【特集】不動産相続における遺言書作成のススメ

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このページでは、相続においてトラブルになりやすい不動産について、遺族の方々の争いを回避する方法を解説します。

不動産相続のトラブル回避には、遺言書の作成を

遺産相続を原因として、親子や兄弟間で骨肉の争いとなるという事態は、なにも小説やドラマの中だけの話ではありません。実際に十分起こり得ることなのです。そうなってしまう一番の原因は、不動産に他なりません。

そもそも、遺産というものは、故人との親等数や間柄によって、相続人ごとに、法律上相続分が決まっています。現金など、分配しやすいものであれば、それに従い分ければよいのですが、不動産はなかなかそうはできません。

遺言書を予め作成し、不動産の扱いをどうしておくか指定しておくことで、相続人間の争いの芽を摘むことができます。

作成しておくべきは、ずばり「公正証書遺言」

遺言書にはいくつか種類がありますが、そのうち、不動産相続のトラブル回避という観点からすると、作成しておくべきものは「公正証書遺言」です(民法第969条)。

公証役場にて(病気などで出向くのが難しい場合は、出張してもらうことも可)、公証人(公権力を根拠に証明・認証する人)の前で遺言者が遺言の内容を口授し、公証人がそれに基づいて、正確に遺言者の真意を文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。

公正証書遺言の場合、遺言者と公証人の他に、2人以上の証人が立ち会うことや、実印と印鑑証明書などを揃える必要があります。

遺言者と証人は、公証人の筆記した公正証書遺言の内容が正確であることを承認後に、署名・押印をします。

公正証書遺言の原本は、公証役場にて保管されるため、紛失・偽造の心配がありません。遺言者には原本と同じ効力を持つ正本が渡され、紛失したとしても写しの再交付が受けられます。

公正証書遺言については、家庭裁判所の検認手続が不要なため、相続開始後、スムーズに遺言内容の実現が可能です。

作成の際に、お金がかかるというデメリットはありますが、その内容の真正性が公に認められているという点で、揉め事に一番なりにくいと言えます。なお、その他の遺言書には次のようなものがあります。

「自筆証書遺言」は一番簡単にできるけど…

その名の通り、遺言者が自筆(パソコンやワープロは不可)で作成し、自身の印鑑(実印が望ましいが、実印でなくても可)を押印し、金庫や仏壇などに保管しておくというやり方です。一番簡単にできる反面、方式の不備により無効になる場合や、記載内容の曖昧さや作成の日付が不明確といったことが起こりやすく、遺族間での火種となる場合もありえます。

「秘密証書遺言」も…

公正証書遺言と自筆証書遺言の中間とも言える存在の遺言です。作成は自分ですべて行い(ワープロやパソコンでも可)、書類に署名、押印の上、封筒に入れて封をし、封紙にも押印。その上で、公証人に提示して所定の処理をしてもらうやり方です。遺言書が見つからないといった事態は避けられますが、方式の不備等があれば、自筆証書遺言と同様に無効となる可能性はあります

遺言書作成の場合は、遺留分も考慮

相続には「遺留分(いりゅうぶん)」という、相続人に対して保障されている遺産があります。たとえ遺言書で「全財産を親族ではなく第三者に譲渡する」、あるいは「3人兄弟のうち全財産を長男に譲る」と書いてあったとしても、一定の相続人には、遺産総額に対する遺留分が認められます。遺言書作成の際には、こうした点も考慮しなければなりません。

やはり遺言書の作成においても、専門家によるサポートやアドバイスを受けた上で行うのが望ましいと言えるでしょう。

親に不動産相続でもめない遺言書を書いてもらうコツ

いざ自分の親に遺言書を書いてもらおうというとき、親がなかなか書くことに応じてくれないというケースもあります。「明日死ぬわけではないから、今すぐでなくてもいいだろう」という思いから先送りにする、または遺言書の作成や手続きが面倒だから、という理由が多いようです。

では、どうすれば応じてくれるのでしょうか?いくつかのポイントやコツをご紹介します。

相続トラブルの危険性を説明する

まずは、親が亡くなった際に起こりうる相続トラブルについて詳しく説明することが大切です。遺言書がない場合、子ども間で争いが起こりかねない、最悪は絶縁の可能性もあり得るという事実をきちんと説明しましょう。相続トラブルについての本や、インターネットなどで集めた資料を参照してもらえば、理解の助けになるかもしれません。

身近な人の死をきっかけに、自分の気持ちを伝える

遺言書を書いてもらいたい旨を親に伝えるタイミングとして、身内以外の近しい人が亡くなった時がベスト、という考え方があります。「人の死を利用するのは…」とためらう方もいると思いますが、身近な人の死というのは「自分もいつか死んでしまう」という再認識をする出来事です。そういったタイミングであれば、親も遺言書の重要さに気付いてくれるかもしれません。

ストレートに伝えず、本人の気持ちを大事にする

なんの理由もなく、いきなり「遺言書を書いてよ!」とストレートに切り出してしまうと、「早く死んでほしいのか」と思い、親の気持ちは硬く凍ってしまうかもしれません。遺言書の作成で大事なのは、本人の気持ちです。本人が「家族のために遺言書を作成しよう」という気持ちになるまで、ゆっくり待つのも1つの方法かもしれません。

親の気持ちがある程度固まってきたタイミングで、具体的に作成の仕方などを丁寧に説明してあげるといい後押しになるでしょう。

作成の手続きを手伝ってあげる

遺言書の作成は容易なことではありません。手続きなどの面倒なこともありますので、すべてを親にやらせるという姿勢はやめて、まずは「手伝ってあげるよ」という一言を親にかけてあげましょう。そうすれば、親も面倒に感じることなく、快く遺言書の作成に踏み切ってくれるかもしれませんよ。

何から始めたらいいかわからない場合は弁護士に相談を!

