不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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こちらのカテゴリーでは、不動産相続においてトラブルになりがちな事例を、Q&A形式でご紹介します。
不動産相続のトラブルは、それこそ自分がいざ当事者になるまでは、どこか他人事、あるいは別世界のことのように感じていた方もいらっしゃるかもしれません。実際、映画やドラマ、小説などでは、格好の題材となっていますね。しかし「事実は小説より奇なり」という諺の通り、信じられないようなトラブルが起こりえます。
複数の相続人がいて遺産分割協議を進めようとした際に、被相続人の遺産を全て自分が受け取りたいと主張する相続人が現れることがあります。遺産の独り占め問題は珍しいものでなく、例えば「自分が父親の介護をしてきた」とか「長男が家督を継ぐべき」といった理由から遺産の全てを受け取る権利が自分にあると考えることもあるでしょう。
しかし、原則として相続権は法律によって相続人に認められている権利であり、個人が独り占めを主張したとしても、法的に認められているものではありません。
そのため、遺産の独り占めを主張する相続人に対しては、まずは話し合いによって歩み寄り、理解を得るといったことが必要となります。
基本的に、話し合いで解決できるのであればそれが最善だといえるでしょう。また、感情的な話し合いで解決に至らない場合、民法の規定を提示して「相続権に関するルール」を伝えるといった方法もあります。
それでも相手が納得しない場合、家庭裁判所へ遺産分割調停を求めて、調停委員など第三者に入ってもらって話し合いを進めるなどの手段も有効です。
複数の相続人がいたとして、特定の1人が不動産を相続したいと主張し、他の相続人へ代償金として現金を支払うと約束したとします。その申し出に対して相続人の全員が同意すれば、代償分割が可能となり、不動産を相続希望の相続人の願いも叶います。
しかし、実際には代償分割を行おうとしても、代償金として十分な現金を手元に持って折らず、代償金の支払いが行われないといったケースも想定されるでしょう。
代償金が支払われなければ代償分割も成立せず、特定の相続人だけが不動産を相続するといったことも不可能です。
まずは代償金をまかなうための資金を調達することを考えます。資金調達の方法には不動産担保ローンがあります。
また、代償金の一括払いが難しければ分割払いといった選択も可能です。あるいは他の資産を現金の代わりに譲渡するといった選択肢もあるでしょう。
ただし、どのような場合でもリスクがあるため十分な交渉が必要です。
代償分割によって不動産相続を希望したとして、不動産の評価額が決定されなければ代償金の額を決定することもできません。また、現金の代わりの資産で代償金を支払う場合も、資産に対する評価が必要となります。
しかし資産に対する評価は、それを行う人やタイミングによって変動する可能性もあり、相続人同士で互いに評価額を出してどちらの金額こそ正しいか口論になる恐れもあるでしょう。
最も合理的な解決策としては、不動産鑑定士のような不動産や資産の評価を行う専門家を、相続人全員で話し合って決定することです。
異なる専門家へ依頼して評価額が変わってしまうからこそ、相続人の間で話し合いがこじれるのであり、最初から信頼できる専門家へ評価を依頼できれば問題解決もスムーズです。
ただし、今度はどの専門家へ依頼するかで話し合いがこじれる可能性もあり、実績や専門性など、資産評価を依頼する専門家の選定基準を先に明確化し、相続人の間で共有しておくことも大切といえます。
不動産を売却して現金化したい相続人と、不動産を不動産として相続したい相続人で意見が衝突することも珍しくありません。
重要なポイントは、それぞれの相続人がどうして不動産を売却したいのか、あるいは不動産を維持して相続したいのかという理由です。
例えば単純に現金を欲しい相続人であれば代償金の支払いで解決できる可能性があるでしょうし、あるいは物件そのものに何かしらの思い入れがある場合、お金の問題ではないといった可能性もあり得ます。
単に不動産を売却して現金化し、それを相続したいというだけであれば、代償金を支払うことで不動産の維持に合意してくれる可能性はあるでしょう。一方、どうしても感情として「家を残したい」または「家を残したくない」といった考えを持つ場合、お金の話だけでは問題が解決しないことも考えられます。
