不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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このページでは、不動産物件を相続する際、その土地家屋はどのような方法で評価されるのかについて解説します。
不動産相続において気になるのは、相続税の金額にも大きく影響を与える不動産の評価額についてではないでしょうか。
しかし、その一方で、その評価とはどのような基準で行われるのか、ぜひ、知識を深めておきましょう。
ではまず、土地の評価方法について見ていきましょう。これまたご存知ない方が多いと思われますが、土地の評価方法というのは、大きく分けると、以下の4つがあります。
実際の市場でその土地を売買する際の相場価格です。不動産業者などによって、その土地の面積や形状、立地、周辺環境などの要素を総合的に踏まえて算出されます。
国土交通省が示す土地(地価公示標準地)の値段です。毎年3月下旬ごろに公表される土地価格の指標です。
相続税や贈与税の算定に大きな影響をおよぼすのが、この路線価です。国税庁によって例年7月頃に発表されるもので、主に都市部の市街地の路線に面する宅地の価格を評価したものです。
市町村(東京都23区内の場合は都税事務所)が示す土地の値段です。路線価が算出されていない地域の土地は、この固定資産税評価額をベースに、地域ごとに所定の係数をかけたものを評価額とします。これを「倍率方式」と呼びます。
以上のように、土地の相続税・贈与税の対象となる評価額は、路線価が算出されている地域の場合は路線価に基づいて算出(路線価方式)され、そうでない地域では、固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じて算出(倍率方式)します。
続いて、建物の評価額についてご説明したいと思います。建物の場合は公示価格や路線価といったものはなく、都税事務所または市町村が示す固定資産税評価額がそのベースとなっています。具体的な金額は、固定資産税係の窓口に赴き、固定資産課税台帳で確認することができます。
なお、賃貸マンションやアパートなどの収益物件の場合は、借家権があるため、勝手に売却することができないという事情を踏まえ、その家屋の固定資産税評価額に借家割合と賃貸割合を乗じた価額を、その家屋の固定資産税評価額から控除して評価します。
以上の通り、不動産相続の評価額というものは、対象によって異なる方法により算出されるという仕組みになっています。繰り返しになりますが、こうしたことに不慣れな方は、疑問や不明点などに悩まされることも多いはず。そうした場合には、実績やノウハウに長けた弁護士事務所などに相談するのが賢明です。
土地の評価を誤ると「脱税」に該当してしまう場合があります。相続税を脱税しないためには、土地評価について理解を深めることが重要です。
相続税は基本的に自己申告のため脱税が容易にできてしまいますが、言うまでもなく脱税は犯罪です。意図的でなくても、うっかり申告し忘れたり、誤った金額を申告してしまったりと「知らないうちに脱税をしていた」というケースもあるようです。
相続税は、被相続人の死亡が分かった日の翌日から10ヵ月以内に申告しなければなりません。申告期限を過ぎてしまっても、すぐに脱税となるわけではありませんが、場合によっては相続税の15%が加算される「過少申告課税」と年利の約3%が加算される「延滞税」のペナルティが課せられることがあります。
また、意図的に財産を隠蔽し、相続税を申告しなかった場合や、意識的に実際の相続税額よりも少なく申告した場合は、本来の相続税にさらに35%~40%が加算される「重加算税」が科せられます。さらに悪質な脱税と見なされた場合は、刑事訴追される可能性も出てきますので注意しましょう。
相続税を正しく申告するには、相続税額の基礎となる「土地評価」を理解する必要があります。土地評価額を算出する方法には「路線価方式」「倍率方式」の2種類があります。
路線価方式は、評価したい土地が道路に面している際に用いる土地評価額の算出方法です。路線価とは全国の道路の価格のことで、毎年7月1日に国税局や税務署から公表され、国税庁のホームページに掲載されている「路線価図」で確認できます。[注1]
路線価方式の計算式は以下の通りです。
「奥行価格補整率」とは宅地の奥行距離に応じた補整率のことで、国税庁のホームページで確認できます。[注2]
倍率方式は、郊外など路線価が公表されていない土地の評価額を求める際に使用します。
倍率方式の計算式は以下の通りです。
「固定資産税評価額」は各市町村で定められた資産の評価額のことです。固定資産税の納税通知書に同封されている、固定資産税の課税明細書で確認できます。また、「評価倍率」は、国税庁のホームページに掲載されている「評価倍率表」で確認できます。[注1]
[注1]国税庁・路線価図・評価倍率表(http://www.rosenka.nta.go.jp/)
[注2]国税庁・路線価図・評価倍率表「評価明細書・調整率表の説明」(http://www.rosenka.nta.go.jp/docs/meisai_frm.html)
現金やモノなどと違い、不動産は一つの塊です。そのため、相続人が一人ならば簡単なのですが複数人いる場合は、複雑化することもあり、これがもめる理由となる傾向にあります。
例えば、一つの不動産に対して2人の相続人がいる場合。
