東京の「アパート」を相続する際の注意点

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このページでは、東京でアパートを相続する際の注意点についてまとめています。

地価の高い東京では相対的にアパートの評価額も高額となり、相続税の課税対象額も大きくなる傾向があります。税制や特例などをきちんと把握しておき、相続時にお金のことでトラブルにならないよう、事前に準備しておくようにしましょう。

アパート相続には多額の相続税課税が予測される

現在の日本における相続税は、相続した財産の総額から「3000万円+600万円×相続人」の控除額を差し引いた額に課税がされます。

1000万円以下であれば10パーセント、6億円を超える場合が最大税率となり、控除額7200万円を引いた額の55パーセントに課税をされます。これらは現金以外の相続にも課税されますが、納税自体は原則として現金で行うため、土地や建物などを多く相続した場合、相続税を支払うために土地などを売却しなければならない、というケースも往々にしてあります。

こと東京に関して言えば、アパートを相続するということになれば、ほとんどの場合で相続税の課税対象になるはずです。現金を用意できる方であれば問題ないかとは思いますが、もし当座の現金がなければ、相続した物件を売却するか、銀行から借り入れを行うかなどして対策をしなければなりません。

ただ、場合によっては相続する物件の評価額を見直すことで、相続税の支払いを大幅に減らすことができます。以下、そのための制度について紹介します。

小規模宅地等の特例

相続税の課税対象、そして課税額を決定する際、所有している不動産がいくら分の価値があるかを定める必要があります。

そこで活用できる制度として「小規模宅地等の特例」というもの。この制度は、亡くなった人やその人と生活を共にしている家族の居住用の土地、そして事業用の宅地について評価額を減額してもらえるというもので、被相続人の所有していた住宅だけでなく、賃貸事業として利用していたアパートについても、物件によってはこの制度が適用されることがあります。

なお、一棟まるごと貸しているケースだけでなく、一室のみを貸し出している、というケースでも適用されます。

「小規模宅地等の特例」に関しては、相続からさかのぼって3年以上貸付事業を行っていた宅地に限られます。

3年以内に貸し付け事業を始めたアパートに関しては、他の賃貸物件と併せて「5棟10室基準」と言われる事業的規模でない限り、貸付事業用宅地等から除外され、小規模宅地等の特例は適用されません。

また、住宅として利用していた土地や建物であれば、最大で80パーセントもの減額が適用されるのですが、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例が適用された場合、減額は50パーセントまでとなっています。

適用される面積の上限も200平方メートルとなっており、一般の事業用や居住用の土地でも適用を受けている場合には、それらの面積の上限に達していない部分についてのみしか適用されない、ということになっています。

「貸家建付地」による評価減

アパートについては、建物と土地のそれぞれに評価額がつきます。その際、すでに借り手がついている物件であれば、借家人の権利が考慮され、評価額から30パーセントの評価減があります。また、土地に関しても20パーセント前後の評価減が適用されます。

税制を知り、相続を準備する

東京においてアパートを相続するのであれば、非常に大きなお金が動くことを前もって把握しておく必要があります。その上で、前もって必要な現金を用意しておく、相続される財産の総額を知り、対策を立てる、といったことは決して怠ってはいけないでしょう。

相続の話はデリケートな問題ではありますが、何の準備もせずに相続に直面した場合、多額の支払いをしなければならないことになりかねません。準備段階で、被相続人や相続人同士で話し合いを行い、明確にできるところは明確にしておくべきです。

このページでは、古いアパートを相続した場合に考えられる注意点について、細かいポイントなどを含めてまとめています。アパートの相続を控えているのであれば、こちらの情報を参考に、事前の準備を進めておくことをおすすめします。

古いアパート相続で問題になるのは
「空室」と「修繕費」

アパートなどを引き継ぐ場合、すでに建築から年数が経っており、老朽化した物件を相続する、というケースは少なくありません。

アパートは収益物件として魅力的ではありますが、老朽化に伴う問題点を解決しなければ、逆に負担となってのしかかってくることもあるでしょう。その際に問題になるのが、「空室」と「修繕費」となります。

空室問題や修繕費問題はアパートについて回る問題であり、相続時だけではなく相続後も常に対策を講じなければなりません。古いアパートであればなおさら、この二つの問題に悩まされることになるので、相続をするかどうかも含めて検討を重ねる必要があるでしょう。

空室問題について

アパートは、入居者がいなければ家賃収入はありません。もしローンの返済が終わっているならば多少の空室があっても採算が取れるかもしれませんが、ローンが残っているのであれば赤字にならないよう運営をしていかなければならなくなりますし、そのためには入居者の確保が絶対条件となります。

古くても立地が良い、周辺環境が良いなど何らかの特徴があれば入居者に困ることはないかもしれませんが、そうでなければ、広告費などにも力を入れていく必要がありそうです。

修繕費問題について

古いアパートを運営していく上では、修理費・修繕費も非常に大きな問題となってきます。建物が古くなると外壁が色あせて見た目にも古ぼけてくる上、放置しておくと外壁がはがれて落下したり、雨がしみ込んで雨漏りがするなど、建物自体のトラブルが発生してきます。

