東京の「借地権」を相続する際の注意点

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このページでは、東京で「借地権」を相続する際の注意点を解説しています。

借地権とは借地を使用する権利のことですが、これを両親や親族などから相続する場合、東京では相続税を決める土地評価額や借地権割合が高くなる可能性があるなど、注意しておくべき点があります。

以下の項目ではそうした注意点について要点を絞って説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

東京で借地権の相続税は高くなる可能性がある

東京で借地権を相続する際の注意点の一つは、相続税が高くなる可能性があることです。なぜなら、借地権の相続税評価額は、対象の「土地評価額」と「借地権割合」によって決定するのですが、その土地評価額と借地権割合が東京の場合、いずれも高い傾向にあるからです。

借地権の相続税評価額=土地の評価額×借地権割合

上の計算式で評価額が決まるのですから、土地評価額と借地権割合はとても重要になります。では、なぜ東京の土地評価額と借地権割合は高いのか、その点を順番に説明しましょう。

都内の路線価は6年連続上昇

土地の評価額には、取引価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額など複数の種類がありますが、このうち相続税を計算するときは、原則として路線価が採用されています。ということは、対象の土地の路線価が低ければ借地権の相続税評価も低くなり、反対に路線価が高ければ相続税も高くなるということです。

では東京の場合、路線価はどうなっているかというと、2019年7月1日に国税庁より発表された路線価では、東京都内の路線価は6年連続で上昇しました。前年比では4.9%の上昇であり、この上昇率は2019年分では1位の沖縄に次ぐものとなっています。特に東京23区は2019年時点で下がる見込みが少ないとのこと。

東京の路線価が全体的に高いのは、人口が一極集中していることや、インフラ、商業地の発達など生活の利便性が高いエリアが多いこと、土地の売買が活発に行われていることなど複数の要因がありますが、総合的に説明すると、土地の供給より需要が上回っていることです。土地だけに限りませんが、需要(買いたい)が供給(売りたい)を上回れば、価格は自然に上昇していきます。

いずれにしても東京都の路線価は高い傾向にあり、借地権の相続税評価額を押し上げる可能性が高いため、注意が必要です。借地権の相続については安易に決定せず、相続税計算の前提となる路線価と次に紹介する借地権割合をよく調べた上で、可否を検討すべきでしょう。

借地権割合も東京は高い傾向

借地権割合とは、ある借地(貸主にとっては貸地)において、借主が権利を主張できる割合のことです。例えば、借地権割合が50%だったとすれば、借主はその土地において50%の権利を主張できると同時に、その土地の借地権の相続税評価額は、その土地の価格に50%を掛けたものになります。

上記の説明でお分かりだと思いますが、借地権割合の高い土地の借地権を相続した場合、相続税が高くなる可能性があります。逆に借地権割合が低ければ、相続税も低くなる可能性があります。この借地権割合は地域によって異なりますが、東京の場合はどうでしょうか?ここがポイントです。

結論からいって、東京の借地権割合は比較的に高いです。商業地や繁華街などは80~90%程度であり、住宅地でさえ60%~70%が相場になっています。つまり、東京では貸主より借主の借地権割合の方が多いということです。全国では大体の地域で30%程度が相場なので、東京の借地権割合がいかに高いかが分かるでしょう。

東京で借地権割合が高いのは、東京で路線価が高い理由と同じです。すなわち、商業地の発達したエリアが多く、土地への需要が高い、生活利便性の良さなど、全体的に土地の利用価値が高い場所が多いからです。一般的に、地価が高いと借地権割合も高くなると言われていますが、東京の状況はその好例といえるでしょう。

このように東京の借地権割合は高い傾向にあるので、借地権を相続する際は、路線価と共に注意して見ておかなければなりません。

借地権の相続における一般的な注意点

上記では東京での借地権の相続で問題になる点をフォーカスしましたが、ここからは、借地権相続の一般的な注意点をお伝えします。複数の項目にわたりますが、ぜひ全てに目を通しておいてください。

借地権には種類がある

一口に借地権といっても、複数の種類があることを知らなければなりません。なぜなら、借地権の種類によって、契約期間や用途が異なるからです。まず、借地権の種類には以下の5つがあります。

普通借地権は、あらかじめ契約期限を決めて契約し、更新することで土地を借り続けることができる借地権のことです。更新のない定期借地権に対して、更新できることが普通借地権の特徴になります。借地権の存続期間は当初30年、1回目は20年、以降は10年です。土地の所有権が第三者に移った場合、借地権者は新たな所有権者に借地権を主張することができます。

定期借地権は普通借地権と対照的で、契約期間を50年以上と定めた上で、それ以降は更新ができない借地権のことです。土地は住宅用として賃借契約が行われ、契約終了後は、更地にして地主へ返還されます。