異なる意見が出て相続人同士が衝突した場合、それぞれの意見の根拠や理由について正直に話し合い、落とし所を考えることが大切です。
相続した不動産についてどう対応すべきか話し合いがまとまらなかったり、思い入れのある自宅をそのままにしておきたいと考えたりして、結果的に空き家のまま放置されるといった場合もあります。
空き家問題は日本全国で深刻化しているものであり、相続人に悪意があるかないかにかかわらず、トラブルの原因になってしまいかねません。
また、複数の相続人の共有状態で空き家として放置した場合、固定資産税の支払いでもめたり、いざ空き家を処分しようとしても所有者全員の同意が得られず現金化できなかったりといったケースも考えられます。
その他、空き家には物件が傷みやすいという問題があり、空き家を放置することで物件の資産価値がどんどん減少していくといった恐れも想定できます。
相続不動産を空き家として放置することは色々なトラブルの原因になり得ます。売却する、賃貸物件として運用する、または相続人の誰かが住むなど、速やかに不動産の活用法について話し合って方針を決定することが大切です。
不動産を相続したり、複数の相続人で共有したりする場合、改めて不動産の持ち主が変わったことを届け出て名義変更を行います。
適性に名義変更を行っておかなければ、その不動産や土地の所有者が誰であるのか公的に証明することができなくなり、不動産の活用や事業利用といった選択肢も困難になります。
また、不動産を共有状態のまま登記をせずに放置すると、相続人の中の誰かが勝手に共有名義へ変更して、自分の持分だと主張する部分を売却したり貸し出したりしてしまう恐れもあるでしょう。
不動産相続では、相続した不動産について速やかに名義変更を行って登記を完了することが必要です。なお、2022年6月時点において相続登記に関する法的義務や、登記を行っていないことに対する罰則等はありませんが、法改正によって2024年4月1日から相続登記が義務化されると想定されています。
登記が義務化された後は、相続による不動産取得を知った日から3年以内の相続登記が義務とされるため注意してください。
不動産相続における代表的なトラブルとして、相続した不動産や遺産の評価額が高く、相当する相続税を現金で支払えないといった金銭的問題が挙げられます。
相続税の支払いは法律によって定められているものであり、たとえ自己破産をしても相続税の支払いが免責されることはありません。そのため、基本的には相続税を支払うための現金を調達するか、あるいは適正な節税対策で相続税の減額を狙うといったことが重要となります。
どうしても相続税を支払えない場合、不動産の一部あるいは全部を売却して現金化し、そこから相続税を支払うといった方法が考えられます。しかしそれでは不動産を失ってしまうため、売却する代わりに不動産担保ローンなどを申請し、融資によって資金調達を叶えるといった方法も有効です。
なお、できれば相続が発生する前に節税対策を考えておくべきですが、どうしても相続税の支払いが困難になった場合、相続放棄によって遺産を相続しないといった選択もあるでしょう。
不動産の相続は、現金等と異なり簡単に分割できないため、相続人間で意見が対立する傾向にあります。元々折り合いが悪かった場合だけでなく、それ以前は仲が良かった親族間でも、遺産の帰属をめぐって一気に関係が悪化するというケースは多いのが現実です。
人間関係が悪化すれば、相続人同士で遺産分割協議を行っても、お互いの感情論が先行してしまい、平行線のまま話がまとまらず、時間だけが過ぎていくという事態になりがちです。トラブルが解決しない場合は、法的根拠に基づいた相続割合というものを基準に協議を行うことが重要です。そのためにも、専門家である弁護士への依頼が賢明と言えます。
弁護士によってどの分野が得意か、経験やノウハウの豊富さといったものは異なってきます。例えば刑事事件や離婚訴訟、借金問題などに強い弁護士に、不動産相続の案件を依頼しても(決してダメとは言い切れませんが)必ずしも上手くいくとは限りません。「餅は餅屋」の諺が示す通り、不動産相続の問題やトラブルには、不動産相続に強い弁護士に依頼するのがよいでしょう。
では、不動産相続において起こりがちなトラブル事例を、Q&A形式で見ていきましょう。「兄弟姉妹編」「夫婦編」「親子編」の3項目を取り上げ、それぞれでよくある事例を取り上げています。
