東京の「マンション」を相続する際の注意点

公開日: |更新日:

このページでは、東京でマンションを相続する際の注意点についてまとめています。東京のマンションは非常に価値が高く、その分相続税も非常に高額になってきます。事前に対策をしておくことで負担を軽減できるよう、準備しておくようにしましょう。

マンション相続で発生する税金

相続によってマンションを取得した場合、マンションの評価額によっては税金が発生します。なので、申告や手続きを経た上で納税しなければなりません。マンション相続で発生する税金には大きく「登録免許税」と「相続税」の2種類があり、それぞれに計算方法などが定められています。

登録免許税

マンションを相続したとき、必ず相続登記を行わなければなりません。その際に登録免許税がかかります。登録免許税とは、相続登記で登記内容を変更する際に発生する税金です。ただし令和6年3月31日までの期間については免税措置の対象となっています。

登録免許税の計算式は以下の通りです。

なお、当然ながら「固定資産税評価額」は相続したマンションのものです。

相続税

相続税とは、相続した遺産の価値に応じて発生する税金です。マンション相続の場合、相続したマンションを含めた「相続財産の評価額(時価評価額)」を基準として、税率や法定相続分といった数値が乗算されて相続税が確定します。

相続税の計算式は以下の通りです。

相続税はあくまでも相続財産全体にかかる税金であり、マンションの価値だけで計算することはできません。

相続税には控除を使える場合もある

相続税では相続人の全員に一定の控除額が定められています。例えば相続財産の評価額によっては相続税がゼロになることも。また、配偶者だけに認められる特別な控除もあります。

相続財産の評価額はマンションや現金、有価証券など全ての評価額を合算したものです。

基礎控除

基礎控除は原則として相続人の全員が受けられる控除です。相続財産の評価額が基礎控除額を上回る場合、相続財産の評価額から基礎控除額が差し引きされて、残った金額が課税対象額となります。

相続税の基礎控除額は以下の計算式で算出します。

配偶者控除

マンションを相続する人物が被相続人の配偶者(妻・夫)であった場合、課税対象の財産が1億6千万円に達するまでは相続税が免税されてゼロとなります。また、配偶者の相続分が法定相続分の範囲内に収まっている場合、相続財産の合計額が1億6千万円を超えても、配偶者控除が適用されて相続税は発生しません。

ただし、被相続人が死亡した時点の配偶者であった場合に限ります。つまり元妻や元夫となっていたケースでは、遺言書によって遺産を受け取る者として指名されても控除対象には認められないため注意してください。

マンション相続の際は、数億円単位の相続税がかかるケースも少なくない

相続税は「3000万円+600万円×相続人」の総額を超える相続に対して発生すると規定されています。相続額は現金だけでなく所有する全ての財産の合計で算出され、その中で大きなウエイトを占めてくるのが、不動産です。特にマンション一棟を所有している、というケースであれば、それだけで上記の金額を大幅に上回るケースがほとんどで、数億、場合によっては10億円を超える金額が動くということも稀ではないでしょう。そして、相続税の支払額は、課税される額によって割合が変わりますが、課税額が6億円を超える場合の税率は、控除額7200万円を引いた額の55パーセント、数億円になります。相続税は原則現金で納付しますが、それだけの現金を即金で用意できるという人はそれほど多くはないでしょう。そのため、マンションの相続を控えている方であれば、事前にきちんと節税対策をとっておくことが急務となります。

小規模宅地等の特例を活用する

相続税の課税対象、そして課税額を決定するにあたり、所有している不動産の価値を定める必要があります。そこで知っておきたい制度が「小規模宅地等の特例」です。この制度は、亡くなった人やその人と生活を共にしている家族の居住用の土地、そして事業用の宅地について、評価額を減額してもらえるというもの。事業用なので、賃貸用として貸し出しているマンションにもこの制度が適用されることがあります。マンション一棟を貸しているケースだけでなく、一室のみを貸し出している、というケースでも適用されます。

ただし、「小規模宅地等の特例」に関しては、相続開始前3年超に貸付事業をした宅地に限られます。相続からさかのぼって3年以内に貸し付け事業を始めた土地・マンションに関しては、他の賃貸物件と併せて「5棟10室基準」と言われる事業的規模でない限り貸付事業用宅地等から除外されるため、小規模宅地等の特例の適用を受けられません。

