押さえておきたい!不動産相続の流れ

本ページでは、不動産相続の手続きの進め方や、期限が定められている事柄への注意すべきポイントなどを取りまとめてご紹介していきます。

知っておきたい、不動産相続の手続きや期限

親御さんやご兄弟、あるいはお子さん…身内の方が亡くなるというのは大きな精神的ダメージを受けるものですが、いつまでも悲しんでばかりはいられません。

とりわけ不動産相続に関しては、想像しているよりもはるかに膨大かつ煩雑な手続きを行わなくてはなりません。

ここでは時系列に沿って、やらなければならないことを確認していきましょう。

1.相続人・相続財産の確認

死亡届の提出

相続が発生した場合、故人の本籍地または届出人の住民票が登録されている土地の市区町村役場に死亡届を提出します。死亡届の提出期限は被相続人が亡くなってから7日間以内と法律で決められています。期限に遅れないように、早めに提出しましょう。

相続の開始

まず被相続人が死去した場合、自動引落されている公共料金、税金、ローン会社などへ直ちに連絡し、健康保険や年金に関する手続きを行います。また銀行口座は、名義人死去を銀行が知った時点で凍結され預金や出金ができなくなります。銀行口座の解約には、相続人全員の自筆署名や実印の押印などによる手続きが必要になります。なお、これらの手続を行うと、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがありますので、ご注意ください。

遺言書確認

公正証書遺言ならば公証役場にて確認できるので問題はありませんし、家庭裁判所の検認も不要です。他方、自筆証書遺言などの場合は、遺言書がどこにあるか、金庫、机、額縁の裏などしっかりと探す必要があります。加えて、自筆証書遺言が封印されている場合には家庭裁判所の検認を受けなければならず、独断で開封することは過料の対象になります。

遺言書の有無を確認する方法には以下の3つがあります。

1989年以降に公証役場で作成された遺言(公正証書遺言・秘密証書遺言)は、コンピューターにて登録・管理されています。このため全国の公証役場から検索でき、公証人を通じての照会が可能です。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は開封する前に、家庭裁判所にて検認の手続きをする必要があります。検認の申立を行えるのは遺言の保管者、または遺言を発見した相続人に限ります。検認手続の前に遺言を開封した場合には、5万円以下の過料を課せられるので注意が必要です。また封印のある遺言書は、家庭裁判所にて相続人の立ち会いのもと開封しなければなりません。

遺産分割後に遺言書が見つかった場合には、遺産分割協議の内容を優先させることができます。遺言書の内容は可能な限り尊重されるため、先に行った遺産分割協議を無効とする可能性もあります。しかし、相続人全員が遺言書ではなく遺産分割協議の内容を優先させたいと考える場合には、無効とならず協議内容の優先が可能です。

相続人の調査・確定

法定相続人が誰と誰になるのか、忘れている相続人はいないかなどを、戸籍の確認まで行った上で調査・確定しなければなりません。当事者だけでは難しい場合は、弁護士や司法書士などの助けを借りましょう。

また、法定相続人となる方の中で、未成年者や重度の認知症患者などがいる場合は、相続に関する手続きにあたり、家庭裁判所にて後見人等の選任手続きが必要です。

相続財産・債務の調査

死去された方(被相続人)の名義だった不動産物件の評価額や、現金などの財産、債務の有無とその額を調査します。被相続人により保管されていた書類や郵便物の確認や、銀行やクレジットカードの個人信用情報の開示請求で相続財産および債務の金額を確定します。

被相続人の借金の調査方法には、「郵便物などによる借金調査」「個人信用情報の開示請求」の2パターンがあります。

郵便物から借金の有無を知るには、金銭消費賃借契約書などの契約書を探す必要があります。このほかにも債権者から送られてきた支払いの催告状や督促状も手がかりになるでしょう。相続口座に定期的な引き落としがあれば、借金の支払いをしていたと推測も可能です。

また銀行や信用金庫、クレジットカード会社から借金をしている場合は、信用情報機関に被相続人の借金に関する記録が管理されています。相続人であれば情報の開示を請求できるので、確認しておきましょう。

