不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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弁護士とひと口に言っても、得意分野はそれぞれ。「民事も刑事も得意」という弁護士はほとんどおらず、どちらかを専門にしていることが多いのが現状です。また、民事が得意な弁護士でも、必ずしも相続問題に強いとは限りません。
ではどのような点に注意して弁護士を選べば良いのでしょうか?ここでは、不動産相続に関する弁護士の主な業務、弁護士の選び方や注意点について解説しています。
基本的には遺言書の作成や遺言執行者の就任といった、司法書士と同じ業務を行います。司法書士とのちがいは、トラブルを予測して揉め事が起こりにくい内容の遺言書を作成できること。また、遺産分割協議や遺産分割調停、遺産分割審判など、問題が起きたときに対応する業務も請け負います。「当事者の代理人」としてトラブルを解決できるのは、仕業のなかでも弁護士のみが行える仕事です。
不動産相続で他の相続人と意見が合わない場合、相続人同士で争い事が起きる可能性が高めです。相続前に弁護士へ依頼しておくと、トラブル防止につながるでしょう。
専門的な法律の知識がないと、自分だけでは解決が難しい不動産相続のトラブル。ただ、弁護士にも色々なタイプがいますし、弁護士事務所によって専門分野はそれぞれです。どんな弁護士に依頼するかによって、結果は大きく変わってきます。では、何を基準にして選べば良いのでしょうか?
日本では弁護士間での格付けのようなものはありません。「不動産相続に強い弁護士」「遺産相続に強い弁護士」をランキングにしているサイトを見かけても、安易に信用しないほうが賢明です。大手の弁護士事務所が格付けされているランキングをネット上で見かけることがありますが、それは「所属弁護士の数」に対する格付けであって「特定の案件に強い」わけではないのです。
大手弁護士事務所のなかには、企業案件のみを請け負っているところや遺産相続に関する案件を取り扱っていないところも多数あります。また、企業専門のため費用が高額なことも多々あるようです。「ランキング」をあてにせず、まずは地域で信頼されている身近な弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。
「先生だから」と、何かと遠慮してしまう人もいるようですが、弁護士も人間です。さまざまなタイプの人がいますし、相性も異なります。「依頼人が選ぶ立場」ということを忘れず、依頼後に嫌なしこりを残さないためにも、以下の点に注意して納得できる方を選びましょう。
弁護士の中には、不動産に関する相続事件を扱ったことのない人もいます。相続分野にたずさわった経験がないと、専門的な交渉スキルが低く、思ったような結果に結びつかない可能性も大いにあるのです。相続問題に関する経験や知識があるかを確かめなくてはなりません。はじめての相談で弁護士の実績を聞く、質問を用意しておくなど、見極める材料を用意してから面談にのぞんでください。
また、大手の弁護士事務所は企業案件を主に取り扱うケースが多いため、個人の不動産相続について経験がない傾向にあります。所属弁護士が多いからといって安易に「何でも対応できるだろう」と決めつけず、専門知識と経験があるか調べてから依頼しましょう。
気になるところを相談しようと電話やメールで問い合わせした際、素早く返事が返ってくるかは大切なポイントです。その日には取り合えなくても、遅くとも2~3営業日以内に弁護士から折り返しの連絡があるかを確かめましょう。弁護士事務所によっては、多くの案件を抱えすぎていて業務が立て込んでいることがあります。忙しすぎる弁護士に依頼してしまうと、普段の問い合わせに対する回答が遅いどころか、案件自体もなかなか前に進まない可能性があるのです。
不動産相続に関する問題は、解決までの時間が大切です。しっかりと向き合ってもらうためにも、返信の早さは必ず確認しておきましょう。最近では、SNSで相談や予約を受け付けているところもあります。連絡経路の多い弁護士事務所なら相談や依頼に対する管理が行き届いており、早めの応対が期待できそうです。
はじめて相談した際に、料金についてきちんと説明してくれるかも大切です。ホームページで料金が明確に表記されているかもチェックしましょう。ホームページに載っていないうえ、はじめの料金説明もない弁護士は注意。依頼者の足元を見ている可能性があります。特に、こちらから料金について質問したにもかかわらず曖昧な回答をするような弁護士には、決して依頼してはいけません。自分が調停や裁判を経て得られるであろう利益よりも、弁護士費用が高くなってしまうこともあるからです。
はじめに依頼者が得られる可能性のある金額と、弁護士費用の両方を提示してくれる弁護士は信頼できると言えます。依頼に対して過度な料金がかかるなら、依頼自体を断ることもできますよね。料金について不安にさせない弁護士か、しっかりとチェックしてください。
相談時間を柔軟に選べるかも注意しておきましょう。いつでも弁護士事務所へ通える人なら問題ありませんが、立地上難しい場合や、仕事や家事、子育てなどで平日の昼間は動けない人もいます。営業時間が長い弁護士事務所や、夜間や土日祝にも対応してくれる弁護士なら、いつでも相談できるので安心です。事務所が休みの際も、依頼者の近くまで来てくれるフットワークの軽い弁護士もいます。
係争中の相続人同士が離れた地域に住んでいるケースの遺産分割なども、柔軟に対応できる弁護士なら、費用を節約しながらスムーズに手続きを進めてくれるでしょう。
