兄弟で不動産を共有名義で相続したけれど、良くない?

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こちらのページでは、不動産相続において不動産の登記名義を共同相続人の共有名義とすることについて、その仕組みや概要、注意点などを取りまとめて紹介いたします。

共有名義による不動産相続を避けた方がよい理由

遺産である不動産を複数の相続人が共同で所有することは、法律上は何も問題なく、また一見すると、特定の相続人を優先させず、公平であるように思えますが、実は思わぬ落とし穴があります。以下で詳しく見ていきましょう。

Q.亡くなった父親名義の不動産を、相続人の兄弟3人の共有名義で相続登記することは可能ですか?

A. 遺産分割協議にて兄弟3人が合意し、遺産分割協議書に署名捺印した上で行った登記であれば、法律上の問題はありません。しかし、将来のことを見据えると、あまり推奨はできません。

共有名義での不動産相続は、上記の通り、相続人全員の合意があれば可能です。よくあるパターンとして、親名義の不動産しか遺産がないという場合に、妥協の産物として、不動産の名義を共有名義にすることは、つい行ってしまいがちです。しかし、それは子の代、孫の代に、余計な苦労を強いることにもなるのです。この点こそが、相続した不動産の名義を共有のものとすることを避けるべき理由に他なりません。

共有名義とした不動産について、子の代、孫の代になれば、それだけ相続人の数が増え、売却などにも相続人全員の合意が必要になることで、新たなトラブルの火種となったり、事実上売却することが不可能になるといった弊害も生まれてきます。遺産分割協議で話がまとまらないからと言って、安易に共有名義にすることは避けるべきです。

なお共有名義に関しては「持ち家(戸建て)の相続でやるべきこと」ならびに「土地の相続で気をつけること」の各ページでも取り上げていますので、併せてご覧ください。

その上で、この問題を解決するには、専門家である弁護士のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?当事者同士では時に感情論になってしまいがちですが、専門家である弁護士に間に入ってもらえば、冷静かつ合理的な話し合いが行えるはずです。

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不動産の共有名義の基礎知識

不動産の共有名義とは?

「不動産の共有」とは、1つの不動産を複数人で所有している状態のことを指し、法務局で手続きを行うことによって1つの不動産について複数人の名義のものとして登記することができます。所有の割合は均等である必要はなく、極端な例ではAさんとBさんが1:9の割合で1つの不動産を共有することも可能です。

不動産を共有するとどうなる?

共有している不動産は、その全部について、持分に応じた使用ができるのが特徴です。また、もし共有する不動産がマンションなどで賃料が発生する場合には、受け取れる賃料の割合は不動産の持分に応じた額となります。さらに共有不動産にかかる税金の負担や、共有不動産の管理に関する事項の決定なども、持分に応じた対応となります。

不動産の共有はどのような時に行われる?

不動産の共有は夫婦間での土地の共有、被相続人である親の所有していた不動産を兄弟で相続した場合の兄弟間での共有でよく採られる方法です。さらに、高額な不動産を複数人で購入した場合に、支出した資金の割合に応じた持分を定めて不動産を共有することが考えられます。

共有不動産の活用は難しい

共有名義の不動産は、共有者1人の独自の判断で自由に処分することができません。不動産を所有していても自由に処分できないのはかなり不便ですよね。共有不動産は、共有者が死亡した場合の相続時に相続人が増えることで権利関係が複雑になり、様々な問題を生むケースも。親族間のトラブルの原因になることが多く、防ぐには事前の対処が必要です。

共有名義の問題点

不動産を共有名義にすると様々な問題が生じ、トラブルの原因となることがあります。

相続人が増えることで、権利関係が複雑になる

例えば2人で土地を共有しており、どちらかが亡くなったとします。すると亡くなった土地所有者は被相続人となり、その配偶者や子供は共有状態の土地の所有権を相続することになります。相続人が複数人いる場合、もともと被相続人が複数名で共有していた土地の所有者が増え、土地の処分や税金の支払いが極めて困難になります。さらに、土地を共有している人同士でまったく面識がないというケースも起こりえるため、混乱が生じトラブルの原因となりやすいようです。

トラブルが生じてしまったら?

