不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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不動産や預貯金などの遺産を相続するとなった場合、そもそも遺産としてどのような対象物があり、誰にどれだけ相続する権利が発生するのか、きちんと確認する遺産調査や相続人調査が重要になります。
このページでは、特に「相続対象となる財産」について確認する遺産調査を詳しく解説していますので、遺産相続時のトラブルを事前に防ぐという意味でもぜひ参考にしてみてください。
遺産調査とは、相続権を有する人が何を相続できるのか、相続対象となる財産について実態を確認する作業全般を指します。遺産調査としては大きく以下の2段階に分けて考える必要があるでしょう。
相続財産としてどのようなものが存在しているのか、最初にきちんと確認しておかなければ、本来は受け取れるはずの不動産や預貯金を受け取れないままになってしまったり、あるいは後から借金などの負債が発覚して思わぬ不利益を被ったりという可能性が生じます。
まず注意しておくべきこととして、相続財産(遺産)となるものは土地や物件といった不動産や預貯金、有価証券などプラスの資産価値が認められるものだけではありません。
ローンの残債や借金など、被相続人が支払わなければならなかった債務や負債もまたマイナスの財産として相続対象となります。
そのため、遺産調査ではあらゆる相続財産について有無の調査を行うことが不可欠です。
具体的に相続対象となる財産が確認できたら、続いてそれぞれにどのような価値が認められるのか、公正かつ適正に評価してもらうことが必要になります。
相続財産の評価に問題があれば、後に税務署の調査で相続税の不足を指摘され、修正申告や延滞金の加算といった不利益につながるリスクが増大します。
相続財産として価値を見出されるものとしては、様々なものが挙げられます。
遺産調査では、相続財産としてプラスであれマイナスであれ、何かしらの価値が認められるもの全てについて把握しなければならないため、可能であれば日頃から財産の内容について確認しておく習慣を持つことも大切です。
動産として最も分かりやすいものが、自宅の金庫や金融機関の口座にあるような現金です。
一方、自動車や船舶、貴金属といったものについては、実際に現金化するとどの程度の価値になるのか評価してもらわなければなりません。
例えば自動車の評価をする場合、中古自動車市場の相場などから該当する年式や車種を手がかりとして、平均値を算出するといった方法もありますが、実際にどの程度の金額になるのか分かりにくい場合は弁護士や司法書士などの専門家へ相談することが無難でしょう。宝石や貴金属についても同様です。
また、注意すべきは書画や骨董品などの芸術品・美術品です。
芸術品の価値は基本的に時価で換算されますが、例えば故人がアートの収集家であった場合、思いがけず高額な査定になるかも知れません。そしてその場合、相続税を支払おうにも手元の現金が足りないといった問題まであり得ます。
不動産としては、故人が所有していた住宅や事業用物件、山や田畑といったものを含む土地全般が一般的ですが、そこへさらに賃借権や地上権といったものも含まれることがポイントです。
不動産の評価方法としては、固定資産税の額から価値を逆算したり、路線価方式や倍率方式で算出したり、または実際の取引相場価格や不動産鑑定士による査定額を参照するといったものが挙げられます。重要なポイントは、その算出方法が公正かつ的確かどうかであり、不安があれば専門家へ相談することが重要です。
株式や小切手、手形などの有価証券も立派な相続財産です。また、信託財産や保険金といった金融商品、その他にもゴルフ会員権や電話加入権などの権利関係も相続財産として考えられます。
近年は故人が生前に仮想通貨を購入していたケースもありますが、これらも同様に相続財産の対象となります。
金融機関からの借入金やクレジットカードの未払い金、住宅ローンや自動車ローンなどの残債、個人間の借金や飲食店へのツケといったものまで、支払うべき義務が残っているものは全てマイナスの財産として考えなければなりません。
動産や不動産などプラスの相続財産を、相続割合に応じて分配するように、マイナスの財産となる債務も相続人で分配します。そのため、どれくらいの金額を、誰に対して、いつまでに返済しなければならないのか、詳細を確認することが必須です。
なお、マイナスの財産が大きく、プラスの財産の価値を完全に上回ると判断された場合、相続を放棄するといった選択もあるでしょう。