信用情報に開示請求をするには、信用情報機関に問い合わせる必要があります。株式会社日本信用情報機構と株式会社シー・アイ・シーには、インターネット・郵送・窓口より請求手続きが可能です。全国銀行個人信用情報センターは郵送のみで開示請求を受け付けています。どの信用情報機関で手続きを行う場合でも、手数料として1,000円程度がかかります。

相続放棄・限定承認

遺産に債務が多い場合、相続放棄や限定承認で債務を相続しないという対応も可能です。ただし、相続放棄と限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に手続をしなければなりません。この期間を熟慮期間と言いますが、短期間では相続財産の把握が困難な場合等、特別な事情があれば、3ヶ月以内に対応できない場合でも相続放棄又は限定承認が認められる場合があります。

所得税・消費税の申告(準確定申告)・納税

被相続人が個人事業主であった場合、相続開始から4ヶ月以内に、被相続人が生前に得ていた所得に対する所得税ならびに消費税の納税作業を行います。ただ、被相続人が一般的なサラリーマンであれば、勤務先による年末調整により、準確定申告は不要となる場合が多いといえます。なお、準確定申告を行う場合にも、相続人全員の署名等が必要となります。慌てないよう時間に余裕を持って対応するとよいでしょう。

相続が発生したら4カ月以内の準確定申告が必要です。準確定申告では被相続人の生前における所得について確定申告を行います。相続税の確定申告の期限が10カ月以内であるのに対して、準確定申告の期限は4カ月以内なので注意が必要です。

相続発生後に準確定申告を行うのは一般的な流れですが、準確定申告が必要な方と必要でない方がいます。準確定申告が必要なケースは以下の通りです。

準確定申告が不要な方は以下の通りです。

準確定申告が不要な方でも、給与所得者か年金所得者で源泉徴収されており以下の条件を満たすのであれば、節税効果や所得税の還付を受けられる可能性があります。

相続が発生したら、準確定申告の要不要を早めに確認しておくのが良いでしょう。

2.遺産の分割方法を決める

遺言書の内容や財産・債務の調査、法定相続割合などを踏まえ、遺産分割協議にのぞみます。その際は単純な遺産の総額だけでなく、相続税や所得税、消費税なども考慮すべきです。

相続人全員が合意したら、その内容を遺産分割協議書にまとめて全員で署名・実印による捺印を行います。

遺産分割協議書の作成

遺言がある場合には遺言書に従って遺産分割を行えますが、遺言書がない場合には遺産分割協議を行わなければなりません。特に不動産のような分割しにくい遺産は、相続人だけで話し合いをしてもまとまらず、分割協議が難航します。もめごとに発展する前に相続に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。

遺産分割の方法には現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つがあります。それぞれの特徴を押さえて相続人にとって最善の方法で分割することが大切です。

現物分割では遺産を複数に分割して、現物で相続します。現金や土地を相続する場合には分割しやすく有効な方法です。狭い土地や建物を相続する場合には、他の分割方法を検討するのが良いでしょう。

代償分割では相続人のうち1人または数人が土地や建物などの不動産をそのまま相続し、他の相続人に対して不足分を現金で補てんします。狭い土地や現物分割しにくい建物を相続した場合に有効な方法です。

換価分割は相続した遺産を売却して得た代金を相続人の数で分割する方法です。これにより建物などの分割しにくい不動産でも簡単に分割できます。ただし不動産の買い手が存在し、相続人全員が納得する額で売却することが前提。相続した不動産の利用予定がない場合に適しています。

共有では相続した遺産を複数の相続人の共有名義で管理します。相続人同士で話し合いができているのであれば、共有での相続ができます。のちに不動産を売却する話が出た場合に、共同相続人間で意見の相違が出るともめごとに発展するので注意が必要です。

遺産分割には4つの方法がありますが、遺産の内容や相続人によって適した分割方法は異なります。スムーズに遺産分割を行うためにも、専門家を交えて話し合うのが良いでしょう。

