不動産の相続税を左右する土地の形状と評価方法

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このページでは、不動産を相続する際の評価額に大きく影響する土地の形状の種類や利用価値が下がるケース、さらには評価方法などについて解説します。

間口が狭くて奥行きが長いと土地の評価額は下がる?

相続する不動産のなかに土地が含まれる場合、その土地の評価額を左右するのが土地の形状です。「路線価」という土地の評価額は、きれいな四角形をした土地を想定したものです。

現実的には、きれいな四角形をした土地の方が珍しく、三角形や台形、細長い土地をはじめ、いびつな形までさまざまな形状があります。

そのため、相続する土地の評価額を算出する際には、それぞれの土地に応じた補正率を乗じて、評価額を導き出すのです。

間口が狭い土地の評価方法

間口の狭い土地は、評価額が下がる形状です。間口とは、土地と道路が面している部分のこと。間口が狭い土地は住宅を建てる場合、間取りの選択肢を減少させるだけでなく、縦長に建てざるを得ないので重心が高くなり、外観にも影響します。さらに駐車スペースが十分にとれず、駐車しづらいといったことも起こるのです。

評価額を計算する際には「間口狭小補正」が用いられ、間口が狭いほど補正率は大きくなります。補正率は土地の用途によっても変更。

間口狭小補正が用いられるのは地区区分が普通住宅地であり、間口が8メートル以下の場合です。評価額を割り出す計算式は以下となります。

路線価 × 奥行価格補正率 × 間口狭小補正率 × 土地の面積

奥行きが長い土地の評価方法

奥行きが長い土地ですが、住宅を建てるには細長い家しか建てられないため、評価額が低くなりがち です。

奥行きが極端に長い土地の評価額を算出するときは「奥行長大補正率」が採用されます。補正率は奥行きの長さと、土地区分によって異なります。

土地区分とは、用途地域とも呼ばれ、ビル街地区、繁華街地区、普通住宅地区などがあります。土地によってどのような用途に使用できるかが決まっており、それに基づいた土地の分け方のことです。

では、奥行長大補正率により評価額を算出する計算式をご確認ください。

路線価 × 奥行価格補正率 × 奥行長大補正率 × 土地の面積

間口が狭く奥行きが長い土地の評価方法

間口が狭く、かつ奥行きも長い土地もあります。このような土地には、町家のような奥行きが長い家しか建てることができないため、評価額が下がります。

ただし立地が商業地の場合は、普通住宅地区に比べて評価が下がらないケースも。それは住宅として使用するのに比べ、店舗の場合、不都合が少ないことが理由です。

間口が狭くて奥行きの長い土地の評価額を算出する際は、「間口狭小補正率」と「奥行長大補正率」の両方を使用します。

路線価 × 奥行価格補正率 × 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 × 土地の面積

不整形な土地やがけ地なども評価額は下がる?

不整地やがけ地なども、先に紹介したきれいな四角形ではないため、評価額は下がる傾向にあります。具体的な評価方法は以下で解説します。

不整形地の評価方法

不整形な土地とは、きれいな四角形ではない形状の土地を指し「不整形地」といいます。きれいな四角形の土地と比較すると、一般的に住宅用には利用しにくいことから、評価額が下がりがちです。

評価方法は5つの手順で決められます。

1.整形地(きれいな四角形)としての路線価を調べます。路線価は誰でも自由に知ることができ、国税庁のホームページや税務署で分かります

2.地積区分を調べます。土地の立地と面積を用いて、国税庁が定めた表内のどこに該当するかを確認します

3.「かげ地割合」を以下の計算式で算出します

(想定整形地の面積―評価対象地の面積)÷ 想定整形地の地積

4.不整形補正率を、国税庁のホームページを見て、かげ地割合と地積区分および地区区分の組み合わせから該当箇所を探します

5.以下の計算式を用いて評価額を計算していきます。

1㎡あたりの路線価 × 不整形地補正率 × 地積

がけ地を含む土地の評価方法

土地の一部が斜面となっている「がけ地」を含む土地も、平坦な土地と比べると利用価値が下がるため評価が低くなりがちです。つまり、相続税の対象となる土地の評価額を下げることができるのです。

土地全体の面積に対するがけ地の割合が10%以上となると、土地の評価額を減額できます。計算方法を以下にご紹介します。

路線価×がけ地補正率×土地の面積

がけ地補正率はがけの状況によって異なります。またがけ地が土地のどの方位にあるのかでも補正率が異なるため、遺産相続に長けている弁護士や税理士などに相談することをおすすめします。

土地の利用価値が下がるケースとは?

住宅として住むのによいとはいえない、騒音が酷い、日当たりが悪いといった問題を抱える土地は「その利用価値が著しく低下している」と判断され、本来の評価額から約10%減額されることもあります。

住環境が悪い土地、用途制限のある土地

生活をするのに住みやすいといい難い、以下の土地は評価が下がります。

また用途に何かしらの制限が設けられている土地も評価が下がりがちです。しかし、住環境が良くない場合や用途制限がある場合でも、倍率方式で使用する倍率や路線価ですでにマイナス要素が反映されていると、評価減額の対象となりません。

土壌汚染されている土地

環境省などが定める有害物質などにより土壌が汚染されている土地も、人への健康被害をもたらす危険性から、評価減の対象となります。

ただし注意点として、相続税が課税される時期に、その土地が土壌汚染地であることが指定期間により明らかにされている場合に限ります。

地下に鉄道や高速道路が通っている土地

地下に鉄道や高速道路が通る土地には、「区分地上権」という空間部分の権利が設定されていることから、建設する住まいの高さや荷重に制限が課せられ、結果評価額が下がります。

制限される度合いによって減額の程度は変わる点にもご注意ください。

埋蔵文化財がある土地

埋蔵文化財がある土地も評価の減額対象となります。ただし、過去の調査や試掘調査などからその土地に確実に文化財があると判断されていることが条件です。この場合は、「必要な発掘調査費用相当額」の80%が路線価から減額されます。

住宅建設の工事範囲や建築制限などがあると、減額されなくなるので注意が必要です。土地の評価額は形状や用途、住環境、土壌汚染などさまざまな影響を受けて決定します。計算の方法も非常に煩雑なので、相続税で損をしないためにも弁護士に相談することをおすすめします。

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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