相続財産の有無に関する調査は個人でも行えますが、相続財産の調査に不備があった場合、後々に問題となり得ます。そのため、一般的には弁護士や司法書士、行政書士など専門知識と資格を有するプロへ依頼することが少なくないでしょう。また、相続税の問題も合わせて考えるのであれば税理士へ相談することもあります。
ただし、遺産調査では当事者である相続人の協力が重要になるため、遺産調査を依頼された専門家へ全ての相続人が協力するよう意識共有しておくことは大切です。
例えば預貯金について調査する場合、まずは利用していた金融機関の特定が必要です。
金融機関の確認には被相続人が使っていたキャッシュカードや金融機関から送られてきた書類、契約書などを見ることが最も簡単ですが、時には全ての金融機関を相続人が把握していないケースもあります。
そのため、例えば弁護士などへ依頼して、各金融機関へ被相続人の口座の有無を照会するといった作業が必要になるかも知れません。
その他、自動車や船舶、宝飾品や美術品といったプロの査定が必要になるものについては、専門家へ相談してそれぞれ適正な評価をしてもらうことが大切です。
不動産を調査する手段としては、手元にある「登記識別情報(登記済権利書)」や「固定資産税の課税通知書」を確認することが簡単です。
とはいえ、それらの書類がなくとも、固定資産税の支払先である自治体などへ申請すれば所有している不動産について確認することができます。
ただし、各自治体で確認できる不動産は、その該当エリア内に存在するものだけであり、例えば自宅近辺とは別の場所に不動産を所有しているような場合はそれぞれの地域を管轄する市町村役場へ申請しなければなりません。その他、不動産の所在地が確定していれば、法務局のデータベースで登記情報を確認するといった方法もあります。
なお、非課税とされている不動産を所有しているような場合、固定資産税の課税通知書などで確認することができないため、調査が困難になることもあります。
預貯金の調査時と同様に、関連書類がないかどうか確認して、あるいは取引先が判明しているのであればそれぞれの会社へ取引残高報告書を発行してもらうことも可能です。
また、近年は株式もデジタル化されていますが、例えば自宅から古い株券などが出てきたような場合、株主としての権利が現在も有効である可能性があります。そのため、そのような株券や証券が発券された場合は、該当する会社へ問い合わせて確認してください。
なお、ゴルフの会員権などの場合、被相続人の死亡と同時に権利が消失するといった規約が設けられていることもあり、分かりにくければ弁護士などへ相談するようにしましょう。
遺産調査で重要になるのは、マイナスの財産の調査です。
マイナスの財産の調査法としては、ローン会社などからの通知書を参照したり、信用情報機関に対して情報開示を申請したりといったものが挙げられます。また、相続人が家族に黙って過去に借金や債務整理をしていないかどうか確認することも欠かせません。
なお、個人間の借金については借用書の有無などが重要になりますが、トラブルに発展しそうであれば迷わず弁護士などへ依頼することも大切です。
多少のマイナスの財産があっても、プラスの財産がそれを上回る場合、単純承認としてそのまま相続することが一般的です。
一方、明らかにマイナスの財産の方が大きければ、一切の相続権を放棄するといったこともあります。ただし、相続放棄には「相続権を把握した時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申請する」という時間的制限があるため、注意してください。
遺産調査の途中で相続財産の実態把握ができていない場合、ひとまず財産を相続した上で、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を消化するといった「限定承認」を選択することも可能です。ただし、限定承認は手続きが複雑なため、一般的には専門家への相談が不可欠となるでしょう。
対象物が何であれ、遺産調査は相続の実態を把握するために重要です。
仮に、プラスの財産しかない場合でも、遺産調査の不備があれば受け取れる財産が減ったり、相続税の申告漏れを指摘されて延滞税や加算税などが発生したりといったデメリットがあります。
また、借金問題を放置すれば、場合によっては自己破産や訴訟問題へ発展するリスクもあります。
遺産調査を専門家へ依頼する場合、弁護士や行政書士、司法書士といった士業へ相談することが一般的です。また、相続税の問題が複雑になりそうであれば税理士へ相談することも有効です。
ただし、それぞれの専門家で活躍できる範囲が法的に定められています。そのため、遺産分割や相続問題に発展しそうな場合は、全ての範囲をカバーできる弁護士へ任せることが望ましいでしょう。
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