遺留分減殺請求

被相続人の遺言書にて相続人以外の第三者や特定の相続人のみに遺産を相続させると書かれている場合、その他の相続人は、基本的に遺産を受け取れなくなります。ただ、このような場合でも、一定の法定相続人には、遺留分として一定の相続財産の取得が保障されます。この保障を受ける権利者の取り分は「遺留分」といい、遺留分権利者は、受遺者等に対して、遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈等の減殺を請求すること(遺留分減殺請求といいます)ができます。

遺留分減殺請求権は相続の開始と、減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間行使しないとき、もしくは相続の開始の時から10年を経過する前に請求しなければいけません。期間を過ぎると請求できなくなるのでご注意ください。

不動産の名義変更(相続登記)の必要書類

遺産分割協議の内容に応じて、不動産の所定の登記申請書に加え、各種の必要書類も添付する必要があります。遺産分割協議を経て相続登記をする場合は、遺産分割協議書も必要となり、相続人全員が実印で捺印して相続人全員分の印鑑証明書も添付します。

その他にも、不動産を相続する相続人の住民票や固定資産評価証明書なども必要になります。ご自分で行うことも可能ですが、かなりの手間暇がかかりますので、弁護士や司法書士のサポートを受けることが賢明です。

⑩相続税申告・納税

基本的には被相続人の死去を知った日から10ヶ月以内に行わなければなりません。手続きは、相続不動産や財産の範囲、評価額などが分かる資料を揃え、税務調査を受けた上で、相続税の申告、納税を行います。

なお、相続税を一度で払えないという場合には、数年にわけて納税する「延納」や、不動産等の物で納税する「物納」の申請も行うことができます。

以上の通り、不動産相続には、多くの手続き伴います。すべてを当事者だけで行うことも決して不可能ではありませんが、専門家の助けを借りた方がスムーズに行えるはずです。信頼できる弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

相続税の軽減措置の適用

相続税は相続人や相続するものによって軽減措置を受けることができます。例えば相続人が被相続人の配偶者だった場合、配偶者が取得する遺産の課税価格が法定相続分もしくは1億6,000万円までのいずれか多い額までは配偶者には相続税がかからない「配偶者に対する相続税額の軽減」があります。

その他にも被相続人から宅地を相続した場合、特例として軽減措置を受けられる場合があります。事業の継続や相続した住居に住み続けるといった一定の条件を満たした場合、330㎡までの面積に限り相続税の課税価格に算入される金額について最大80%の減額ができる場合がありますので覚えておきましょう。

3.相続した不動産の名義変更

相続した不動産の名義変更は、遺産分割協議のあとに行います。建物や土地を相続する場合、被相続人から相続人への所有権移転登記が必要です。登記を行うには複数の機関から必要な書類を取り寄せなければなりません。時間のない方や自分で登記を行う自信のない方は司法書士などの専門家に依頼しましょう。

所有権移転登記を行うには以下4つの書類を用意してください。

遺産を相続するにあたり遺産分割協議を行った場合には、上記の書類以外に以下の2つが必要です。

所有権移転登記に必要な書類は、法務局や市区町村役場など複数の機関から取り寄せる必要があります。直前に慌てる必要がないように、早めに用意しておきましょう。

所有権移転登記に必要な書類がそろったら、法務局で登記の申請を行います。全国どこの法務局でも申請できるわけではなく、相続する不動産の所在地を管轄する法務局での申請が必要です。登記の申請書は自分でも作成できますが、難しいようなら専門家に依頼するのが安心です。

4.相続税の申告・納付

相続税の申告・納付を行うには以下の手順が必要です。

相続税は「遺産総額-基礎控除額=課税価格」の式で計算され課税価格が決められます。基礎控除額の計算は「基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。

例えば法定相続人の数が5人の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×5人)」により6,000万円。遺産総額が1億円とすると、「1億円-6,000万円」で課税価格は4,000万円と計算できます。

