不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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本ページでは、不動産で相続人が行方不明だった場合、どのような手続きをするのかについて解説しています。
不動産を相続する際、連絡が取れないなど、行方が分からない相続人がいることで相続手続きが滞るケースがあります。そのような場合にどうすればいいかという知識をまとめていますので、参考にしてみてください。
まず、遺産分割協議による相続の手続きについて説明をしていきます。
遺産分割協議とは、相続財産を相続する人同士でどのように分配するかを話し合う協議のことです。遺産相続が発声する際、被相続人の遺言書があり、その法的効力が認められた場合は、原則として遺言書通りに遺産分割が行われます。その際は、相続人の同意は必要ありません。
ただ、相続される財産の中で不動産が占める割合は多く、その場合は遺言書があったとしても財産分与の際に遺産分割協議が行われることが多くなります。
一方で民法では、遺言書がなかったとしても各相続人の遺産割合としての法定相続分を定めています。財産が現金のみの場合も、原則として法定相続分に近い内容で遺産分割協議書を作成するが必要があります。
遺産分割協議を行う際には、まずは相続財産の調査、そして法定相続人を確定する必要があります。
法定相続人とは、被相続人の財産を相続する権利を持つ人で、この権利は法律で定められています。被相続人の配偶者の有無や子どもの人数などによって、相続人の範囲や配分も決まります。
法定相続人は、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍)を調査することで定められます。最終本籍地から一つずつさかのぼっていき、出生まで本籍地のあった戸籍をそれぞれの市町村に申請します。子どもの数や名前、養子の有無などを調べ、子どもがいなかった場合には父母や祖父母、兄弟姉妹の戸籍を調べていきます。
その中で新たな相続人が判明した場合は、戸籍などから現在の住所を把握することで、相手に連絡をとることができます。
遺産相続の際、相続人の範囲は民法で定められています。そして相続人は、被相続人の残した財産を相続する権利を有しています。
たとえ連絡がつかない、行方が分からないという事情があったとしても、それ以外の人だけで勝手に遺産の分配について話し合う「遺産分割協議」を進めていくことはできません。
そのため、相続を行う際には行方不明者の行方を調査し、連絡を取る必要があります。
相続人の連絡先が分からなかったとしても、「戸籍の附票」というものを使えば、その時点での住所を調べられます。
戸籍の附票は本籍地の役所で戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、本籍地にいる間の最初から最後までの住所変更の履歴が記載されています。すなわち、戸籍の附票を取得することで、現時点での住所が分かるのです。
戸籍の附票は、取得したい人の本籍地の役所へ請求することによって取得できます。
戸籍の附票を請求できるのは一部の範囲内の親族に限られています。ただし、弁護士・司法書士・行政書士のような国家資格を有しているのであれば、国家資格者による職権請求を使って取得することもできます。
住所が分かれば、実際に訪問する、郵便物で通達をするなどしてコンタクトをとり、遺産分割協議に参加してもらうように促していけます。
ただ、場合によっては役所に届けられている住所には実際に住んでおらず、連絡が取れない、ということもあり得ます。
そのようなときには、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の申し立てを行うことになります。
「不在者財産管理人」とは、行方不明者に代わって財産の管理をする、代理人となる存在です。家庭裁判所へ提出するための財産目録の作成などを担当してもらうことになります。
不在者財産管理人が担うのは、基本的には不在者の財産を管理のみとなりますが、家庭裁判所の許可を得ることで遺産分割協議を行うことも可能となります。
不在者財産管理人は、行方不明者が住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立書」を提出して申請します。その際は、不在者や申立人の戸籍謄本、そして不在の事実を証明する資料などをそろえる必要があります。
それらを家庭裁判所が確認し、相続人との利害関係を考慮した上で、不在者財産管理人を選出します。
多くのケースでは、行方不明人と利害関係がない人物か、弁護士や司法書士などが候補者になります。親族でもなることは可能なのですが、遺産分割協議を行う際には利益相反行為となることもありますので、候補者には遺産分割に関係のない人物に担当してもらうと、後のトラブルを回避することにつながります。