また、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けられる場合でも、特定居住用宅地や特定事業用宅地などに比べて多少の制限がかかりまる。減額されるの枠は50パーセントまで、適用される面積の上限も200平方メートルとなっています。そして一般の事業用や居住用の土地でも適用を受けている場合には、それらの面積の上限に達していない部分についてのみしか適用がされません。

「貸家建付地」による評価減

マンションなどを貸し出している場合、建物と土地、それぞれに評価額がつきます。その際、すでに貸し出しているマンションであれば、借家人の権利が考慮され、評価額から30パーセントの評価減があります。また、土地に関しても20パーセント前後の評価減があります。こうした数字を前もって把握しておくことで、ある程度相続税に関してのシミュレーションが立てられるはずです。

マンション相続で必要な手続き

マンションを相続する場合、必要な申請や手続きを行わなければなりません。これらを適切にやらないと、相続税などの点で不利益を被る恐れがあります。

遺言書の確認

被相続人が死亡した場合、まず遺言書の有無を確認します。家族の誰も遺言書の存在を知らずとも、実は被相続人が遺言書を遺しているといったケースもあり、慎重かつ十分に調査しなければなりません。

遺言書があれば内容を確認し、誰がどのような条件で、何の遺産を遺贈されることになっているのかを明らかにします。ただし遺言書で「全ての財産を譲る」といった文言があったとしても、遺産の全額が特定の誰かに渡ることはありません。法定相続人に遺産の一定の割合を残さなければならないと、遺留分として法律で決まっているためです。

相続人・相続遺産の確定

遺言書の有無を確認した後、相続人として名を連ねられる人物を確定します。なお、遺言書がなくても、隠し子などが存在することで相続人の人数が変わることもあり、慎重に調べることが重要です。

同時に相続財産となる遺産の総額を確定します。遺産はマンションや住宅といった土地家屋だけではありません。現金や有価証券、その他にも資産価値が認められる全てのものをピックアップして整理します。

相続遺産の確定が不十分であった場合、後に税務署から追加で税金を徴収されることもあるため、注意しなければなりません。

遺産分割協議を行う

相続人と相続財産の確定が完了すれば、遺産分割協議によって相続財産の分配方法などを話していくでしょう。また、原則として遺産分割協議は相続人全員の同意の下で進行します。しかし、相続人の意思で相続の放棄や遺産分割協議へ参加しないと選択することも可能です。

遺言書がある場合、まずは遺言書の内容を反映させた上で、改めて残った遺産について分割協議を行います。

相続税の申告・納付をする

相続人に分配される遺産の総額が確定すれば、再度相続税などの金額を算出し、納税手続きへと進みます。

税額の算出法は税法によって定められており、一定額の控除や免税措置などを受けられることもあります。そのため、自分がどのような控除や免税措置を受けられるか、しっかりとチェックすることが大切です。

また相続税の納税は、相続人による申告内容にもとづいて行われます。相続人が自身で申告して納税することが重要です。税務署が調べて相続税の請求を行うことはありません。申告を怠って納税義務を放置すると、最悪のケースでは脱税として立件される恐れもあるので、しっかり申告から納税までを行いましょう。

マンションの相続登記を行う

マンションを相続する際に、相続税を支払い、新たな所有者として他の相続人との協議も完了した後は、マンションの相続登記も忘れずに行いましょう。

なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されるため、速やかに手続きをしましょう。

マンションの相続税対策に関する注意点とは?

ここでは、マンション相続の節税対策を考える上で注意すべきポイントについて、大きく3つの項目に分けて解説しています。適切な相続税対策によってマンション相続の価値を高めるためにも、まずはそれぞれの注意点について把握しておきましょう。

早い段階でプロへ相談する

そもそもマンションなどの不動産に関して節税対策や相続税対策を行う場合、素人が安易な考えで処理することは危険です。税法や税制は時期によって改正されている上、不動産に関する特定の税制度であっても場合によって適用できるケースとそうでないケースが存在します。

合法かつ適切な対策や処理を行えていない場合、十分な節税効果を得られないばかりか、最悪な状況では脱税や追徴課税といった問題へ発展する恐れさえあるでしょう。また、そもそもマンションなどの物件を評価する上でも専門家によるサポートが不可欠です。