相続税の申告に必要な書類は以下の通りです。

相続税の申告期限を過ぎると相続税に加えて、加算税や延滞税がかかる可能性があります。必要書類はできるだけ早めにそろえておきましょう。

相続税の申告に必要な書類をそろえたら、申告書の作成を行います。確定申告を行ったことがある方なら自分で申告書を作成できます。しかし、慣れていない方が申告書を作成する場合には、ミスや記入漏れがあるかもしれません。申告期限を過ぎると加算税や延滞税も発生するので、心配なら税理士に相談してください。また自分で作成する場合は時間に余裕を持ち、わからないところは税務署に相談しましょう。

申告書が完成したら、用意した必要書類を添付して所在地の税務署にて申告を行います。相続税の納付は税務署だけでなく、金融機関や郵便局の窓口でも可能です。納付期限までに間に合わない場合は、税務署に相談することで延納に対応してもらえます。相続税を滞納しないためにも、問題があればすぐに税務署に相談してください。

期限のある手続きだけを抜き出すと

相続放棄、限定承認(熟慮期間3ヶ月)

熟慮期間内に相続放棄または限定承認をしなかった場合、被相続人の債務を相続することになります。そうなってしまうと、債務を相続したものとして認識され支払請求を受けることになります。もし債務を支払わずに放っておくと、裁判を起こされ、判決により強制執行がなされる可能性もあります。そうなると給与や預貯金の差し押さえが行われて生活ができなくなる可能性もあるので、被相続人が亡くなった場合は債務がないかを必ず確認しましょう。また、相続人の事情によって相続放棄または限定承認の熟慮期間の伸長を請求し、家庭裁判所において伸長することもできます。

準確定申告(相続開始後4ヶ月)

準確定申告を期限内に行なわずに滞納してしまうと、税務署から差し押さえ予告通知が届きます。その後に準確定申告をした場合、期限内に申告しなかった時に発生する無申告加算税や、税金を決められた期限内に納付しなかったとして延滞税が発生。高い税率で痛い出費を支払うことになるかもしれません。準確定申告は後回しにしたりせず、期限内に必ず申告するようにしましょう。準確定申告には各相続人の名前や住所などを記した書類が必要となるので、申告の際は忘れずに提出してください。

遺留分減殺請求(相続が開始し、遺留分を侵害する遺贈等があったことを知ってから1年間)

被相続人の遺言が特定の誰かに全ての遺産を贈与するといった内容だった場合、期間内に遺留分減殺請求をしておかないと本来受け取れる筈だった一定の遺産すら受け取ることができなくなります。相続財産には土地や建物が含まれていることもあるので、相続人が住んでいる家が被相続人名義であって、その家が第三者に遺贈されると、受遺者から追い出されてしまう可能性も否定できません。遺留分減殺請求は弁護士に依頼すれば、弁護士から対応は可能ですので、自分で対応できない場合は弁護士に相談してみましょう。

相続税の申告、納税(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月)

相続税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告及び納税をしなければいけません。もし納付すべき相続税額があるにもかかわらず対応しないままに申告期限を過ぎてしまうと、税務署から相続税申告の督促書が届きます。これを放置してしまうと次は財産差し押さえの通知書が届き、遺産を差し押さえられる事態に発展。その後に相続税の申告をしても、無申告加算税と延滞税が課税されるので高額な納税をしなければならなくなります。

遺産が土地や建物で、10ヶ月以内に相続税を支払うことが難しいといった場合には、一定の条件を満たしていることで納税期限の延長もしくは物で納税することが可能です。

相続税の軽減措置の適用(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)

相続税の軽減措置を受けるためには、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行わなければいけません。遺産分割を行う場合、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらないと、配偶者や宅地による特例の軽減措置を受けられなくなってしまいます。

期限はないがデメリットがあるもの

遺産分割

遺産分割に期限はありませんが、長期間放置すれば不都合が生じます。不動産登記や株券の名義変更、預貯金の払い戻しには遺産分割協議が成立した際に作成する遺産分割協議書が必要となります。そのため、遺産分割協議をしないままだと遺産分割協議書も作成できず、相続に伴う様々な手続きを行えないのです。特に不動産は登記名義を変更しないと売却や抵当権の設定ができないといったデメリットがあります。また、登記名義を変更しなくても固定資産税や都市計画税などは課税されるので注意が必要です。