遺産分割の際に行方不明となっている人物には、財産を残す必要はないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、不在者に相続されるべき遺産を奪ってしまうような遺産分割協議にしてしまうと、家庭裁判所から不在者財産管理人へ権限外行為の許可がもらえません。
つまり遺産分割協議の際には、不在者にも法定相続分以上の財産を残すような遺産分割協議の内容にしなければいけないということです。
もしも遺産相続を行う数年前から相続人の行方が分からなくなっていた場合、経過していた年数に応じて対応や手続きが変わってきます。
もし相続人が行方不明になって7年以内ということであれば、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立て、不在者の財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことになります。
また、「帰来時弁済(きらいじべんさい)」で遺産分割を行う方法もあります。
「帰来時弁済」は、いったんは不在者に法定相続分を下回る相続分しか相続させない代わりに他の相続人が多めに財産を相続した上で、不在者が戻ってきた場合には多めに相続した相続人から不在者に対して代償金を支払うという内容になっています。
ただし、この手法を用いるには家庭裁判所の許可を得る必要があります。
戸籍を調べた際、「不現住」の記載があった場合には、相続人は国内にいない可能性があります。
世の中のグローバル化が進むにあたり、相続人の中には海外に居住している人がいても珍しくありません。転勤で海外に住んでいるという相続人に対しても、日本の国内法である民法が適用されるため、相続人全員が国内にいる場合の遺産分割と同様、相続人全員が遺産分割協議に参加しなければなりません。
海外にいて遺産分割協議に参加できない人がいる中で、その人を除いた遺産分割協議を行っても、その内容は無効となります。
なお、海外に住んでいる相続人の遺産分割における必要書類には、印鑑証明書に代わる『サイン証明書』、住民票に代わる『在留証明書』、戸籍に代わる『相続証明書』といった書類が必要となります。
海外に住んでいる相続人がいる遺産分割は特殊なケースとなり、法務局や税務署、銀行のような金融機関であっても対応経験が少なく、対応方法もさまざまになります。この場合は専門的な知識を持つ事務所に相談するようにするといいでしょう。
海外にいる相続人に関しては連絡を取ることが困難なことも多く、中には何年も音信不通で居場所すら分からない、というケースも想定されます。
遺産相続は法定相続人に認められた権利であり、相続人の居場所にかかわらず、遺産分割協議による相続は行われなければなりません。そして遺産分割協議の成立には相続人全員の同意が必要となるため、海外の行方不明者がいた場合でも、その人を除いた遺産分割協議は進められないのです。
遺産分割協議は原則として、相続税の申告期限である「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月」以内に完了させるのが目安となります。したがって、海外に行方不明者がいる場合には、速やかに居場所をつきとめ、交渉を行わないといけません。
しかし、これはかなり困難な問題だと言えます。海外に行ったまま連絡の取れない相続人がいる場合には不在者財産管理人を立てる必要があるのですが、不在者財産管理人は原則として行方不明の相続人の相続分財産を管理する権限しか持たないため、遺産分割協議に代理参加してもらう場合には「不在者財産管理人の権限外行為許可」を別途申し立てる必要があります。
海外で行方不明になっている相続人がいる場合には、煩雑な手続きを速やかに行っていく必要があります。そのため、できるだけ早い段階で渉外相続に強い専門家に相談し、速やかに現実的な行動をとることが大切となってきます。
もしも行方不明者の消息が不明、さらには生死の確認もできないという場合には、失踪宣告の申立てを行います。
失踪宣告とは、行方不明者となった時点から7年間が経過していた場合、あるいは災害や遭難などで行方不明となり、1年が経過しても生死が確認できない場合に、法律上は死亡したものとみなされるという制度です。
なお、申請は行方不明者の住所地を管轄する家庭裁判所で行い、申立てが行われると家庭裁判所は「不在者(相続人)捜索の公告」を官報などに掲載。認められるまでには、1年~1年半程の期間を有します。
なお、失踪宣告が認められた後に行方不明者が現れ、失踪宣告の取り消しが認められれば、その人の相続関係も含めた法律上の権利は復活します。
失踪者以外の相続人で遺産分割をしていた場合、手元に残っている財産は返却する必要が生じます。
行方不明の相続人を探す際には、弁護士に相談するのが現実的な方法となります。
弁護士は行方不明の相続人の戸籍附票などを取り寄せる職権を持ち、そうしたノウハウも有しているので、自身で行うよりも速やかに手続きを行っていけます。また、相続に関するトラブルについても、有効な解決策を提示してくれるでしょう。
相続で困ったことがあったときには、すぐに相談してみることをおすすめします。
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