取得時効

ある一定の期間、他人の建物や土地などを所有あるいは占有した場合に自分ものにできてしまう取得時効について説明しています。もちろん、条件や対抗要件などがあるので、しっかりと確認し、自分に当てはまるのかどうかを見極めてください。

取得時効とは

ある一定の期間、他人の土地や建物を所有の意思を持って、平穏かつ公然と占有した場合、その建物や土地の所有権を取得できるという制度を指します。正確に言うと、所有権以外にも地上権、地役権、永小作県、賃借権なども取得が可能な権利です。

ただし、抵当権や先取特権、債権などは取得できない権利とされています。土地、建物を所有する認識がある点、そして平穏かつ公然としている点が重要なポイントです。

他人のものであっても、その土地や建物をある一定期間所有しているという事実がある場合、その事実の方を認めてしまうという法律で、初めて聞いた方にとっては理解できないかも知れませんが、日本の法律で定められている制度です。どうしてこのような制度ができたのか、どういう仕組みなのかを事項で説明します。

取得時効制度の成り立ち

取得時効という、初めて聞く人には理解しがたい制度ですが、どのような経緯で生まれた制度なのでしょうか。

法律とは、簡単に言うと、国民が生きやすいように定められたルールのことです。長期間にわたってある事実が続いたならば、その事実を否定することの方が混乱を招き、人の生きづらい社会になるという考え方が根底にあります。

また、事実状態を証明するのは時が経つにつれて困難になっていくので、書類上の権利関係よりも事実の方を重視するという考え方もあるわけです。日本の法律では、権利の主張が大事なポイントとなっており、権利を持ちながら主張しない場合は法で守るべき対象としないという考え方を持っています。取得時効の考え方は英国等の他国にもありますが、近年になって廃止されたりと考え方も変化を見せています。

取得時効の条件

当然のことながら、取得時効にはしっかりと条件があります。これらの条件を満たしていない場合は他人の土地や建物の所有権を主張することはできないので、取得時効を考える場合や、取得時効の主張を退ける場合は知っておく必要があります。

所有の意思があること

所有の意思があることが大事なポイントの1つです。所有の意思というのは、単に他人の土地・建物を占有しているだけでは成立しません。その土地にある建物を含め、自分のものとして使い、住んでいる状態などを指して所有の意思とみなします。

「自主占有」と呼ばれるこの状態は、賃貸借のアパートやマンションなどには適用されません。つまり、借りているという前提の下始まった土地や建物については、自主占有ではなく他主占有とされ、取得時効の対象ではいということです。当然と言えば当然の条件ですが、所有の意思があることを取得時効の主張時に証明する必要があります。

他人のものを占有していること

これも当然の条件ではありますが、占有の対象が自分のものではなく、他人の所有物であることが条件です。他人の土地・建物を所有の意思を持って占有していなければなりません。

一定期間占有していること

取得時効の主張には一定期間の占有が必要です。1週間他人の家に住んだからといって、自分のものであるという主張は通りません。土地や建物の場合は、10年という期間が1つの目安となります。

10年の占有の場合は短期取得時効と呼ばれ、「短期」と認識されます。こちらは後に説明する占有開始時の善意・無過失である場合に目安とされる期間で、それがない場合は20年という期間がもう1つの目安となります。

10年や20年という期間、土地や建物を占有し続けている事実が必要です。その期間に占有の状態が解かれることや、後述する争いごとなどが起こった場合は条件に当てはまらなくなります。

平穏かつ公然としていること

非常に大事な条件の1つに「平穏かつ公然とした占有であること」が挙げられます。つまり、占有が脅迫などで始まったもの、続いているものではないこと、そして占有しているという事実が隠されていないことが条件です。

所有者を脅して自分を住まわせた場合や、占有に対して争いがある場合は条件を満たしていないことになります。建物の場合は、隠れて住むことも短期間であれば可能かもしれませんが、それも認められません。公に占有していることを示している必要があります。

占有開始時における善意・無過失

少し難しい条件ですが、他人のものを占有し始めた際に善意かつ無過失である必要があります。善意というのは、「自分に所有権があると信じて占有し始めた状態」を指します。

つまり、住み始めた時点で他人のものであるという認識がないことがポイントなのです。そして、その所有権の認識について無過失であることも大事な要素のひとつ。しかし、前述した通り、この条件は10年での短期取得時効を成立させるために必要な条件です。初めから他人に所有権があるかもしれないと認識した上で占有を開始した場合は、20年の期間が必要となります。

取得時効の対抗要件

取得時効については裁判になることも多く、当事者以外の人が見た場合に誰がどのような主張をしていて、それが正しいのかどうかを判断できないといけません。それらを「対抗要件」と呼びます。

取得時効の主張

前述した取得時効の条件を満たしていることを示して取得時効を主張します。主張したという事実が1つの対抗要件とみなされます。

裁判所の仮処分

土地や建物の取得時効の場合、裁判になることも多く、登記のタイミングや取得時効のタイミングによって誰が所有権を持つのかを判断されるケースがあります。

裁判に移ったタイミングで登記を行えなくするように仮処分を求めることです。登記のスピード勝負にはなりません。取得時効を主張するのであれば、弁護士を使って、適切な方法で権利を主張するのが良いでしょう。逆もしかりで、相手が自分の所有物を勝手に占有し、取得時効を狙っている場合も弁護士を雇って不利にならないようにしましょう。

取得時効に関する注意点

取得時効は離れた場所に土地を複数持っている人や、別荘などを抱えている人に起こるケースが多いです。あるいは、自分の土地であるのに、隣の人が家を建てる際に、自分の領地にはみ出てきている場合も取得時効となるケースがあります。このように悪意のない場合もあれば、他人が勝手に占有している場合もあり、期間が長ければ取得時効が成立する可能性があります。離れた場所に土地を持っている方は、トラブルに巻き込まれないためにも、定期的に自身の土地に問題が発生していないか確認するようにしましょう。

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このページの監修
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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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