不動産相続登記

相続人が不動産を相続した際、被相続人から登記名義を変更しないまま、その相続人自身も亡くなった場合、さらに不動産について権利を取得する相続人が多数人になることで、相続登記の際に多くの書類や資料が必要となってしまいます。

例えば被相続人の相続人である子が死亡し、祖父から孫へと不動産の登記名義を変更する場合は、権利の移転過程を示すため、被相続人の子に一度名義を変更しなければいけません。その上で被相続人の子から孫への登記名義の変更が必要となるため、相続登記についての手続的負担が大きくなるといえます。

土地・戸建て・マンションを相続する場合のチェックポイント

土地・戸建・マンション不動産には複数の種類があり、種類ごとに相続する場合のチェックポイントが異なります。スムーズでトラブルなく相続するためには何を注意したらいいのか、不動産の種類ごとにポイントを紹介していきます。

土地のみを相続する場合

土地のみを相続する場合のチェックポイントを見ていきましょう。

1.土地の相続方法は選択肢が広い

最初に注目したいのが相続方法ですが、土地のみを相続する場合は、他の不動産に比べて相続方法の選択肢が広いのが特徴です。このことは注意点という観点よりも、土地相続ならではの利点として注目できるでしょう。

相続人が1人の場合は言うに及ばずですが、複数の相続人がいる場合でも、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有」といった各種の遺産分割方法について、全てが適用可能です。現物分割は一筆を二筆に分ける手法で簡単に実現できますし、代償分割、換価分割、共有に関しても、相続人全員の同意があればスムーズに実施できるものです。

このように、土地のみを相続する場合の相続方法の選択肢は複数存在します。個別の事情や相続人の数に応じて、全員が納得できる仕方で相続方法を選択できるでしょう。相続財産が土地のみという状況だからこそ、シンプルに物事を考えることができ、取り得る選択肢も多く、相続をめぐるトラブルも発生しにくいのが土地のみの相続です。

土地相続ならではの注意点もある

土地相続はシンプルに考えられるといいましたが、その反面、土地相続ならではの注意点やデメリットもあります。例えば、土地は相続手続きを済ませた後で決定を変更するのは難しいですし、現物を売却してしまえば、後になって買い戻すのは困難です。そして、地域や経済状況にもよりますが、突然の土地価格の変動がトラブルの火種になることもあります。

また、代償分割を例にすると、土地相続者が他の相続人に代償分の財産を現金で渡す場合、経済的な余裕がなくなり財産を渡せなくなる可能性や、代償分割の大元である土地の評価額について、相続人間で意見が分かれトラブルになるケースも少なくありません。

といった具合に、分かりやすくシンプルな反面、特有のデメリットや注意事項を内包しているのが土地相続です。こうしたトラブルを回避してスムーズな相続を実現するためには、相続人同士で十分な話し合いを行い合意を形成しておく必要があります。

土地を相続した場合の税金について

土地を相続する場合、トラブルを回避すべく相続方法や分割方法のことを一生懸命に考えますが、考えておかなければならないのは相続方法だけでなく、税金の話もあります。

土地を相続した際に支払う相続税や登記費用は、基本的には一度で完結する問題のため、注意が向けられていることが多いはずです。ですが、気を付けたおきたいのは「固定資産税」です。固定資産税は土地や家屋など文字通りの固定資産にかかる地方税ですが、この固定資産税が土地を相続した翌年から発生し、応分の税額を毎年納めなければなりません。

固定資産税の税額は土地の評価額によって決められ、評価額が低いと税額も低くなりますが、評価額が高い土地を相続した場合は、固定資産税の税額も高額になるので注意が必要です。相続人の収入や経済力で税金が払えるかどうか相続前によく検討しておかなければなりません。