一人は現物分割として、その不動産を取得した場合、もう一人の相続人は何もないため不公平になります。そのため、不動産を取得した相続人がもう一方の相続人に代償金を支払うことで、公平を保つという方法がありますが(代償分割)、この方法は取得した相続人の支払い能力が高くなければなかなか実行できません。
また代償分割が困難で、不動産を売却して現金で分ける方法もありますが、売却してしまうと不動産が残りません。協議では「売却」と「反対」といった意見の対立が生まれてしまい、結果として相続者間でもめることにつながってしまいます。
もう一つもめる理由としては、不動産の評価方法が4種類もあるということ。なかでも、その評価の一つとして「時価」があるのですが、明確な価格が付けずらいというのが難解なところです。
例えば、同じ土地でも業者によってはその査定額が異なり、数百万円単位で異なることも往々にしてあります。つまりそれを利用して、代償金を支払う側は安い方の査定金額を主張し、代償金を受ける側は当然ながら、高い金額を主張するでしょう。
また、通常は相続税の計算をする際に使う「相続税路線価」という計算方法がありますが、不動産相続の評価方法でも用いられることもあります。しかし、こちらの計算式を使用すると時価よりも安い査定額になってしまうため、上記のように代償金を支払う側にとっては好都合になることも。
これらのように、不動産の評価方法や査定額の違いがら相続者間でもめる理由となるのです。もめないためにも、相続手続きは専門の知識のある弁護士に依頼することが望ましいです。
以上のように、土地評価は相続税額を正しく算出するために非常に重要です。しかし、土地評価額を求める際に計算方法などを間違えてしまうと、誤った評価を申告することになり、脱税につながりかねません。
このようなミスを防止するためにも、不動産などの資産相続は弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。相続の手続きは非常に時間がかかるもの。何かトラブルが発生して相続がうまく進まず、いつの間にか相続税の申告期限が迫っていたというケースもあり得ます。スムーズに相続を進めるためにも、弁護士への依頼も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
マンションや一戸建てなどの一般的な住宅ではなく、文化財建造物を相続することになった、という方もいるでしょう。
近年、文化財建造物の数は増加傾向にあるといいますから、決して他人ごとではないかもしれません。
そこでここでは、文化財建造物を相続した場合の評価と対策についてご紹介します。
文化財建造物とは、文部科学省や地方自治体の定める条例などにより指定を受けている建物のことを指します。
文化財建造物には以下の3つがあります。
文化財保護法に基づき、日本における歴史的、芸術的、学術的価値の高いもののうち、文部科学大臣から指定を受けた建造物のことを指します。
平成8年10月に施行された文化財登録制度により、文化財登録原簿に登録された建造物を指します。
文化財保護法上の文化財の一つであり、一般的に伝統地区に選定されている地域にある価値の高い建物が指定されています。
文化財建造物を相続した場合、相続税評価額はどのような計算になるのでしょうか?
上述の通り、文化財建造物には重要文化財、登録有形文化財、伝統的建造物の3種類がありますが、それらの家屋の建つ敷地の価額は、種類に応じて決められた割合を乗じて計算した金額を控除した金額による評価を受けることができます。
その割合は、国税庁による財産評価基本通達の「文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価」によって以下のように定められています。
重要文化財 | 0.7 |
---|---|
登録有形文化財 | 0.3 |
伝統的建造物 | 0.3 |
文化財建造物の相続税評価額は、該当する建物が一般の建造物であったと仮定した評価額に、この割合を控除することで算出することが可能です。
一般の建造物と仮定した場合の評価額 | 2,000万円 |
---|---|
重要文化財の場合の評価額 | 2,000-2,000×0.7=600万円 |
登録有形文化財の場合の評価額 | 2,000-2,000×0.3=1,400万円 |
伝統的建造物の場合の評価額 | 2,000-2,000×0.3=1,400万円 |
文化財建造物そのものには相続税評価の控除が適用されていても、その敷地まで同じかというとそうではありません。もちろん、文化財建造物と同様に相続税評価の地域に該当する場合であれば、「文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価」によって定められている通りの控除割合が適用されます。
しかし、敷地が相続税評価の地域に該当しない場合、その敷地と同条件の近隣の敷地の固定資産税評価をもとにして評価額が算出されます。もとにして、というのは、その敷地と近隣の敷地の間には条件に差が生じているため、それを修正する必要があるということです。
これを計算するには固定資産税評価証明書が必要となり、取得には市区町村の役所に出向かなければなりません。この時、身分証明書や被相続人の戸籍謄本などを提出する必要があります。事前に用意しておくことで取得がスムーズになるでしょう。
いずれにしても、文化財建造物を相続する場合、相続税評価額の算出方法は非常に難解なものです。相続した不動産が文化財建造物だった時は、弁護士に相談するのが最も良い対策方法といえるでしょう。