可能性は低いのです。抵当権が設定された不動産も負の遺産になり得るといえます。抵当権が設定されているということは、抵当権者に対して被相続人が債務を負っている可能性があり、その返済を継続していかなければならなかったり、抵当権が設定されていることによって自由に売却することはできないためです。買い手のつかない土地を引き継いだ場合も負の遺産になりがちです。

周囲の条件や、人口減少などにより、不動産を売りたくても売れないケースが増えてきています。そのような場合でも不動産を所有していることで維持管理に関する費用を負担しなくてはいけないのです。

1.入居者が入らない空き家

親が住んでいた土地と建物を引き継いだものの、自分や兄弟は既に家を所有しており誰も住む予定がない場合や、親が経営していた賃貸アパートやマンションに空き部屋がある状態で引き継いだ場合、空き家の状態が長く続くことも十分あり得ます。それらの家屋は誰かに貸して賃料収入が得られれば資産として利用価値があるのですが、空き家が続いてしまった場合は維持管理費の負担が重くのしかかってしまうのです。

そうなれば資産ではなく負の遺産になってしまいます。加えて、相続時には、相続財産である土地や建物の評価額が高額な場合は、相続税を支払う必要があります。また、たとえその建物に誰も住まなくても掃除や草むしりといった管理を行う必要がありますし、万が一火事などの被害にあったときのための火災保険にも加入する必要があります。

さらには、固定資産税も大きな負担になります。これらの維持管理費や保険料、税金の支払いが重い負担となり、家計を圧迫してしまうケースも少なくありません。

2.抵当権が設定されている不動産

抵当権の設定されている不動産を相続する場合も、対象の不動産が負の遺産になり得ます。抵当権とは、抵当権設定者の占有を認めつつ、不動産の交換価値を把握する担保物権であり、抵当権者は、債務者が債務の履行をしない場合には、対象となる不動産を競売して得られた売却益から、他の債権者に優先して弁済を受けることができることになります。

たとえば住宅を購入する際、一般的には、購入する住宅を担保として銀行などからお金を借りてローンを組んで返済していきます。このローンの支払いが残っているうちは、債権者は住宅について抵当権を有している状態です。

つまり、抵当権が設定されたままということは、負債も残っているということになります。上記の例のように、被相続人がローンを完済する前に亡くなった場合、負債があるといえ、その被相続人の遺産相続においては、抵当権が設定された住宅とともに負債も引き継ぐことになるのです。つまり相続をした人が残っている負債も返済していかなくてはいけなくなります。

相続税や維持管理費に加えて負債の負担も加わりますので、経済的な負担はかなり大きくなってしまうでしょう。他の遺産と併せても債務金額のほうが多くなるような時は、不動産を相続するのではなく相続放棄をしたほうが負担を少なくできるでしょう。

3.売却できない土地

日本人は昔から土地に対する執着心が強く、先祖代々引き継いだ土地を売りたくないと考える方も少なくありません。しかしながら人口減少などさまざまな理由で土地を売りたくても売れないケースがあります。土地は所有しているだけでも固定資産税が課税され、それだけでもかなりの負担になります。

売却できない土地を相続してしまった場合でも相続税や管理費、固定資産税の支払いが必要になり、その負担が年々重く感じるようになってきてしまうのです。初めから使わない土地だとわかっていれば相続前に売却するのも手段のひとつです。売却時には不動産会社選びにも注意が必要です。

不動産会社も得意不得意や実績が異なりますので、いくつかの不動産屋さんに依頼したほうが早く売却先が見つかることもあります。それでも売却先が見つからない時は、相続放棄も選択肢のひとつとして考えておきましょう。相続放棄することで、土地を相続する際の税金や固定資産税、管理費を支払う必要もなくなります。

相続債務の調査方法

人が亡くなると基本的にはその子供や配偶者が資産を引き継ぐことになります。自ら相続放棄をしない限りは遺産を相続することになるのですが、心配なのが借金や負債まで相続の対象となってしまう点です。