遺言書を書く気持ちはあるけれど、実際に作成に踏み切れない場合は、親と一緒に弁護士に相談すると良いかもしれません。

分からないことがあれば、専門家の元へ行くのが一番です。まずは一度、気軽に法律事務所へ相談の予約を入れてみましょう。子どもから直接遺言書の作成依頼を受けるよりも、弁護士から説明を受けた方が気持ちも動きやすいのではないでしょうか。

弁護士から「遺言書とはどのような物なのか」という基本的な説明や「作成した場合のメリット」などのわかりやすい説明を受ければ、親も納得してくれるはずです。「自分では書ける気がしない…」という状態に陥った場合でも、法律事務所であればそのまま弁護士に遺言書作成を依頼することができますよ。

遺言書作成を弁護士に依賴するメリットや費用相場

では、実際に遺言書の作成を弁護士に依頼する際のメリットや、費用相場などをご紹介します。

弁護士に遺言書の作成を依頼するメリット

必要書類を全て集めてもらえる

公正証書遺言の作成には「戸籍謄本」、「不動産登記簿謄本」、「固定資産税評価証明書」など、その他にも数多くの書類が必要となってきます。この全てを自分で集めるのはかなりの労力を必要としますが、弁護士に依頼すれば実費をベースに代行取得してもらうことが可能です。

証人を集める必要がない

前述の通り、公正証書遺言の作成には、遺言者と公証人の他に2人以上の証人に公証役場で立ち会ってもらう必要があります。未成年者や、将来相続人となる予定の人、また配偶者や直系血族などは証人になれませんので、証人欠格者以外で証人になってくれる方を集めるのは容易ではありません。

ですが、弁護士に作成を依頼していれば証人も確保してもらえる可能性があります。有料になることもありますので、まずは担当弁護士に相談してみましょう。

絶対に有効となる遺言書を作成できる

遺言書の全てを自分で作成する「自筆証書遺言」は簡単に作成に取り組める反面、記載内容の不備や不明確さなどが目立ち、最悪の場合は遺言書の全てが無効になってしまう可能性があることは、前項目でもお伝えしました。しかし、弁護士に依頼をすればそういったリスクを極限まで減らすことができます。

弁護士は遺言者の意思を明確にし、内容に不備などがないかをしっかり確認して、確実に有効となる遺言書を作成してくれます。そういった点にも、弁護士に遺言書を作成してもらうメリットがあるといえます。

気になる遺言書作成の費用相場は10〜20万円程度?

弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、「遺言作成手数料」というものがかかります。こちらの費用相場は10〜20万円ほどとなっていますが、遺産額や遺言の内容によって手数料が大きく変わってきます。また、作成のサポートを依頼する場合の費用は10万円程度、自筆証書遺言を弁護士にチェックしてもらう場合は都度3万円ほどかかる場合もあります。

遺言書作成のポイント:配偶者と子、それぞれに財産を譲りたい場合

配偶者と子ども、それぞれに自分の財産を譲りたい場合、相続人の遺留分を侵害しなければ比較的簡単に遺言書を作成できます。 たとえば、 法定相続人が配偶者と子である場合、それぞれの遺留分は配偶者1/4、子1/4。子が複数いる場合は1/4をさらに兄弟姉妹で等しく分けることになります。この遺留分を侵害しないように配慮するというポイントさえ押さえておけば、争いが起こる可能性はかなり減らせるでしょう。

遺言書作成のポイント:子どもの相続分に差をつけたい場合

子どもの相続分に差をつける場合は、兄弟間などで争いが起こりやすくなります。遺言書を作成する場合は十分に注意しましょう。ポイントは、なるべく子どもの遺留分を侵害しないように記述すること。また、「老後の世話をしてくれたから」など、相続分に差を出す理由を明記することも重要です。

なお、財産を与えたくない子どもがいる場合は相続人の廃除の手続きを行なう必要がありますが、相続人の廃除には相当の理由が必要となりますので、廃除理由が存在することの証拠を残しておきましょう。

家族との相談はやっぱり大切

わからないことだらけの「遺言書作成」。誰の力も借りずに1人で全てを作成するのは少し難しいかもしれません。まずは家族や身内とじっくり相談をして、専門家の力を借りたい場合は法律事務所に足を運んでみましょう。

不動産相続で遺言が不平等と言われ起きたトラブル

遺言が明らかになったものの、遺族にとって納得できない内容であったためにトラブルに発展するケースがあります。遺族のだれかの遺留分を侵害する内容のものや、遺族にとってなじみのない第三者に遺産を譲るというものなどです。不平等と感じる不動産相続が行なわれる際には、遺留分減殺請求をすることができます。その調停や訴訟では感情が絡んで長期化することが多く、できるだけ早い解決のためには弁護士に依頼することをおすすめします。

不動産相続で遺言が偽物と言われ起きたトラブル

たとえ遺言があっても、形式や内容に不備がある場合「偽物だ」と言われて不動産相続トラブルになってしまいます。とくに気をつけたいのが、簡単に改ざん・偽造できる自筆証書遺言を残しているケースです。余計な不動産相続トラブルを防ぐためには、最低限遺言に関する知識も求められます。遺言が偽物だと言われてしまう理由や事例を知って、万が一不動産相続トラブルが起きてもすぐに解決できるように備えましょう。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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