実家を相続する場合

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このページでは、不動産相続の中でも特に実家を相続する場合の流れや費用、注意点などについてトータルで解説していますので、ぜひ参考にしてください。

実家の相続には注意点が複数ある

実家を不動産として相続したあとは、相続した後に実家で暮らすのか、物件を売却するのか、あるいは他の人へ物件を貸すのかといった活用法が考えられます。

実家の相続ではこれらの活用法ごとに注意すべきポイントが変わるため、まずは相続する実家をどのように扱うか検討しておくことが大切です。

実家を相続する際の大まかな流れ

被相続人の他界(死亡)によって実家を相続する場合、主として以下のような流れになります。

  1. 遺言書の有無と内容の確認
  2. 遺産の内容と債務などの確認
  3. 相続するかどうかの意思決定
  4. 準確定申告(必要な場合)
  5. 遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成
  6. 相続税の申告・納付

まず、被相続人が他界した場合、遺言書の有無を確認しなければなりません。

また、被相続人の財産状況や債務の有無などについても確認した上で、遺産を相続するかどうかを判断します。もしも住宅ローンや多額の負債といったマイナスの遺産が大きい場合、相続を放棄するといった判断もあり得ます。ただし、実家に暮らしている場合、相続を放棄すると住居を変えなければならなくなるため、引越費用や新しい住居に関しても十分に考慮した上で検討することが必要です。

相続放棄の期限は相続開始から3ヶ月以内

相続を放棄するかどうかの判断は、相続の開始が発生した時点から3ヶ月以内となっています。相続権を放棄する場合遺産の全てが対象となるため、この期間内にそれぞれのメリット・デメリットを十分に検討しなければなりません。

準確定申告は相続の開始から4ヶ月以内に行う

準確定申告が必要になるケースは、被相続人がマンションの経営や個人事業などをしていて、毎年の確定申告を行っていた場合です。

相続人が複数名いる場合は、それぞれ順確定申告が必要になります。

参照元:国税庁|No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

相続税の申告と納付

実家の物件を相続したり、売却して現金を相続したりして資産を得るには、相続税を支払わなければなりません。

相続税の納付は相続の開始から10ヶ月以内と定められており、期間内に所定の手続きを完了させることが大切です。

法定相続人及び法定相続分

法定相続人には順位がある

法定相続人とは、法的に相続する権利を認められている人のことを指します。

法定相続人にはルールや順位があり、まず被相続人の配偶者が常に相続人となります。なお、被相続人とすでに離婚していた場合、元配偶者は法定相続人になりません。

配偶者を除いた法定相続人には、以下のような順位が定められています。

法定相続分は法定相続人ごとに決まる

遺産を相続できる割合(法定相続分)は、相続人の関係や、法定相続人の順位などによって決まります。

遺産分割協議には全ての相続人の同意が必要

遺産分割協議は、被相続人の遺産を相続する権利を有する全員の同意がなければ進められません。また、相続人の中に遺産分割協議へ参加しない人がいたとしても、必ず委任状を受け取ることが必要です。

全ての相続人が遺産分割協議について意思共有できていない場合、遺産分割協議が進められず、必要な手続きの期限に間に合わない恐れもあるでしょう。そのため、被相続人が他界した後は、速やかに手続きを進めることが不可欠です。

遺言書がある場合は遺言書が優先される

法的に効力が認められている遺言書があれば、原則として相続の分配は遺言書の内容にもとづいて決められます。

遺言書の内容に従うことなく遺産分割協議を進めるのも可能ですが、その場合は遺言書によって相続人として指定されている全員が、遺言書の内容に従わずに遺産分割協議を進めることに同意していなければなりません。なお、遺言書によって家族以外の人が相続人として指定されている場合も同様です。

遺言書は最初に探す

遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を進めた場合、後から遺言書が見つかってトラブルに発展する可能性があります。そのため、まず遺言書の有無を確認することが必須です。

遺言書は被相続人が自宅金庫や銀行の貸金庫、弁護士事務所などで保管している以外に、公証役場に保管されている場合があります。まずは遺言書があるかどうか十分に探すようにしてください。

実家を相続する場合の相続税

相続税の金額は実家の価値だけで決まらない

相続税とは、相続人が受け取る被相続人の資産の価値に対して課税される税金です。そのため実家の不動産評価だけでなく、その他の動産・不動産、債務などを含めた全ての相続財産の価値が確定した上で、初めて相続税の金額も定まります。

ごくまれにですが、相続確定後に新たな債権先が出てくることがあります。その際は専門家に急ぎ相談してください。

課税価格と基礎控除

相続税には、課税対象となる価格から一定の金額を減額できる基礎控除が存在します。そのため、まずは基礎控除の金額について計算することが必要です。

基礎控除の額は以下の式で算出します。

参照元:国税庁|No.4152 相続税の計算[令和3年4月1日現在法令等]

基礎控除額が課税価格を上回れば相続税はゼロ

仮に法定相続人が2人(妻と子供1人)であった場合、基礎控除額は4,200万円となります。

その上で遺産の課税価格が4千万円であれば、控除額が上回るために課税対象額はゼロとなり、相続税の支払いは必要ありません。

実家の相続税評価額を調べる

実家などの不動産に関して課税対象額・相続税評価額を計算するには、その不動産の評価額が必要です。実家が持ち家で土地も含む場合、建物と土地の両方の評価額を合算した金額が相続税評価額となります。

建物の評価額は固定資産評価証明書を確認

実家の建物については、固定資産評価証明書を確認して、固定資産税評価額を確認します。建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同値です。

土地の評価額は相続税路線価にもとづいて計算

土地の相続税評価額は、国税庁が決定している相続税路線価にもとづいて面積に応じた金額を算出します。

具体的には以下の計算式となります。

ただし、土地の形状などによって調整が行われることもあり、実際の金額は専門家に相談して確認することが大切です。

参照元:国税庁|No.4602 土地家屋の評価[令和3年4月1日現在法令等]

倍率地域にある実家の土地の相続税評価額

倍率地域とは、相続税路線価が公的に決定されていないエリアです。そのため、倍率地域に実家がある場合には、土地の評価額に相続税路線価を利用できません。

倍率地域にある実家の土地については、国税庁が発表している「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を参照して計算することが重要です。具体的には以下のような計算式になります。

相続した実家で暮らさない場合のポイント

人によっては相続した実家を売却したり、賃貸物件として運用したりすることもあるでしょう。また、売却する場合は節税に活用できる税制上の特例もあるものの、同時に特例には期限もあるため早めに対策を練ることが大切です。

実家を売却する場合のポイント

相続した実家を売却する場合、「取得費加算の特例」や「相続空き家の3,000万円特別控除」といった制度を利用できる可能性があります。

取得費加算の特例

相続税を納めた人が、相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年経過までの間に実家を売却する場合、節税できる特例です。

相続空き家の3,000万円特別控除

一定の要件を満たした戸建て住宅を売却した場合、特別控除を受けられる制度です。ただし、控除を受けるには売却に至るまでの期限がある他、一度でも他人へ住居を貸してしまうと控除を受けられないといった制限もあります。

相続人が複数場合はトラブルを避けるために専門家へ相談

法定相続人が複数いる場合や、特定の相続人だけが実家に引き続き住むような場合、遺産分割協議において相続の分配方法でトラブルになる恐れもあります。

一方、相続税の手続きや税額の計算は素人にとって難しい面もあり、トラブルが発生して深刻化する前に不動産相続の専門知識を有するプロへ相談することが賢明です。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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