不動産相続におけるトラブルは兄弟姉妹間のものが一番多いのが現実です。以下の事例を参考に、問題解決に役立ててください。
A.親(被相続人)が死去した時点から、その家は相続人全員による遺産共有状態となります。たとえ生前同居していたからといって、特定の相続人にだけ権利があるわけではなく、遺産である家を特定の相続人の単独所有とするには、遺産分割協議にて、相続人全員の合意を得なければなりません。
A.そもそも共同相続した不動産を特定の相続人の単独名義として登記するには相続人全員の合意が必要です。このケースは明らかに、遺産分割協議書の偽造等の不正な手段が採られたと考えられます。単独名義の登記は無効であり、他の相続人に無断で登記名義を変更した相続人は、場合によっては刑法上罰せられる可能性があります。
A.それこそドラマや小説などにありそうですが、異母(異父)兄弟にも相続権があります。気が進まないのは分かりますが、遺産分割協議に参加してもらう必要があり、故意に連絡を取らず遺産分割協議に参加させないといったことがあると、後にトラブルとなります。
A.不動産を共有名義で相続することは、避けるべきです。問題を先送りにしたに過ぎず、お子さんの代、あるいはお孫さんの代に、より相続人が増える結果となり、大きなトラブルの火種となる可能性が高くなります。
A.贈与を受けていた相続人は「特別受益者」といい、特別受益者の相続分は、贈与分が控除された残額になります。被相続人が生前に財産を贈与していたという証拠を確認することが必要と言えます。
A.相続には「寄与分」という、法定相続人が「被相続人の財産の維持や増加」に貢献した場合に、その法定相続人は他の法定相続人よりも多くの相続分が認められる仕組みがあります。ただし、単に介護などをしただけでは、寄与分は認められない可能性が高いです。
A. 交通事故で死亡した親族の賠償金の相続は、被相続人の財産を相続する権利のある法定相続人に対して、平等に分配されるべきです。従って、特定の相続人による賠償金の独占は認められません。
「自分が賠償金の交渉を代表して行った」とか「葬儀費用や治療費も負担した」などと主張して、独占権を正当化するかもしれませんが、法的には一切通用しません。
とはいえ、当事者間の関係性や確執が大きくなるのは望ましくないので、怒りに任せて反発せず、弁護士を通して話し合いで解決しましょう。
A. 不公平な遺言書により、相続人の一人が遺産を独占し、他の相続人が悔しい思いをすることがあります。被相続人が遺言書を残している場合、遺言書に基づき遺産分割するのが原則であり、特定の相続人に全ての財産を贈与する旨の遺言があれば、独占は一概に悪いともいえません。
一方、不公平な遺言書により財産相続を侵害されても、遺留分侵害額請求を行うことができます。遺留分侵害請求とは、法定相続人に対して法律上保障されている、最低限相続できる財産を請求することです。この遺留分侵害請求を行った場合、被請求者は支払いに応じる義務があります。
当事者間の話し合いで解決するのがベストですが、解決できない場合は相続問題に強い弁護士に相談しましょう。
配偶者は、相続において、被相続人の親や兄弟姉妹、子供よりも法定相続の割合が優遇されています。ただし、思わぬケースで足元をすくわれるケースがありますので、想定される事例について、予め知識を深めておいてください。
A.被相続者を亡くし、義理の親兄弟も他界している、なおかつ子供がいないという場合、甥または姪に相続権が発生します。ただし、遺言書で甥と姪に遺産を譲らないと明記されていれば、その限りではありません。
A.事実婚と認められる内縁関係であったとしても、内縁配偶者は法定相続人になりません。内縁配偶者に自己の死後には家を譲りたいのであれば、被相続人は生前、遺言書に遺贈する旨を明記しておくべきです。
A. 遺産相続は、法定相続人が全て揃って遺産分割協議を行い、合意を取りまとめた遺産分割協議書を作成するのが基本です。そのプロセスは人数が2人でも3人でも、10人であっても基本は変わりません。
ただし遺産分割協議書は、全員が揃って話し合いを行わなければ効力が発揮されないにも関わらず、相続人が大人数では一堂に会するのが難しいなど難航することも多いので、遺産分割協議に詳しい弁護士に相談して話を進めるのがベストでしょう。