そのことを知らずに相続をしてしまうと、経済的負担が大きく増えてしまうことになることがあります。そこで、相続時の負担増を避けるために設けられている制度が相続放棄です。負債の有無を事前に調べるのは簡単ではありませんが、方法はいくつかあります。まずは郵便物チェックです。

家族に内緒で借金しているケースも多いのですが、本人宛に書面が送られてきているはずですので、その内容をチェックします。もしくは銀行口座の入出金明細をチェックすることで、借金の有無を知ることもできます。他にも信用情報の開示を求めることで、借金があるかどうかを調べられます。クレジットカードを作成するときやローンの審査などでは信用情報を調べた上で、許可が出ます。この情報を本人や相続人が請求すれば開示してもらえるのです。

遺言書の作成について

遺言書は、必要な要件を欠けば無効となる法律文書であるため、作成には専門的知識を要します。また、遺言者の意思を反映する内容が記載されるため、作成後に遺言者の心境が変化することに伴い、内容に不都合が生じることもありえます。

遺言者の財産も、年月が経つにつれて価値が変動します。

自筆証書遺言を作成する場合にパソコンを使うことはできない

自筆証書遺言を作成する場合、「自筆」であることが要件となるため、パソコンで作成した遺言書の効力は認められません。自筆証書遺言については、全文自分で記載する必要があります。自筆を求められる理由は、自らの手で書くことで偽造や変造を困難にし、また、遺言者の真意に基づく遺言であることを担保するためです。

遺言書を残しておくことによって相続人間のトラブルを防ぐことが可能です。病気や障害などから自筆が難しい場合には、公正証書遺言や秘密証書遺言であれば、自筆でなくとも作成が可能です。

公正証書遺言は、パソコンで作った書面をそのまま遺言書にはできませんが、作成書面を公証役場にて公証人の前で内容を口頭で伝えて公証人が遺言書を筆記します。

秘密証書遺言も、公証役場で公証人が関与し、遺言者がパソコンで内容を作成して署名・押印し、その遺言書を封じ、同じ印章で封印する、という手順で作成することが可能です。ただし、署名部分はパソコンで作成することはできません。

遺言書は、方式によって有効となる要件が異なるため、弁護士に作成について相談してみることがおすすめです。

自筆証書遺言の訂正方法には決まりがあるのでチェックしておこう

遺言書は内容が間違っていた場合に、変更や削除、加筆する場合には、決められた方法による訂正が必要です。訂正方法に不備があれば変更や削除、加筆した部分は無効です。

間違った場所を指示して変更する旨を付記し、変更場所を二重線で消し、訂正印を押します。訂正印は遺言書で押印したものと同じ印を使います。変更した内容を付記する部分で、何文字加えて何文字削除したかも記載して署名を行います。

以上の通り、変造・偽造を防ぐために普通の書面よりも訂正方法が厳密に定められています。二重線ではなく斜線で訂正した場合、裁判所において訂正として有効と判断されない例もあります。

また、訂正は手間だけでなく、訂正部分が多くなることで複雑な内容の遺言書となってしまうため、誤りや変更したい箇所がある場合は、初めから作成し直すことが望ましいといえます。時間の経過とともに訂正したい点も生じる可能性がありますので、定期的に見直しをして作成し直すようにしましょう。

自筆証書遺言の場合は内容が不明瞭になりやすいので気を付ける

自筆によらずに作成した場合だけでなく、修正液で訂正していたり日付が入っていなかったりする場合にも、方式の不備となります。

ビデオや録音などの音声で作成した遺言も認められません。記載内容についても、預貯金の記載があっても株式などの記載が漏れていたり、記載のある不動産やない不動産など曖昧な記載があったりした場合は不明瞭と判断されます。

遺言の内容は誰がみてもわかるように、些細なことでも細かく記載指摘、署名は戸籍に記載されている漢字を使ってフルネームで記入します。押印も忘れがちなので注意しましょう。

押印は認印でも可能ですが、偽造を防止するためにも実印がおすすめです。

遺言書を作成した遺言者が、記載しなくても問題ないと考えて省略したことが不備になることが多いといえます。

遺産相続に詳しい弁護士が最適

普段仲の良い兄弟や親戚の間柄でも、遺産相続の際にトラブルになるケースが少なくありません。スムーズに相続に関する手続きを行うためにも、弁護士に相談しておくと安心です。弁護士を選ぶときも、遺産相続に詳しい、遺産相続に関する対応の経験が豊富な弁護士を選ぶようにしましょう。

