売却が必要になるケースも…。東京の不動産相続

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このページでは、東京での不動産相続において直面しがちな問題点について取り上げ、その概要や対応策などについて解説します。

東京での不動産相続にて、気を付けるべき落とし穴

親(被相続人)が亡くなり、親名義の不動産を相続することになった。どうするかは、それこそケースバイケースでしょう。そのまま相続する場合もあれば、相続人同士で誰が受け継ぐのか揉め、不本意ながら売却してその代金を均等分けすることになることも考えられます。

東京の地価の高さにより、相続税が発生するケースも…

他の地域と比べ、東京では、相続人同士が揉めたわけではなく、また不動産の相続を望んでいるのに、泣く泣く相続不動産を手放すことになってしまうというケースがあります。なぜそうなってしまうのか…理由はすばり、東京の地価の高さと、相続税の問題です。

より詳しく見ていきましょう。そもそも相続税の金額は、「正味の遺産額」により決定されます。不動産や現金、有価証券といった資産から、借入金や未払金といった債務額を差し引いた金額を意味し、算出された金額を基に、相続税が計算されるのです。

相続不動産の税金について詳しく見る>>

相続税の基準になる路線価とは

「路線価」とは、道路に面している標準的な宅地の1平方メートルあたりの評価額を指します。

固定資産税や不動産所得税の基準となる「固定資産税路線価」と、贈与税や相続税の基準となる「相続税路線価」の大きく2つに分かれているのが特徴。単純に、「路線価」といった表記の場合は、相続税路線価の事を示していると考えるのが一般的です。

土地の評価額によって算出されるため、その額は地域によって大きく異なってきます。毎年7月に国税庁から公表されるので確認してみてください。国税庁のホームページから調べられます。

日本一路線価が高いのはやはり東京

日本国内で最も路線価が高いのは東京都。地域で見ると「銀座・鳩居堂前」の銀座一等地が最も高値になっています。その額はなんと1平方メートルあたり4,432万円。

路線価は土地の評価額から算出されるため、日本全体の景気やその地域の発展・衰退状況によって左右されます。税金を算出するための基準値なので必ずしも土地売買価格と同じにはなりませんが、金額が上下するタイミングは同じ。景気が良くなれば、日本全体の地価が値上がりし、それに伴い路線価も高騰。逆に景気が悪くなれば同じような流れで値が下がってしまいます。

また、大きな商業施設が建設されたり、住宅地として開拓されたりと、地域の活性化が進むと急激に路線価が上昇することも考えられるのです。

東京は日本の中心都市として日々多くの人が行き交い、新しい話題のスポットが続々誕生している地域。土地の価値が高い分、路線価も日本一という結果になりました。

遺産分割で不動産をどう評価するのか?

相続財産に不動産が含まれていた場合、その相続不動産の評価を行ったうえで、相続分に応じて公平に分配する必要があります。不動産は同じものがないので、一定の基準で評価するのは簡単ではありません。「不動産鑑定士」の資格を持った人のみが、遺産分割時に評価の鑑定をできることになっています。

ただし、特別受益や寄与分については相続開始時を基準として算定して具体的相続分を定めて、これを前提として遺産分割時を基準として現実の分割を行うというのが実務上多い取扱いです。不動産の相続の際には、その価値について争いになることも多くあります。適切な分割を希望する際は、紛争とならない場合でも不動産鑑定士へ相談するのがおすすめです。

相続不動産の評価の手順

遺産分割協議における相続不動産の価格については、遺産の客観的価値のみならず、各相続人の諸事情などを踏まえ、相続人全員で協議した上での主観的価値をも考慮して評価を行うことも許されます。しかし、後日に紛争とならないよう、分割合意の前提として遺産の客観的価値を明らかにすることは重要と言えます。

不動産の正式な鑑定においては、以下の3方式を併用することによって、不動産の適正な価格を算定することが可能になるといわれています。

相続税の算出方法

土地を相続した際にかかってくる相続税は、下記の計算式にて算出されます。

※補正率とは、一方のみが路線に接する宅地の奥行距離に応じて定められる「奥行価格補正率」など、接する道路の状況や土地の形状などによって、路線価を補正する役割を果たします。例えば奥行きが短すぎたり長すぎたりする場合は利用価値が下がることで土地の評価額が下がり、2方向が道路に接していると利用価値が上がることで土地の評価額が上がります。

このように土地の評価額・相続税率・基礎控除額などによって相続税が計算できるので、自分で相続税を計算したい人は覚えておきましょう。

相続税の基礎控除額

相続税には「基礎控除額」という、税金が免除される範囲が定められています。その計算式は次の通り。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、相続人が長男1人なら3,600万円、兄弟2人なら4,200万円、配偶者と子供2人なら4,800万円が相続税の算定にあたり、控除されます。つまり、正味の遺産額が基礎控除額以下であれば、事実上、相続税は課税されないのです。