「更地」の相続は特に注意を要します。更地は住宅用地とは認められず、住宅用地に適用される課税標準額が固定資産税評価額の6分の1に軽減される「小規模住宅用地の特例」が受けられないためです。簡単にいえば、更地の固定資産税額は高額になる可能性があるということ。

以上のように、土地を相続する場合は税金についても考慮しておきましょう。

戸建て物件を相続する場合

戸建物件を相続する場合のチェックポイントです。

戸建の相続方法は土地より難しい

戸建て物件の相続は土地のみの相続に比べて選択肢が狭く、難しくなると考えたほうがいいでしょう。その理由は、戸建て物件は土地の上に建物が建っている状態であり、土地のように現物を分割できないためです。文字通り分割して相続する「現物分割」について、戸建て物件の相続には適用できません。従って、戸建て物件の相続方法は、代償分割、換価分割、共有の4つから選択することになるでしょう。

どの相続方法を選択するかは、相続方法ごとの特徴やメリット・デメリットを理解した上で個別の事情を考慮し、相続人全員が納得して合意できる手段を選ぶことが大切です。

代償分割は、特例により相続税が安く抑えられる場合がありますが、代償金支払い能力が必要なこと、また支払方法に関して争いが起きやすいのがデメリットです。換価分割は、代償金の支払い能力は問題になりませんが、手続きが煩雑で売却までに時間がかかるのが難点です。共有は比較的トラブルが起きづらい相続方法ですが、共有者の誰かが亡くなった場合、自分と面識のない人物が新たな共有者の一人になる可能性があるなど、将来的な問題を内包しています。

戸建物件相続における注意点

前項でも紹介した通り、戸建ての相続は土地のみに比べて相続方法の選択肢が少なく、相続方法ごとにメリット・デメリットがあります。慎重に話し合い最適な相続方法を選択する必要があることです。

この点に関しては、相続が発生してから対応するのではなく、相続が発生する前から当事者で話し合いや検討を重ねることをおすすめします。その際、被相続人による遺言書を残しておいてもらえば、トラブルを回避しやすくなり安心です。

一方、戸建て物件の相続では、「配偶者居住権」を活用するケースもあるでしょう。配偶者居住権は、戸建て物件の所有者である夫が亡くなったとき、配偶者の妻がその物件での居住を継続できる権利のことです。これにはメリットもありますが注意点もあります。

配偶者居住権のメリットは、配偶者がその家に住み続けられること、他の財産の取り分が減らないこと、代償金を払わなくて済むことです。一方デメリットとして挙げられるのが、物件の譲渡・売却ができない、物件所有者の税負担が大きくなることがあります。

この配偶者居住権をスムーズに適用するためにも、相続が発生する前に話し合いを行い、遺言書を残すのが理想的です。

戸建て物件を相続した場合の税金について

税金の問題で考えておきたいのは「固定資産税」です。税額の計算をしておいた方がいいというだけではありません。注意しておきたいのは、相続した戸建て物件を「空き家のまま放置すること」です。

一日、二日なら問題ありませんが、長期にわたって家を管理せず空き家のまま放置すると、「特定空き家」に指定され、住宅用地特例の対象から外される可能性があるのです。そして、特例の対象から除外された場合、固定資産税の減免措置が受けられなくなり、高額な固定資産税を支払う結果となってしまいます。

よって、戸建て物件を相続したときは、物件の管理をきちんと行い、空き家のまま放置しないようにしましょう。管理が難しい場合は、売却するのも一手です。控除制度の中には空き家を売却する際、適用条件を満たすことで譲渡所得から3,000万円を控除できる特例もあります。

マンションを相続する場合

最後に、マンションを相続する場合のチェックポイントを見ていきます。

マンション相続の方法

マンションの相続方法は戸建ての場合と同じです。土地の上に建物が建っている財産なので、文字通りの「現物分割」を行うことはできず、それ以外の3つの方法、「代償分割」「換価分割」「共有」のいずれかを選ぶことになります。