遺産相続に関する対応について経験が豊富な弁護士は遺産相続に関する専門的な知識があり、さまざまな相続案件に携わってきているため、スピーディーな問題解決や手続きが期待できるからです。

弁護士事務所の多くが事務所のウェブサイトを開設していますので、そこでその事務所や所属弁護士の得意分野や実績についてある程度調べることができます。初回の相談だけなら無料で応じてくれる事務所もありますので、対応などを調べるためにも相談に行ってみましょう。

話を聞いてくれる弁護士が心強い

司法試験制度の改正により、弁護士の数は増加しています。法テラスなどの制度も設けられて、弁護士に気軽に相談できる機会が増えていますが、弁護士にもいろいろなタイプがいますので弁護士選びには注意が必要です。

相続について相談したいことが生じた場合には、相続について詳しいだけでなく、こちらの話をよく聞いてくれる弁護士を選ぶことが理想です。

こちらの話を聞いてくれるということは、依頼内容や相談したい事を的確に理解しようと努めてくれているといえ、信頼できるためです。相続に伴うトラブルはデリケートな問題ですので、信頼できる弁護士に任せた方が安心です。

また、ご自身の死後に、法定相続人ではなく第三者への財産分与を検討しているなら、遺言書を作成することで財産を遺贈できます。遺言書は自分でも作成できますが、ご自身の死後に遺贈を滞りなく実現させるためにも、詳しい弁護士に相談することが適当です。遺贈が行われた場合、遺言書の内容によっては、法定相続人である配偶者やその子供たちとの間でトラブルが起こることが少なくないからです。

弁護士であれば、法定相続人と、遺贈を受ける人との間で、できる限り円滑に手続きが完了するように、法的な立場から最適なアドバイスをしてくれるでしょう。また遺言書も適切に作成しないと、その効力が生じない場合もありえます。確実に遺贈するためには、弁護士のアドバイスを得ながら法的にも効果のある遺言書を作成することが望ましといえます。

遺贈を受ける人の立場も考慮する

法律では法定相続人である配偶者や子供に相続財産が分配されるように定めていますので、法定相続人は一定程度の遺産を受け取れるものだと見込んでいるでしょう。そのため、被相続人が法定相続人ではない第三者に財産を遺贈するという事実が発覚した場合、その受取人と法定相続人との間でトラブルが生じる可能性があります。そういったトラブルが原因で第三者が快く遺産を受け取れなくなるかもしれません。

遺贈は遺言書の作成によって行えますが、その作成時には遺贈を受ける人の立場や、法定相続人との関係もよく考えておく必要があります。遺贈する立場にある遺贈者は、生きているうちにその点についても法定相続人である配偶者や子供たちとよく話し合いをし、理解を得られるように努めましょう。

また死後に遺贈を受ける人がトラブルに巻き込まれないように、弁護士に相談して対策をとっておくと安心です。

相続放棄について

不動産は価値ある資産の一つとして考えられていましたが、近ごろは不動産の相続を放棄する、もしくは被相続人が生前に売却等の処分をするケースも少なくありません。それは人口減少などが原因で不動産の価値が下落していることや、不動産を譲り受けたとしても、所有に伴う支出ばかりが多くなってしまうからです。

資産となると思って相続した不動産により、逆に負担が増えてしまうのは本末転倒です。そのような負の遺産は相続せずに放棄することも可能なのです。

相続放棄の手続きは専門家に

遺産には不動産や預貯金のようなプラスの資産もありますが、借金などの負の遺産も相続の対象となるのです。遺産相続によってそれらの遺産を全て引き継いでしまうと、借金の返済義務も相続人が負うことになり、返済しなければ相続人の財産が差し押さえられる可能性もあります。

そのような負の遺産があることが予めわかっているのであれば、相続放棄することも手段のひとつです。ただし、相続放棄をすると、負の遺産だけでなく、預貯金などの資産となる遺産も全て相続を放棄することになってしまいます。

