不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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このページでは、不動産相続の共有名義について、仕組みやメリット・デメリット、効果的な解決策などをまとめて解説しています。
例えば、親が亡くなって複数の子供が相続人として存在するような場合、相続不動産の取り扱いについて相続人同士で協議した結果、子供のうちの誰か1人に限定(単独名義)せず、兄弟姉妹で一緒に不動産を所有(共有名義)するといった選択肢もあります。
また、不動産購入時に他の家族や親族から資金援助を受けていたような場合、不動産を相続してからも相続人だけの名義にせず、複数人で共有することもあるでしょう。
その他、そもそも共有名義の不動産を相続するといったケースも考えられます。
単独名義の場合、相続不動産について1人の相続人が全てを所有していることになりますが、共有名義の場合はそれぞれの持ち分に応じて不動産の所有権があります。そのため、登記上も共有名義ではそれぞれの名義人について持分割合が登記されていなければなりません。
ただし持分割合は必ずしも使用割合に影響しないため、例えば家の持分割合が50%だからといって、家の半分しか使えないといったことはありません。
単独名義であれば、所有者の意思で不動産の取り扱いを決定できますが、共有名義の場合は目的や内容に応じて、必要数を超える共有者の同意を得なければならないと定められています。
例えば、共有不動産に暮らしている人が家を掃除したりメンテナンスを行ったりと、「保存」を目的として行動する場合、他の共有者の同意を得る必要はありません。ただし、家の修繕を行う時に、それがメンテナンスでなく改良として認められるような時は、「保存」でなく「管理」として扱われ、共有者の同意が必要なこともあります。
不動産の修繕に伴う改良や改装など、保存を超えた「管理」として考えられる場合、それを行うためには「持分価格の過半数」の同意を共有者から集めなければなりません。
ここでポイントになるのは、共有者の過半数でなく、あくまでも持分価格の過半数であるため、例えば夫(故人)の家に母と同居の長男1人が継続して暮らし、遠方に共有者として他の兄弟2人がいるような場合、法定相続分による分配が行われていれば、母と長男は他の兄弟の同意を待たずに家を改良が可能です。
家の取り壊しや売却など、管理の範囲を超えた影響を共有不動産へもたらす場合、共有者全員の同意が必要になります。ただし、自宅の改築や改装など、管理と変更の線引きが難しいケースも多く、厳密にどこからどこまでが管理で、または変更なのかと完全に決めることはできません。
そのため、共有不動産の取り扱いについて、相続人の1人が「管理」のつもりだったとしても、他の共有者から「変更」だと言われれば、双方の意見と実際の状況を鑑みて適正な解決策を考えることが必要です。
特定の誰かが相続するのでなく、相続人の全員が共有者として不動産を相続することで、公平感を期待することができます。また、大切な親の家を自分も相続しているといった、個々の満足感を得られることもメリットです。
例えば共働きの夫婦や家族がそれぞれ働いて収入を得ているような場合、住宅ローンのある不動産であれば、共有者の持分割合に応じて住宅ローン控除を受けることが可能です。そのため夫婦2人の共有名義にすることで、住宅ローン控除を二重で受けて節税効果を期待できます。
不動産売却時の税制上の優遇措置も重ねられる
例えば母と息子がマイホームとして父親から不動産を相続し、共有名義とした上で不動産の売却を行った場合、譲渡所得(売却利益)に対して適応される特別控除3,000万円も母と息子のそれぞれが利用することができます。
また、譲渡所得も持分割合に応じて分割されているため、場合によっては不動産売却時の所得税や地方税をゼロにできるかも知れません。
土地を誰かに貸したり、不動産を売却したりと、「保存」を超えた取り扱いを希望する場合、実際に家で暮らしている人だけでなく他の共有者からの同意を得る必要が生じます。
そのため、もしも共有者との関係がこじれた場合、家を売りたくても売れない、家を改装したくてもできずに生活環境が悪化する、などのリスクが生じます。
また、そのようなリスクが原因となって、さらに相続人同士の関係性が悪化するといった悪循環もあるでしょう。
それぞれの共有者ごとに持分割合が定められるため、権利関係や利益配分などが複雑化します。そのため、家を売却する時や第三者へ土地を貸す時など、利益が生じる場合はそのたびに持分割合に応じた計算や、各共有者へ配分するための手間と費用がかかります。
共有名義では、その中の誰か1人でも亡くなったり持分割合が変わったりするたびに、登記の変更を行わなければなりません。当然ながら、登記の変更には費用や手間がかかります。
共有名義によって問題が生じた場合、素人だけで速やかに解決することは困難です。そのため、例えば不動産を売りたい場合、どうしても共有者からの同意を得られなければ、持分割合とは別に現金を渡して同意を得るといったケースも少なくありません。
しかし、そのような行為が他の共有者に知られれば、また新たな問題を生むきっかけにもなるため、根本的な解決に至ることもないでしょう。
一見すると公平感があり、遺産問題でもめなくて済みそうな共有名義ですが、実際には将来へリスクや負担を先延ばしにするという側面もあります。
そこで、不動産を相続した場合は最初から弁護士など経験豊富な専門家へ相談し、将来的なリスクや法的な最善策を考慮した上で、適切な解決方法を提案してもらうことが、結果的に相続人全員の利益を守ることにつながることもあります。
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