A. 法定相続人がいない場合、本人(被相続人)はできるだけ早く、遺産相続に関する遺言書を作成しておく必要があります。なぜなら、法定相続人がいない状態で被相続人が亡くなると、遺産を求めて親族が争いを始める可能性があるからです。
逆に、あらかじめ遺言書を作成しておき、誰に財産を譲るか明確に意思を示しておけば、後顧の憂いを断つことができるでしょう。遺言書の作成は主導的に考えるのは本人です。ただし、全体の構成については弁護士などの専門家に相談するのがベストです。
A. 夫婦間の不動産の生前贈与は、贈与税における配偶者の条件を満たす場合は、行ったほうがいいでしょう。なぜなら、配偶者控除の条件を満たすと、基礎控除110万円に加えて最高2000万円まで非課税(控除)になる特例があるからです。
ただし、夫婦間であれば、1億6千万円以下の遺産には相続税がかからないので、相続する遺産が1億6千万円を超える可能性があるか否かがポイントになるでしょう。
贈与税と相続税の特徴をよく分析の上、自分たちの状況にマッチした最適な選択を行う必要があります。
A. 20年以上連れ添った夫婦間という条件で、住居や購入費用の生前贈与で税金が優遇される「おしどり贈与」。
基礎控除110万円をふくめて2,110万円まで贈与税がかからないメリットがある一方、遺産金額が1億6,000万円までなら相続税がかからず、おしどり贈与するメリットがない、また登記費用や弁護士費用など余分な費用がかかるなどデメリットもあります。
制度を利用するかどうかは、遺産金額を見ながら慎重に考えたほうがいいでしょう。
A. いかなる遺言書であれ、その内容は法的にも倫理的にも尊重されるべきです。しかし、民法1028条には遺留分に関する規定があり、法定相続人の資格を持つ者であれば、最低限の遺産相続を受ける権利を有しています。従って、仮に「全額を不倫相手に相続する」と遺言書に書かれてあっても、書面通り全額が不倫相手に相続されることはありません。
法定相続人が親などの尊属のみの場合は1/3、それ以外の場合は1/2が、遺族のために保障されます。とはいえ、家族より不倫相手に多くの遺産相続がなされることは、遺族としては心中穏やかではありません。最悪の結果を招く前に、弁護士に相談するなど事前の対策を打っておく必要があるでしょう。
親子間の遺産相続にあたり、トラブルは起こりやすい傾向にあります。
A. 相続欠格や相続廃除などの手続きがされていない限り、長年、勘当や絶縁状態であったとしても、子供に遺産相続の権利はあります。
A.赤の他人であっても、遺言書に記載されている内容は尊重されますので、遺産の受取人とされた人物が取得する遺産をゼロにはできません。ただし、遺留分という制度があるので、一定の法定相続人には一定の遺産相続が保障されます。
A.被相続人の子供が先に亡くなっている場合は、代襲相続という、孫が相続人となる制度があります。ただし、子供が養子の場合、孫が養子縁組前に生まれたか後に生まれたかによって、孫の代襲相続の可否は変わってきます。
A. 養子であっても、相続人としての権利は、実子と同様に認められます。ただし、相続税の控除額の算定にあたり、実子か養子かで違いが生じます。
A.ご主人の子を妊娠中にご主人を亡くしたという場合、胎児も法定相続人となるため、ご主人の親兄弟は法定相続人になりません。ただし死産となった場合はその限りではありません。
A. 苦労に苦労を重ねて不動産相続の分割協議を終了させた後で、新たな遺産が発見された…。このような場合は、発見された遺産の種類や内容を注意深く精査したうえで、最適な解決策を選ぶ必要があります。
実際の対処法には、発見された遺産を他の遺産と切り離して個別に協議する方法と、いったん全ての協議内容をリセットし、発見された遺産も含めて再度、協議しなおす方法です。
どちらを選択すべきか、事前にシミュレーションしておけば混乱することなく対応できるでしょう。
A. 不法投棄のあるトラブル物件を相続する際は、感情に流されて相続手続きを急ぐのではなく、まずは不法投棄の規模や状況を確認しましょう。なぜなら、投棄されているものの内容によって対応の仕方が変わるからです。
当該物件を売却する場合は、公共や民間のサービスを利用する手もありますし、売却や賃借ができず処分だけでも依頼したいときは、民間企業と契約する方法もあります。それでも問題を解決できないなら、相続を放棄することも可能です。