相続問題で重要になるのが他業種との連携です。問題全体を解決するためには、他業種の専門知識が必要になります。とくに不動産相続の問題では、法律だけでは解決できない手続きが含まれています。司法書士や不動産業者との連携がある弁護士、相続税が発生する場合には税理士への相談ができる弁護士を選びましょう。
ひとつの相続案件を解決するのに、弁護士や司法書士、税理士などを1つずつ自分で見つけて個別に相談していると、膨大な時間と手間がかかります。弁護士事務所によっては、他業種と連携してワンストップで手続きや依頼をすすめるサービスを行っています。多くの専門業種や仕業と提携している事務所を選びましょう。少なくとも司法書士・税理士と連携している弁護士事務所なら安心です。
弁護士を選ぶポイントとして意外と重要なのが、依頼者と弁護士の相性です。弁護士の人柄や性格が、自分に合っているかを考えましょう。係争の問題解決までには双方のコミュニケーションが大切です。相性が合わない弁護士と面談を重ねていると、依頼する自分にとってストレスになってしまいます。「苦手なタイプだな」「嫌な相手だな」と一度感じてしまうと、どうしても相談へ行く足が遠のいてしまうものです。結果的にコミュニケーションが不足し、手続きが遅れて、案件が長引いてしまったり、解決の妨げになったりしてしまうでしょう。
そこで、依頼する前にまずホームページで事務所や弁護士の人柄の雰囲気をチェックします。弁護士の姿勢に共感できるか、信頼できそうかを感じられたら、初回相談で実際に会ってみてください。印象が良ければ依頼する、相性が合わないようなら依頼を見送るといった対策がとれます。不動産相続をスムーズにすすめるためにも、自分にとって負担にならないかを考え、ストレスのない環境でのぞむことが大切です。
弁護士事務所のホームページや弁護士の紹介写真で雰囲気を見ただけでは、弁護士の人となりは見極めにくいもの。肝心なのは初回の相談時です。面談中に以下のような違和感を覚えたら、別の弁護士へ依頼を検討することをおすすめします。
いくら不動産相続に関する経験が豊富だからといって、自分の経験や事案をもとに「こうだ」と決めつけてくる弁護士には要注意です。依頼者の言葉を聞かず遮って話すような人は、勘違いや思い込みをしたまま進めてしまう危険性もあります。じっくり話を聞いてくれる弁護士を選びましょう。
依頼者の疑問や不安を取り除きながらすすめてくれる弁護士かも大切です。難しい専門知識を、素人に対しても理解するまで説明してくれる親身な先生にお願いしましょう。質問してもスルーしてちがう話を続ける、回答が明後日の方向を向いているなど、質問に答えられない弁護士はやめておいた方が無難です。取扱経験が少ない、または不動産相続の事案経験が全くない可能性も考えられます。
遺産相続なのですから、近しい人が亡くなった上で問題が発生しているということです。依頼者の事情を受け止めながら相談に乗ってくれる弁護士でないと、心への負担を重くしてしまうことになります。遺産相続・不動産相続はお金の問題以前に人間関係の問題でもあります。依頼者の立場で考えてくれる、親身な先生にお願いしたいものです。
なかには「必ず勝てます」「100%有利です」などと謳う弁護士がいるようですが、相談時にこのようなことを安易に言う弁護士は警戒しましょう。「絶対に勝てる」ケースは稀で、すべての法律問題には少なからずリスクやデメリットが存在します。依頼者にとって不利益な情報やリスクもしっかりと説明したうえで解決に向かえる弁護士に依頼してください。
「どんな事件でも対応できます」と広告で謳っている弁護士事務所がありますが、安易に鵜呑みにしてはいけません。得意分野・不得意分野を強調するならともかく、どの分野にも対応しているということは「広く浅く」やっているということです。特殊な事例や専門的な事案に対する経験に乏しい可能性も考えられます。広告を過信しすぎず、取扱件数や実績事例をしっかりと調べてから依頼しましょう。また、知り合いから紹介を受けた際にも注意が必要です。
不動産相続に強いという申し送りがあればまだしも、ただの顔見知りというだけでは能力や実績は見えません。紹介の場合も無条件に信頼せず、慎重に検討しましょう。
また、一概には言えませんが、大勢の弁護士が在籍している事務所などでは、せっかく相性の良い先生に出会えても、途中からちがう弁護士に代わってしまうことがあります。相談から担当までを同じ弁護士が一手に引き受けてくれるか、はじめに質問しておくといいかもしれません。嫌な顔をされるようであれば、相談先の変更を検討しましょう。
依頼人と弁護士が同じ方向を向いてこそ見えてくるのが最善の解決策です。立場はちがっても対等にしっかりと向き合ってくれる、自分に合った弁護士を見つけてください。
不動産相続に関する経験が豊富かを、一度会っただけで見抜くのは難しいでしょう。「不動産相続の相談を受け付けている」と広告で掲げているだけでは、経験数は分かりません。
ですから、面談時に直接聞いてみることをおすすめします。本当に実績が豊富な弁護士なら、実績数や事例を話してくれるかもしれません。また、対応できない事例なども理解しているので、その場で伝えてくれるでしょう。逆に経験数の少ない弁護士の場合は、持ち合わせている解決策に乏しいため、説明を聞いていても違和感があります。
また、弁護士としての能力や経験数には遜色なくても、案件にやる気を出してくれない場合は論外です。問題に親身に向き合い、どれだけ熱を注いでくれるかによっても結果はちがってきます。熱意を持って業務に取り組む姿勢を見せてくれる弁護士を選ぶことが大切です。
ふたを開けてみて「思っていた結果とちがった…」と後悔しないためにも、弁護士選びは慎重に行ってください。