それだけならいいのですが、建物の経年劣化を放置した結果、居住者、あるいは周囲の人々に何らかの損害を与えてしまえば、建物の所有者が損害賠償責任を負わなくてはならなくなるケースも考えられます。もちろん、古ぼけたアパートであれば人気も下がり、居住を希望する人も少なくなってくるでしょうし、それによって家賃を下げなくてはいけなくなるなど、悪循環に陥るケースも考えられます。また、設備面が古くなってきたということであれば、必然物件そのものの人気もかかるため、場合によっては大幅なリフォームなどをする必要も出てくるでしょう。

こうした問題は、アパートを引き継ぐ前にクリアしておいてもらえればいいのですが、喫緊の課題としてお金をかけなければいけないということもないため、つい先延ばしにしてしまっている内に相続をしなくてはいけなくなる、ということも非常に多くなっています。修繕費についてはアパートの経営計画に組み込んでおくと共に、引き継ぎ前にクリアできる課題はクリアしておくようにするといいでしょう。

老朽化したアパートを引き継いだ際の対応策

建築から長い年月がたち、老朽化したアパートを引き継ぐ際には、以下のような対応策が考えられます。

そのまま経営を続ける

アパート経営を継続した場合は、経年劣化に対する対策をしっかり考えておくべきでしょう。

アパート経営においては管理費や維持費だけでなく、一定の修繕費も未婚でプランニングしなければいけません。そこにどのくらい費用がかかるのか、入居者の確保はどうか、新規入居者はどのくらい見込めるのかなど、経営計画はしっかりと立てるべきです。

リノベーションする

アパートなどの賃貸物件には「賃貸寿命」という、残りの賃貸可能期間を示す目安があります。

ただ、寿命が残っているからといって設備の老朽化を放置しておくと、必然的に賃料は下がり、借り手もつきにくくなります。そこで有効な手段になるのが、リノベーション。内装から設備から大幅に入れ替えることで、建物は古くとも中はキレイで住みやすい、という物件にすることができ、賃貸寿命も延びるでしょう。

当然ながらある程度まとまった額の資金が必要になりますが、リノベーションに懸かる費用とリノベーション後の家賃収入を比較し、施工費用を回収した上で利益が出せる見込みがあるのであれば、有効な手段となるでしょう。

アパートを新築する

老朽化が進み、リノベーションをしても利益が見込めないということであれば、いっそのこと建物そのものを取り壊し、その土地の上で新たなアパートを建築する、というのも一つの手段です。

当然ながら多額の資金がかかるわけですが、その後数十年にわたって経営を続けていけますし、少なくとも新築直後であれば人気もあり、ある程度の借り手も確保できるでしょう。今後も長くアパート経営を続けていくのであれば、思い切った決断も必要になってくることがあるはずです。

売却する

今後アパートを運営していくつもりがない、あるいはこのままアパート経営を続けていても金銭面や労力の面で負担になるだけだというのであれば、いっそ思い切って売却する、という選択肢もあります。アパートを売却するケースでは、建物ごと収益物件として売却する方法と、建物を解体して更地で売却する方法があります。

また、入居者がいる建物をそのまま売却する「オーナーチェンジ」という方法もあります。その場合、買主は年間の純利益を期待利回りで割った「収益還元価格」を見て、それが見合う数字であるかを判断するのですが、一般的に収益還元価格は、土地相場価格よりも大幅に安くなるケースが大半です。

また、アパート自体の空室率が高い、あるいは家賃滞納者がいる、多額の修繕費がかかるといった場合、よほど好立地であるなどの特殊なケースでない限り、老朽化しているアパートには買い手がつきづらく、買い手がいたとしても安く買い叩かれてしまうことになるでしょう。

一方、建物を解体して売却する場合は、土地そのものの評価に値段がつくため、高く買ってもらえることがあります。ただ、入居者がいれば立ち退きの交渉が必要になりますし、取り壊しの費用もかかるため、その場合は数年単位で準備する必要があるでしょう。

老朽化アパートの相続については、前もって話し合いをしておきましょう

老朽化しているアパートは、意外に取り扱いに困るものです。したがって、急に相続するとなれば、さまざまなトラブルが生じることが考えられます。相続については、前もって話し合いをし、方針を定めておくようにしましょう。

東京のアパート相続事例

築40年のアパートを相続するケース

東京都世田谷区に住む80代の女性は、3年前に亡くなったご主人から築40年のアパートを相続していました。管理については管理会社に一任していたので細かい状況が分からないという中、金融機関から「1000万円をかけて大規模リフォームをした方がいい」という提案を受けます。

子どもたちに少しでもきれいな状態でアパートを相続したい、相続税が1億円以上かかる見込みのため、子どもたちが納税で困ることがないようにしたい、という考えから、アパートの今後について悩んでいました。