一方、相続税には申告期限が定められており、悠長にしていては正しく申告期限を守れずに十分な相続税対策を行えないといったリスクもあります。

そのため、マンションを相続する際は、必ず早い段階で専門家へ相談して今後のプランを一緒に考えてもらいましょう

相続直前に購入したマンションは税務署から指摘される可能性あり

例えば自宅としてマンションを所有している場合、相続税の課税対象額の計算時に評価額を活用できたり、相続人によっては税控除などを活用したりと、相続税を安く抑えることも可能です。しかし、だからこそ相続が発生した日からあまりにも近いタイミングで被相続人がマンションなどの不動産を購入し、相続人へ相続した場合、税務署から不正な税逃れとして指摘される恐れがあります。

税務署から指摘された場合、相続財産としてのマンションの価値は評価額でなく「時価」になってしまうことがポイントです。つまり、基本的に購入時の価格で相続税が算出されるため、現金を相続した場合と税額が変わりません。

相続税の納付期限は10ヶ月以内

前述した通り、相続税には申告及び納付に関して期限が定められており、相続開始もしくは相続が発生したとしった日から10ヶ月以内に申告して相続税を納付しなければなりません

なお、申告期限や納付期限を超過した場合は延滞課税が加算されてしまうため、放置すればどんどんと相続税の額が上がってしまうこともデメリットです。

マンション相続に関して相続税を支払えない場合はどうする?

マンションの評価額があまりにも大きく、遺産総額が基礎控除の範囲を超過してしまったり、そこで発生した相続税を現金で支払えなかったりした場合、直ちに必要な対策を講じなければなりません。

ここではマンションを相続した際に、相続税を支払えない場合の対策を解説します。

相続税を分割で支払う(延納)

延納とは、一括で相続税を支払うのでなく、納税者が税務署へ担保を提示した上で相続税を分割払い(年賦)する制度です。

原則として確定されて請求された相続税は免除されることがないため、支払いを先延ばしにして最終的に逃れるということはできません。しかし直ちに相続税を支払えない場合、必要な条件を満たせば分割払いへ応じてくれる可能性があります。

なお、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合は担保が不要になるという点も重要です。

担保としては国債や地方債、土地、税務署長が認める保証人の保証など複数のものがあり得ます。

相続税を取得した財産で納める物納

原則として、相続税の納付は現金によって行われます。しかし現金による納付が困難な場合など、税務署から適正な理由として認められた際には、相続財産の一部または全部を現金の代わりに納付して相続税の支払いに代える「物納」が可能です。

ただし、そもそも物納の対象として認められる財産には条件が定められており、必ずしも全ての相続財産で物納できるとは限らないことに注意してください。

物納できる財産とは、不動産や国債証券、上場株式などがあります。

なお、物納によって相続税の全てをまかなえない場合、残額は改めて現金で支払ったり、延納したりする必要があります。

マンションを売却(現金化)する

例えばマンションの評価額が高すぎて相続財産が大きくなり、結果的に相続税が発生してしまっている場合、マンションを売却して現金化し、そこで得たお金で相続税を支払うといった選択肢があるでしょう。

マンションを自宅として利用している場合、新たに自宅用の物件を探す必要がありますが、事業用マンションなどであれば売却後はランニングコストが不要になるため、トータルで見るとメリットを増大できる可能性もあります。

相続に関しては事前に準備を

繰り返しになりますが、マンションなどの大規模な不動産を相続する場合には、非常に大きなお金が動くことになります。そこで円滑に物事を進めるためには、事前の準備が非常に大切となります。前もって多額の現金を用意しておくのもその方法の一つですし、上記に記したような評価額減の手法を知り、適切なタイミングで相続される予定のある不動産の価値を正しく把握しておくのも、準備を行う上で大切なポイントとなります。何より、親族間での相続に関するトラブルを避けるためにも、お金のことは前もってクリアにしておき、相続人間で事前に話し合いをしておくようにするのがいいでしょう。

不動産相続トラブル【兄弟姉妹編】

親と同居していた家の売却を兄弟から要求された

遺言書がないのに、勝手に不動産の名義を兄の名前で登記された

兄弟姉妹編の一覧を見る

不動産相続トラブル【夫婦編】

子供がいない場合、配偶者は全て相続できる?

内縁関係で同居していた家は遺贈してもらえる?

夫婦間の不動産の生前贈与による相続税対策はした方が良い?

夫婦編の一覧を見る

不動産相続トラブル【親子編】

両親と絶縁状態。亡くなった時に相続できる?

赤の他人に全財産を譲ると遺言書に書いてある。取り戻したい!

親子編の一覧を見る

   

このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
メール・電話での相談やLINEからの予約にも対応しているので、気になる事があれば気軽に質問してみましょう。

spバナー

電話で相談してみる