そのため、借金があるからという単純な理由で、相続放棄をしてしまうと本来受け取れるはずの資産までも失うことになってしまうのです。相続放棄を行うときは、専門家に相談して慎重に手続を行うようにしましょう。

相続放棄をする場合は慎重に

相続する予定の財産の中に、負の遺産(借金や、持っていても莫大な維持費だけがかかる土地など)が見つかったときは、相続放棄を検討してみましょう。ただし負の遺産があったとしても全てのケースにおいて相続放棄の手段が最適だとは限りません。

しかも、一度相続放棄の手続きを行ってしまうと、原則として相続放棄の撤回や取り消しはできなくなります。だからこそ手続きは慎重に行う必要があるのです。

ただし、例外もあります。

相続放棄の撤回や取り消しが認められる場合とは、詐欺又は強迫による相続放棄であった場合、未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄した場合、成年後見人がいるにもかかわらず、成年被後見人が後見人の同意を得ないで相続放棄をした場合、被保佐人が保佐人の同意を得ないで相続放棄をしてしまった場合等です。

また、相続放棄の申述が受理される前であれば、相続放棄の申述を取り下げることは可能です。この場合は、正式に裁判所で相続放棄の申述が受理されているわけではないので、取り下げても他の相続人や利害関係者に影響がないためです。

場合によっては相続放棄以外の手続きが適当である場合もありますので、法律の専門家である弁護士に相談してみることが望ましいといえます。弁護士に相談してみてやはり相続放棄が最適な手段だと判断された場合でも、弁護士に依頼すれば、手続きもスムーズに行ってもらえるでしょう。

相続放棄をすることで他の相続人の相続分が増える場合がある

法定相続人は、複数人存在し、その人たちの間で遺産が分配されるケースが多いといえます。相続放棄の手続きは、個別の法定相続人がそれぞれ個人で行うことができる手続きですので、相続放棄の手続きを行っていない法定相続人は、他の法定相続人が相続放棄の手続きを行ったとしても、遺産を受け取ることができます。

相続順位が同等の法定相続人が相続放棄をすれば、他の相続人の相続分は増えることになります。また、もしも遺産分割協議を行う必要がある場合には、法定相続人全員が集まって話し合いを行う必要がありますが、相続放棄を行った人は、相続人とならなかったこととなるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。法定相続人が相続放棄をしたか否かは、家庭裁判所などを通じて法定相続人による相続放棄の有無を照会することができます。

相続放棄の手続き

相続放棄をするためには、家庭裁判所において相続放棄の申述手続きをしなければならず、この手続きには、いくつか必要な書類があります。

相続放棄の申述をする人が誰であっても、相続放棄申述書・被相続人の住民票除票又は戸籍附票・相続放棄する人の戸籍謄本・収入印紙800円(申述人1人につき)・80円切手5枚程度が必要となります。

上記の他、申述人と被相続人との関係によって必要となる書類があるため、裁判所のホームページも参照ください。

相続放棄申述書が必要となる添付書類とともに提出されると、相続放棄申述受理通知書というものが家庭裁判所から申述者に届きます。この書面が届けば、相続放棄の手続きが終了したことになります。

不動産相続における遺言書作成のススメ

不動産相続における遺言書作成のススメ

遺産相続を原因とした親子や兄弟間で骨肉の争い。その原因の筆頭となるのは、不動産に他なりません。現金など、分配しやすいものであれば問題ありませんが、不動産というものは、平等に分けるということがなかなかできません。

そこで遺言書を作成し、不動産の扱いをどうしておくか指定しておくことで、ご自身の死後、そうした争いの芽を予め摘んでおくことが重要なのです。

事例から不動産
相続にまつわる
注意点を解明!

前述の通り、不動産相続は公平な分割というものがなかなか難しく、加えて相続税などの問題も加わって、本当ならば所有して居住する等して活用したいのに、泣く泣く手放さなければならなくなったということも多いのが現実です。

そうした事例を予め知っておくことで、ご自身の相続における対策や問題解決のヒントとしていただきたく思います。

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
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このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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