そこで、実際に相続される側にある子どもたちにヒアリングをしたところ、「今後空室が増えて家賃収入も減っていく見込みのアパートはあまりほしくない」「借金をしてまで修繕をすることにも賛同しかねる」「相続するなら現金か、現金化しやすい都心部のマンションなどがいい」といった希望が聞かれたことから、アパートを売却し、その資金で都心の高層分譲マンションを購入する、という形で進め、相続税も半分以下に圧縮できました。

相続の際は思い入れのある物件であったとしても、一方的な思いを押し通すのではなく、相続される側の意向もしっかりと聞いて方針を決めることが大切です。

サブリース契約で多額のローンが残ったアパートを相続

ある女性の父親は、大手不動産会社に「相続税対策」として勧められてアパートを建て、賃貸経営をしていました。なお、契約はサブリース契約となっており、空室はあるものの保証賃料は一定額振り込まれています。しかし女性としては、アパート経営については全く興味はなく、まだ多額のローンが残っているアパートを引き継ぐこと自体に否定的な考えを持っていました。

そこで契約を調べてみたところ、サブリース契約の中に連帯債務者としての契約がされており、父親の財産を相続放棄したとしてもアパートローンの債務を支払わなくてはいけないという内容になっていました。つまり相続放棄をした場合、アパートは失いますがローンだけが残ってしまうという最悪の事態になってしまうため、単純な相続放棄はできなくなっています。

そこで、まずはアパートを建てた不動産会社に連絡をし、相続が発生した場合には相続人のうちの一人に支払先を変更して、遺産分割が完了した段階で当該アパートを引き継ぐことが確定した相続人に変更する手続きがなされるという手続きをすることになりました。サブリース契約でローンが残っているようなアパートを相続する場合には、関連する不動産会社や銀行などとのやりとりを含め速やかに手続きをする必要があると言えます。

子どもにアパートの相続を断られた

70代のアパートオーナーが、自身の所有するアパート2棟について、相続税対策を考える必要性があると感じていました。

ただ、このアパートは入居率が3割ほどしかない状態で、借り入れの返済もあり、キャッシュフローがマイナスとなっていました。アパートなどの賃貸物件の場合、入居率が高いと土地と建物の評価額が下がるのですが、一方で空室が多いと評価が高くなり、必然的に相続税が高くなってしまいます。また、古いアパートということで修繕費がかかることも見込まれ、そうした事情を鑑みたお子さんからは、アパートの相続を断られてしまいました。

この場合、問題となるのが入居率です。物件に入居する人が多ければ安定した収益が見込めるようになり、さまざまな手間と差し引いてもメリットがあるということであれば、相続しない手はありません。

そこで、有効な手段になるのがリフォームです。リフォームをすることで現金という相続財産が減り、相続税対策になります。さらにリフォームでは建物の相続税評価額は変わらないため、相続税が増すことはありません。そして何より、リフォームをすれば物件の魅力が高まり、入居を希望する人も増えてきます。

リフォームをした結果、入居率も8割ほどまで上昇。キャッシュフローもプラスになったということで、アパートを生前贈与し、相続税の削減に成功しました。

対策の必要な不動産がからむ遺言書の作成

2人の子どもがいる方が、所有している財産の相続について検討していました。

財産は自宅と預貯金、そして賃貸アパートで、賃貸アパートは長男に任せる意向があり、すでにアパートの運営についてはある程度任せていたそうです。そして、万が一のことを考えて前もって遺言状を作成しようと考えました。

専門業者に財産業者の確認を依頼したところ、所有している不動産の評価が高く、相続の際には相続税申告が必要な状況でした。そして財産全体に対する賃貸アパートの割合も多く、もし遺言書を残したとしても、すべての賃貸アパートを長男に相続させるとなった場合にはその他の相続人の相続分が少なくなり、法定相続分の1/2に該当する「遺留分」を侵害してしまうことが分かりました。

そこで、優先順位の低い不動産を売却して現金化してもらい、相続税対策を進めてもらうと共に遺言状を作成し、残された遺族全員が納得できる遺言状を作成してもらいました。

不動産も、所有している物件の価値によっては相続の前に対策をとっておく必要があります。まずは自身の不動産にどのくらいの価値があるのかを明確にしておくといいでしょう。

規模の大きな不動産が絡んでいる相続税の申告

父親の亡くなった方が父親の財産を相続することになりましたが、父親は自宅の他にアパートや駐車場の経営をしており、相続人である母親や兄弟とどのように相続すればいいか、相続税はどのくらいかかるのかといったことが分からず、困っていました。

専門業者に相談して調査をしてもらったところ、不動産だけでも相当な資産価値があり、相続税の申告が必要になることが分かりました。 一方で現金・預金も想定より多くあることが分かり、現金と不動産などをどのように分けるかが問題となりました。

そこで、不動産鑑定額の評価現を図ることで相続財産を圧縮し、結果として相続税自体も大きく節税することができました。

こうした仕事は専門家ならではのものとなりますので、困ったときはまず専門家に相談をしてみるようにしましょう。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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