マンションは土地の上にあるので、区分所有者(建物所有者)は土地に対する権利も有しますが、土地のみを活用することはできません。この点が土地や戸建てと異なるところです。

マンション相続の注意点

マンション相続で注意したいのは、築年数と維持管理のコストです。マンションは人が住まなくても維持管理へのコストが必要であり、毎月の管理費や修繕積立金として数万円発生。10~15年に一度のスパンですが、大規模修繕では数万~数十万の一時金が必要になります。そして、築年数が古くなると、マンションの資産価値が低下していき、売却・賃貸が難しくなる問題もあります。

売却や賃貸を目的にしたマンションの相続を考えている場合は、物件の状態や資産価値、コストの計算や収支シミュレーションなどを行い、運用・売却可能なマンションかどうかを調べておいたほうがいいでしょう。もちろん自分で住むという選択肢もあります。

そもそも不動産ってなに?

そもそも、不動産とは一体何を指すのでしょうか?

また、万が一不動産を相続することになった場合は何をすればよいのでしょうか?

不動産とは「動かせないもの」のことを指す

不動産を一文字ずつ読んでいくと、「動かせないもの」であるように読めます。この捉え方は、あながち間違ってはいません。

実際に民法の第86条からは以下のような意義が読み取れます。

「不動産とは、土地及びその定着物。その他の物は動産とする」

ここでいう土地は、単に土の表面だけを指しているのではなく、法令の規定により区画された地下や地上まで含まれています。

また、この場合の定着物というのは、建物(住宅)や木、植物、庭石など動かすことができないものを指します。

相続登記が困難な不動産は意外に多い

先祖代々承継してきた土地建物の登記名義の変更が行われないまま放置されていた場合、新たに登記名義を変更をするための書類が揃えることが困難になる可能性があります。

例えば、以下のようなケースです。

Aさんは、父親が他界したことで相続した、父親が所有していた実家の土地を売却することにしました。その土地は、Aさんの父親が祖父から相続した土地で、仮に、実家の土地の名義がAさんの祖父名義になっていたとします。

この場合、Aさん自身へ登記名義の変更を行わなければ実家を売却することはできません。

Aさんの土地として登記名義の変更を行うためには、もともと土地を所有していた祖父の相続人を確認する必要があり、祖父を相続したすべての親族から、Aさんの父親が実家の土地を取得したことについて了解してもらい、遺産分割協議書を作成の上、印鑑証明書をもらう必要があります。この場合、複数の相続を経ることで、数十名単位で祖父の遺産を相続した相続人が存在している可能性もあり、個人で手続きを行うのは非常に骨の折れる作業といえるでしょう。

相続時に確実に登記名義を変更することが重要

上記の例のように相続登記が困難となる事態を防ぐためには、どのような対策を行えばよいのでしょうか?

不動産の所有者が亡くなったタイミングで、必ず被相続人から相続人へ、登記名義の変更を行うことが重要です。

さらに、名義人となった相続人が死亡した際、その名義人を相続する相続人においても名義変更を適時に行えば、今回の例のような事態は防げる可能性が高くなります。

代々相続登記がなされていない不動産の相続については、専門家に協力を求める

上述のような作業は、個人で行おうとすると時間も労力も負担といえます。そのため、弁護士や司法書士などの専門家に対応を依頼することでスムーズに進められるはずです。

なお、Aさんの父親が亡くなってから3ヶ月以内であれば、相続放棄を行うことで固定資産税の支払い義務を免れることが可能です。

特別な事情がある場合には、被相続人の死後3ヶ月を経過していても相続放棄を行うことができる場合がありますが、被相続人と相続人が長期間にわたり没交渉であって、相続財産が全くないと信じ、相続人が相続財産を調査することも著しく困難な事情があったというような、あくまで例外的な場合に限られます。

不動産の相続に伴う手続きは、時間が経てば経つほどスムーズにいかなくなると考えられます。速やかに専門家に相談するのが一番だといえます。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
メール・電話での相談やLINEからの予約にも対応しているので、気になる事があれば気軽に質問してみましょう。