不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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2018年の7月に、不動産の相続に関する「相続法」が大きく改正されました。相続法の大幅な改正は、1980年に実施されて以来です。今回の改正は、実に38年ぶりの大幅な改正となります。
2019年7月から施行される、時代に合わせて新しく改正された相続法の要点を解説します。
配偶者居住権とは、亡くなった被相続人の配偶者が、相続開始時点で被相続人の持ち家に住んでいた場合に、そのまま自宅に住み続けることができる権利のことです。
これまでも、配偶者が自宅に住み続ける場合、被相続人の自宅を遺産として相続すれば今まで通り居住することが可能でした。しかし、相続した自宅の査定額が高額であると、それ以外の遺産を受け取る分が遺産分割によって減ってしまうということがありました。
配偶者居住権を相続すれば、自宅に住み続けるかわりに自宅の所有権を他の相続人に譲る、ということも可能になります。その場合、配偶者は自宅以外の遺産を多く引き継ぐことができるようになります。
今回の法改正で、配偶者短期居住権という権利も新しく創設されました。これは、遺産分割で誰が自宅を相続するか確定する、もしくは被相続人が死亡してから6ヵ月経過するまでは、配偶者は自宅に無償で済み続けることができる、という権利です。
居住できる期間が決まっているかわりに、この権利は遺産分割に含まれないという特徴があります。
今までは預貯金の名義人が死亡すると、金融機関での判断で引き出しが不可能になり、遺産の分割が正式に終了するまで引き出しが認められないのが一般的でした。
しかし、今回の改正で、仮払い制度という制度のもとで被相続人の預貯金の引き出しが可能になり、仮払い分は相続時に遺産から差し引く、という対応が可能になります。
仮払い制度を利用するには、家庭裁判所への申し立て、または金融機関窓口での手続きが必要となります。
金融機関での手続きで引き出せる仮払い金額はあらかじめ上限額が決まっていますが、家庭裁判所での手続きで引き出せる額は「他の相続人の利益を損なわない範囲で」となっており、緊急時以外で資金が必要となった際に利用することができます。
この制度はあくまでも「遺産の仮払い」を目的としたものなので、相続人が被相続人の遺産の相続分を即座に全額引き出すことができる、という制度ではありません。
ただし、仮払い分に関しては、他の相続人の同意がなくても引き出すことが可能です。
自筆証書遺言に添付する「財産目録」は、今までは遺言同様に自筆での作成のみとされてきました。しかし、今回の法改正で財産目録に限りパソコンやコピーでの作成も認められるようになりました。
偽造を防ぐために各ページに署名・捺印が必要なことには変わりありませんが、預貯金や土地、建物などの目録がパソコンで簡単に作成、修正できるようになったため、財産目録作成の負担軽減が見込めるようになります。
今回の法改正でパソコン作成が認められるようになったのは「財産目録」のみです。
そのため、遺言自体は今まで通り自筆での作成が必要となります。財産目録をパソコンで作成する場合は、自筆証書遺言に財産目録を別紙という形で添付する、という形式が望ましいでしょう。
これまで自筆証書遺言は自宅での保管を原則としていましたが、今回の法改正によって法務局に遺言状の原本と画像データを保管することが可能になりました。
この遺言書保管制度によって遺言の改ざんや破損を防げるだけでなく、預かった遺言状に関しては、今まで必要であった家庭裁判所の検認も不要となります。
仕事の都合や役割意識などの問題から、高齢者の介護の役割を担うのは、その人の子供よりも子供の配偶者であることが多いです。
しかし、被相続人の実子と配偶者以外は基本的に相続人になれないという民法上の制約により、被相続人の子供の配偶者や、被相続人の孫などが介護に貢献していても、金銭的な見返りが得られないことが問題点でした。
しかし、今回の法改正で、介護や看病などに貢献した親族が、遺産を相続した相続人に対して「特別寄与料」という金銭の支払いを請求することができるようになりました。
相続人に特別寄与料を請求することが可能な親族と認定されるには、二つの条件があります。
一つは、被相続人の6親等以内の親族であることです。6親等と言うとピンときませんが、「自分の祖父母のいとこ」「自分のいとこの孫」など、かなり広い範囲になります。
もう一つは、被相続人の3親等以内の親族の配偶者であることです。この場合の配偶者とは法的に婚姻している者を指し、内縁や事実婚の妻などは含みません。
したがって、妻として介護に貢献した実績があっても、法的な婚姻関係が無く事実婚状態であった場合は特別寄与料の請求ができませんので注意が必要です。
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