A. 賃貸物件を相続を行うときは、事前のリフォームと贈与を行うことで節税効果を生み出すことができます。なぜなら、リフォームにより入居率が上がれ相続税の割合が下がり、事業者にリフォーム代を支払うことで、家族に相続する金融資産の相続を減らすことができるからです。
また、事前の贈与により相続税が発生しなくなるメリットも見逃せません。ただし、事前のリフォームによる節税対策が有効なのは、賃貸物件に入居者がいないときや、入居者が少ないときです。
A. 父親が生前に自筆証書遺言を作成し、その中で全財産を後妻に相続させる旨の記載があっても、実施は遺留分を回収できる可能性があります。その際のポイントは、父親の生前、後妻との間で金融上の取引があったかどうかです。もし取引があれば生前贈与になる可能性が高く、遺留分の算定対象になります。
解決までのプロセスには、遺留分減殺請求権の行使や、被相続人の相続財産の開示要求など、難しい問題がありますので、相続問題に強い弁護士に相談したほうがいいでしょう。
後妻の使途不明金・自筆証書遺言があるケースの遺留分について>>
A. 連れ子と義理の親の間には血縁関係がありませんので、そのままの状態では、義理の親が死んだとき、連れ子は継父(母)の遺産を相続することはできません。
連れ子が義理の親の遺産を相続するためには、事前に養子縁組をしておくか、連れ子に対して財産を遺贈する旨を明記した遺言書を、義理の親が生前に作成しておく必要があります。
A. 相続予定の不動産が赤字物件だったとき、相続人は相続すべきか否か悩んでしまうでしょう。このような場合の対処法は3つあります。
収益を上げられないと判断できるなら「相続を放棄する」、相続税や売却価格の予測ができるなら「相続してから売却する」、収益化が可能なら「相続して収益化できるように手を加える」の3つです。
物件の状況に応じて適切な判断を下す必要があるので、なるべく早い段階で、親と子が弁護士を交えて相続について話し合いをしたほうがいいでしょう。
A. 娘の夫や妻など被相続人にとって義理の息子や娘にあたる者は、たとえ同じ家に同居していたとしても、法律上の息子ではないので、被相続人に対する相続権はありません。
自分の実子ではなく、自分の子の妻や夫へ不動産を相続させたい場合、事前の養子縁組、生前贈与、遺贈などの方法によって相続させることができます。このうち遺贈を選択した場合は、生前に遺言書を作成し「娘の夫に遺贈する」旨を記載しておけば、義理の息子や娘も相続できるようになりますが、遺言書の作成方法に注意しなければなりません。
なぜなら、遺贈を成立させるための遺言書は、法的に有効なものでなければならないからです。ではどうすればいいかというと、公証人に依頼して「公正証書遺言」を作成することです。公証人が作成した遺言書であれば、証拠能力は確実になり、家庭裁判所の検認も必要なく、手続き完了までのスピードも早くなります。
その際、公証人との打ち合わせを弁護士に依頼すれば、手続きはさらにスムーズになり、より正確で法的に有効な遺言書が残せるでしょう。
A. 父から相続する予定の不動産の名義を調べてみたら、父ではなく祖父のままだった…。このように名義変更されていない遺産相続に直面することはよくあります。
被相続人から相続する遺産が名義変更されておらず、しかも名義人がかなり古い人物だった場合、スムーズに相続することは難しくなります。名義変更されていない不動産は、過去に遡って遺産分割協議書を作成することにより、相続が可能になりますが、関係する親戚の全てに遺産分割協議書への署名・捺印してもらう必要があるからです。その際、遠い親戚にも署名・捺印をお願いしなければならず、しかも応じてくれるかどうかも分かりません。
親戚が少数であればどうということもありませんが、親戚の数がとても多く、しかも祖父の子供が亡くなっていたり、移転により居所がわからない場合は、お孫さんや居所を探したりしなければならず、手続きの負担は重くなります。
従って、名義変更されていない不動産については、被相続人自らが生前のうちに土地の登記状況を確認しておくこと、それが間に合わず子供が対処する場合は、不動産相続を得意とする弁護士に依頼して、プロの力を頼りながら遺産分割協議書や必要書類探しを行ったほうがいいでしょう。
他にも、書類の作成や準備、親族巡りなど、遺産分割協議書作成に至る道のりは長いので、一人で解決しようとせず、不動産相続に強い弁護士に相談したほうがいいでしょう。