事業用定期借地権は、定期借地権の一種ですが、店舗や商業施設など事業用の建物を所有することを目的とする借地権です。契約期間は10年以上、50年未満。契約終了後は、土地を更地にして地主へ返還されます。

建物譲渡特約付借地権も定期借地権の一種で、契約期間を30年以上に定め、満了したら借地人の建物を地主が買い取ることで権利が消滅する借地権です。建物の買取に関しては、事前に約束を交わして契約します。

最後に一時使用目的の借地権は、建築現場の仮設事務所や臨時設備など、一時使用目的で土地を使用できる借地権です。契約期間は最低限の期間が保障されますが、更新はできません。

相続するための特別な手続きは必要なし

借地権を相続するため、何らかの手続きが必要ではないかと考える人もいるかもしれませんが、借地権の相続では特別な手続きは必要ありません。

相続手続きが必要になるのは、土地上の建物(家屋)を相続する場合です。この場合は所有権について名義変更するため、所有権登記を行う必要があります。

しかし、借地権に関しては特に手続きの必要はなく、地主に対して「借地権を取得した」旨を通知するだけで結構です。更新料や名義書換料なども発生しません。

ただし、借地権者の死亡に伴って相続する場合は、念のため土地の権利関係に詳しい弁護士に相談したほうがいいでしょう。なぜなら、借地契約の中には「借地権者が死亡した場合は、土地を更地にして返還する」という特約もあるからです。この場合は地主とトラブルになる可能性もあるので、独断を避け弁護士のアドバイスを聞いてください。

地主の承諾なしに借地を貸すことはできない

土地上に建物のない借地権を相続した人が第三者に土地を貸し、その第三者が建物を建てて住むというパターンも少なからずありますが、このようなケースでも注意が必要です。それは、借地を第三者に貸すことは「借地権の転貸」になり、土地賃貸借契約に違反するとして、地主から契約解除の申し立てをされてしまう可能性があることです。

借地権者が建てた建物を第三者に貸す行為は借地権者の転貸しになりませんが、土地自体を貸す行為は借地権の転貸にあたり、この場合は地主の承諾が必要になります。従って、借地権を有する土地を第三者に貸す場合は、地主と話し合い承諾を求めると同時に、プロの弁護士にも相談するようにしましょう。

なお、借地権の転貸を行う場合は地主から承諾を得るだけでなく、承諾料の支払いが必要になるケースもあるので、このことにも注意が必要です。承諾料には法的な規定はないので、この場合も最終的には地主との話し合いで結論を出すことになります。

借地の売却にも地主の承諾が必要

相続した借地権を誰かに売却したいと思う人もいるでしょう。その場合は次の点に注意してください。それは、借地権の売却には地主の承諾が必要になるということです。これを無視して売却を強行しようとすれば、地主との間でトラブルに発展する可能性があります。従って、借地を売却する際は、必ず地主の承諾を得るようにしてください。

ちゃんと相談したにも関わらず、承諾を拒否された場合は、裁判所に対して「賃借権譲渡許可」の申し立てを行うことができます。その結果、裁判所の許可を得ることができれば、地主の承諾なしに借地権を売却することができます。

ただし、借地権をベストな条件で売却するには、底地と借地権をセットで売り出すのが効果的なので、できるだけ地主とのトラブルを避け、底地と借地権をまとめて売却する道を話し合って模索したほうがいいでしょう。

地主が変わったときの注意点

借地権を相続した後の注意点になりますが、底地の地主が変わることにも警戒しなければなりません。なぜなら、その借地に建つ建物の登記を行っていない場合、新地主から立ち退きを迫られる可能性があるからです。

本来、借地権はその土地を使用する権利を意味するので、建物が建っていれば立ち退きの必要はないのですが、建物の「所有権保存登記」をしていなければ、その土地の利用権を持っていることを主張できなくなり、地主の言われるまま出ていかなければならなくなるからです。

従って、土地上の建物に登記がされていない借地権を相続した場合は、地主が変わることに注意しなければなりません。もちろんこれには対応策があります。

それは、借地権が法的に保障されるための「対抗要件」備えることです。対抗要件には2つあり、1つは、借地権を有する土地上の建物について所有権保存登記を行うこと、2つ目は、借地が更地ではなく「建物が建っていること」です。借地の上に建物があり、その建物がちゃんと登記されていれば、立ち退き要求されても法的に対抗することができます。

ただし、建物の所有権保存登記は必ず借地権者の名前で行わなければなりません。第三者の名義で登記すると、対抗力を失ってしまうので注意が必要です。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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