不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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秘密証書遺言とは、遺言の中でも「遺言書の存在だけを公証役場に認めてもらい、内容については誰にも知られず秘密にしておく」というタイプの遺言です。このページでは、秘密証書遺言の特徴や、秘密証書遺言として遺言を作成するメリット・デメリットなどを解説しています。
秘密証書遺言とは、遺言書の存在を公の秘密として、遺言の内容を被相続人(遺言者)だけの秘密にしておく遺言形式です。
つまり、秘密証書遺言とは以下の2つの条件を同時に満たすものとなります。
なお、秘密証書遺言にも当然ながら成立要件があり、正しい様式でまとめられていなければ秘密証書遺言が法的拘束力を持つこともありません。
秘密証書遺言の場合、遺言書の存在自体はすでに複数の証人によって知られています。
しかし、その中身については秘密証書遺言を書いた本人しか知らず、遺言内容に関して秘密性を保てることがメリットです。
伝えたい想いがあるという存在だけを示しつつ、何を伝えようとしているのかまでは隠しておけるという点で、人によってはメリットの多い遺言になります。
前述した通り、秘密証書遺言の存在は公証人と2名以上の証人によって認められています。そのため、被相続人の死後にせっかく書いた遺言書が見つけられないまま放置されるといったリスクを軽減できる点はメリットです。
ただし、公証人や証人は遺言書の「存在」こそ認めているものの、内容について知る立場にないため、遺言書としての要件を適切に満たしているかどうか内容保証されるものではないことを理解しておきましょう。
公証人や複数の証人によって存在が認められた後、公証人が封紙に署名して遺言書を封印します。もしも誰かが遺言のないようを書き換えようと封を破ってしまった時点で、秘密証書遺言の効力は認められなくなります。そのため、悪意のある誰かの手によって遺言内容が書き換えられ、望んでいない相続の形になるといった心配はありません。
ただし遺言書そのものを破棄させることはできるため、その点について注意することも必要です。
秘密証書遺言の場合、被相続人の自筆が求められる部分は少なくとも署名だけです。つまり、署名さえ本人の自筆であれば、本文の内容は手書きでもワープロやパソコンでも、代筆でも構いません。そのため、秘密証書遺言は自筆証書遺言よりも簡便に文書として作成しやすいといったことはメリットです。
なお、押印に使う印鑑は実印だけでなく認印でもOKです。
秘密証書遺言では公証人による対応が不可欠なので、少なくとも公証人を手配するためのコストがかかります。しかし公正証書遺言を作成する場合より費用が安いというメリットもあります。
秘密証書遺言では公証人などが遺言の内容を確認できません。そのため、もしも遺言書としての要件を満たしていなくても、そのまま封印されてしまう恐れがあります。
秘密証書遺言では被相続人(遺言者)しか遺言の中身を知れないため、遺言書としての様式を守って要件を正しく満たしているかどうかの責任は、全て被相続人に存在します。
自筆証書遺言は紙とペンで作成すれば大丈夫ですが、秘密証書遺言の成立には公証役場へ遺言書を持参して、さらに公証人や証人などを用意しなければならないといった手間がかかることも事実です。そのため、いつでも好きなタイミングで作成できる自筆証書遺言と比較すれば、作成手続きに手間がかかって、遺言内容を書き換えたいと思った時にもスムーズに遺言内容の変更をできない恐れもあります。
秘密証書遺言は公証人に依頼して立ち会ってもらわなければならず、手数料が発生します。また、公証役場へ赴くための交通費や移動時間といったコストが発生することもデメリットです。
なお、秘密証書遺言の作成コストは一律で11,000円です。
公証人は依頼によって見つけられるとして、他に2名以上の証人を見つけなければなりません。加えて、証人には適正と認められない人がいることにも注意する必要があります。
例えば以下に該当する人物は秘密証書遺言の証人になることができません。
加えて、証人には信頼できる人を選ばねば余計な問題に発展しかねないリスクもあるでしょう。
秘密証書遺言は公証役場で存在を確認・封印され、作成記録が公証役場へ登録されますが、遺言書そのものの管理は本人が自ら行わねばなりません。
そのため、どこにしまってあるのか本人しか知らなければ、死後に発見されないままという恐れもあります。また、本人がなくしてしまえば、せっかくの労力やコストが無駄になってしまうこともあるでしょう。
秘密証書遺言の内容が遺言として法的に効力を認められるには、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。
家庭裁判所の検認を受けるには申立を行う必要があり、時間や手数料がかかります。
秘密証書遺言の作成手順は主として以下のようになります。
最初に遺言書としてまとめる内容を考えなければなりません。どの財産を、誰に、どのような割合で分配するのか、相続させたい内容について冷静に考えましょう。
遺言内容が決まれば遺言書の本文を作成します。
秘密証書遺言では自筆署名と押印があれば法的に認められるため、本文の内容はパソコンで作成したりテンプレートを使用したりしても問題ありません。
遺言書へ封をして押印した後、遺言書を公証役場へ持参します。遺言書を作成した本人が封をするので、他の人間に中身を見られる心配もありません。
ただし公証役場では証人に立ち会ってもらう必要があり、公証役場へ出向く際には証人とのスケジュール調整なども必要です。
公証人と2名以上の証人に立ち会ってもらい、公証役場で秘密証書遺言を封印します。
公証役場での手続きが完了すれば、遺言書は再び持ち帰って自分で保管します。なお、秘密証書遺言の存在は公に認められているものの、その保管について公証役場が責任を持ってくれることはありません。
秘密証書遺言の保管状況はしっかりと管理して、正しく遺言書が効力を発揮するようにしておくことが大切です。
秘密証書遺言を適正に作成しようと思えば、次のような点に注意しておかなければなりません。
秘密証書遺言は、本文を自筆で書かなければならない自筆証書遺言と異なり、署名さえ自筆であれば本文内容はパソコンや代筆でも構いません。しかし、あえてできる限り自筆で書くことを心がけることもポイントです。
なぜなら、仮に秘密証書遺言としての要件を満たせなくとも、本文を自筆で書いておけば改めて自筆証書遺言としての価値を認められる可能性があるからです。
ただし、自筆で作成する際にも不備が内容にしっかりと確認しておきましょう。
内容が曖昧な状態では遺言書として効力を発揮しない恐れがあります。どのような内容を渡すのか、はっきりと書くことが大切です。
例えば預貯金であれば銀行名や支店名、口座番号、口座の種類などを書き、不動産であれば登記されている内容を正確に書きます。
相続人同士が後のトラブルにならないよう、全ての財産について誰にどの程度の割合で相続するのかはっきりと書かなければなりません。また、希望する相手の名前などもしっかりと区別できるように書くことが大切です。
その他、遺言内容をスムーズに実行してもらう方法として、遺言執行者を遺言書で指定しておくといったことも忘れないでおきましょう。ただし、遺言執行者の指定には住所や氏名を記載する必要があります。
付言事項とは、被相続人が生前に残すメモのようなものです。
付言事項には秘密証書遺言のような法的拘束力がありませんが、秘密証書遺言だけでは伝えきれなかった想いを伝える手段としてとても大切なものといえます。
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