しかし、ご存知の通り、東京の場合は、土地の評価額が、他の地域と比べて高額です。住宅地の1㎡当たりの平均地価は、23区で約57万円。千代田区では約261万円という別格の数字となっており、港区でも約178万円、中央区は約119万円、渋谷区は114万円です。つまり、東京の不動産相続は、前述した基礎控除額を上回ってしまう場合が多く、予想以上に相続税が高額となることから、泣く泣く相続不動産を手放さざるを得ないということが起こりやすいのです。

それゆえに、東京の不動産の相続は、法定相続人による遺産分割協議も、相続税額を考慮に入れて行わなければなりません。

相続税が高額となってしまうという場合、その金額を支払ってまで相続するのか否か。1人の相続人の所有とする場合、他の相続人には何を分配するのか。あるいは、不動産の相続は諦め、売却益を均等割するのか。こうした話し合いが長引き売却が遅れると、売値が下がってしまうことにもなりかねません。

土地の相続税を節税する方法

土地の評価額が下がると相続税率も下がるため、納税する相続税額が少なくなります。相続税の節税方法とはこの仕組みを利用したものです。

土地の形状や所在地は到底変えることはできません。そこでおすすめなのが賃貸アパートの建設です。

路線価は土地の利用方法によっても評価が異なり、自用地(自宅所有者が自由に使える土地)と貸宅地(賃貸用家屋が建っている土地)では貸宅地のほうが評価額が低め。アパート建設などにより、更地の場合よりも2~3割ほど評価額の引き下げを図ることができ、節税対策として有効といえます。

配偶者控除の落とし穴に注意

また、「配偶者控除」という、配偶者の相続する財産が1億6,000万円までなら相続税が課税されないという制度もあります。その制度とは、相続税の計算をする際、配偶者が取得する遺産の課税価格が、法定相続分又は1億6,000万円のいずれか多い額までは配偶者には相続税はかからないというものです。

相続する財産が多い場合は、被相続人の配偶者の相続分を多くして、相続税の負担を減らすという方法が考えられます。例えば、法定相続人が被相続人の配偶者と子供である場合に、配偶者が100%相続して、子供はその時点では相続放棄をするというケースです。しかし、そこで子供が相続放棄してしまうと、せっかくの基礎控除額が低額となります。

忘れてはいけないのが、子のいる夫婦の一方が亡くなり相続がなされた(一次相続)後、さらにその配偶者が亡くなった後のことです。夫婦のお二人ともが亡くなった時に、一次相続の対象となった遺産は子供が引き継ぐことになります(二次相続)。その場合、法定相続人の数も減り、一時相続で相続した配偶者固有の遺産も(借金などがない限り)加算されるわけですから、子供の相続税の負担が大きくなるリスクが高まります。配偶者控除を踏まえた遺産分割を行うか否か、見極めが必要になってきます。

こうした場合においても、早めに信頼できる弁護士に相談し、適切な方法をアドバイスを受けることが賢明です。

不動産の相続、弁護士に依頼すべき理由について詳しく見る>>

東京の不動産をトラブル無く相続する方法

東京の不動産を家族間のトラブルを回避して相続する代表的な方法は、以下の通りです。

遺言書を準備しておく

被相続人が亡くなった際に遺言を残していれば、そこに記された内容が優先され、それに準じた相続が行われます。遺言に相続の対象となる不動産の処分の方法が明記されていれば、家族間の揉め事の原因となる遺産分割の手続きは不要です。一例をあげると、父親が死亡した際に「不動産はすべて妻に相続させる」旨を記した遺言が残っていれば、被相続人間で遺産分割協議を行う必要はありません。

ただし遺言書の書式や作成方法が、定められた条件を満たしていない場合、効力の無い書面となってしまうため、被相続人となる人物が生前に遺言を作成する際には、注意が必要です。

早い段階で専門家に相談しておく

相続税が発生する不動産の相続が想定されるのであれば、早い段階から法定相続人間で話し合っておく準備が大切です。ただし相続人が遠方に住んでいる場合は十分な意思疎通が取りづらく、また未成年者や認知症の人が相続人に含まれている場合には、正式に遺産分割を行う際には、家庭裁判所に特別代理人や青年後見人を申し立てねばなりません。

相続問題に強い弁護士の無料相談の利用を通じ、家族間で想定されるトラブルや注意点に関する正しい知識を共有し、定められた期限内に完了しなければならない不動産相続を、よりスムーズに進められる下準備を整えておきましょう。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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