共有名義によってトラブルが生じてしまうと、当事者同士で解決することは非常に困難です。複数の所有者がいると、そもそも話し合い自体に乗り気ではない人もいるかもしれません。さらに相手に知識がない場合は話を持ち出した人が何か自分の得になるような配分をするのではないかと疑ってしまう可能性も。そのような場合は弁護士などの専門家に間に入ってもらうことが有効です。専門家にしっかり説明してもらうことで不安感が解消され、交渉に応じてくれる可能性が高まるでしょう。

トラブルを予防するには?

このようなトラブルを防ぐにはもともと共有状態を作らないことが大事。一度共有状態が生じてしまっても早期に解消する必要があります。

共有名義の解消について

トラブルが起こりやすい共有名義。トラブルが起こる前に共有名義を解消することが有効です。共有名義を解消し、平等に財産を分割するには

の4パターンがあります。

持ち分移転

「持ち分移転」とは共有者が自分の持ち分を他の共有者に贈与または売却するなど、共有状態の解消を目的として、1人の共有者が他の共有者から土地を譲り受けることです。その結果、土地の所有者が1人になると土地の共有状態が解消され、土地は単独名義となります。問題点は他の共有者が応じるかどうか。売買契約によって共有持分を取得する場合には、資金力が必要です。また、対象となる土地についてローンの支払いなどが残っている場合、金融機関との契約をよく確認せずに持ち分移転を行うと契約違反になる可能性も。タイミングよく合意が成立しなければ、実現は難しいでしょう。

共有状態の不動産を共有者全員ですべて売却

共有者全員の同意を得て、共有している不動産自体をすべて売却するという方法をとることもできます。不動産を売却したことで得られた金銭を分割することにより、容易に財産を分割することができます。

自分の持ち分を売却

自分の持ち分を第三者に売却するという選択肢もあります。この場合、自分の持ち分自体の処分は自分が自由に行うことができるため、他の共有者の了承を得る必要はありません。他者に共有権を譲るだけで共有名義により生じる負担から解放されるのは魅力です。しかし、数ある不動産の中で、あえて共有状態にある不動産物件の購入を希望する人は多くないと考えられます。共有物件の市場価値は低く、売却価格が非常に安くなるというデメリットがあります。

土地の分割

共有財産が土地の場合、土地自体を分割することもできます。分割した土地ごとに登記名義を分けることにより、自己の単独名義の土地については自由に処分することができることになります。注意点は分割方法。土地を分割すると、接する道路の状況などで土地の評価額は異なります。同面積で分割しても価格が同じにはならない可能性があります。そのため、分割後の評価額が同じになるように分割する必要があります。さらに、一筆の土地の面積が小さくなることにより、分割した土地の合計額は分割前の土地の額より安くなってしまいます。

共有名義とする遺産分割方法が適当といえる場合

様々な問題が生じうる、不動産を共有名義とする遺産分割方法ですが、ケースによっては相続人にとって適当といえることもあります。それは、共有名義としてでも、遺産である不動産に相続人が居住する必要がある場合です。

例えば、遺産である不動産に、特定の相続人が現に居住している場合が挙げられます。被相続者が父親、その子供3人が相続人である場合に、遺産である不動産に相続人である子供の1人が居住している場合、その不動産をすぐに売却して換金し、財産を分割する方法は、必ずしも相続人にとって最適とはいえません。遺産である不動産に居住しない相続人にとっては、その不動産をすぐに利用する必要性は低い反面、その不動産を住居として利用している相続人にとっては、住んでいる自宅をすぐに引き払って換金し均等に分割することは負担が重いといえます。このような場合、相続人全員で将来不動産を売却し金銭で配分するという話し合いをした上で、いったん共有名義としつつ、特定の相続人が住居として利用することに同意するという方法が最も円満な遺産分割方法と言えます。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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