不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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本ページでは、親(被相続人)が所有していたマンション物件(分譲)の相続において、起きやすいトラブル事例や、予め知っておきたい知識などを取りまとめて解説します。
マンションの相続の場合も、基本的には「持ち家(戸建て)の相続でやるべきこと」のページでご紹介した内容と同じく、相続人が複数いた場合、どのように分けるのかという問題が出てきます。
例えば、マンション物件以外に現金や有価証券などがあれば、マンションは兄が相続し、その他の資産は弟が相続する、というように遺産を分けることもできます。
しかし、遺産がマンションだけしかなく、仮に法定相続人が被相続人の2人の子(兄弟)である場合に、兄弟の一方はマンションを単独で所有したい、他方は売却して得られた金額を均等分けすべきと主張しているような場合は、一戸建て住宅を相続する場合と同様に、早めに弁護士に相談し、解決すべきです。
分譲マンションを相続する場合には、マンションならではの考慮しておかなければならないポイントがあります。売却すると譲渡所得税、相続すると相続税がかかり、さらにその後は固定資産税がかかるというのは、一戸建て住宅でも分譲マンションでも変わりありません。
しかし、分譲マンションではそれらに加え、一戸建て住宅の場合には必要ない、管理費や修繕積立費といった必要経費がかかってくるという点です。意外とこのことを考慮せず、相続してから思わぬ負担を強いられて苦労するというケースが、実は多くあります。
マンションを兄弟間で遺産分割する場合、面倒なことになりやすいと説明しましたが、一方で共有名義にしてもトラブルの種になることがあります。なぜなら共有名義の場合、マンションを売却する際に名義人全員の同意・許諾が必要となるからです。
たとえば兄弟でひとつのマンションを保有していて、兄がマンションを売却したいと思った場合は、弟の同意を必ず得なければいけません。これは民法で定められていることで、第251条に「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」とあります。
ただ売却するだけでなく、マンションの取り壊しや大規模リフォーム、建て替え、さらにはマンションに地上権や抵当権を設定する場合も名義人全員の同意が必要となります。また、マンション一棟を共有名義にした場合、持ち分の価値が低いことに不満を持つ人も出てきます。
共有持ち分が独立している場合、そこだけ売却することも可能ですが、一部のみ売りに出してもなかなか買い手がつかないのが現状です。共有名義人が増えれば増えるほど全員の同意を得ることは難しくなるため、一般的に不動産の相続において共有名義にするのはなるべく避けたほうがよいと言われています。
もし共有名義で相続し、トラブルになりかけたら早めに弁護士に相談するようにしましょう。
マンション以外の遺産がほとんど残っていない状態で複数人に遺産相続する場合、不動産を売却してお金を分割するのが一般的です。
しかし相続人の一人が当該マンションに親と同居していた場合、不動産を売却すると住む家を失ってしまうことになるため、不動産を相続してそのまま住み続けたいと願う人も少なくありません。マンション以外の遺産が少ない場合、他の相続人に渡る分が少なくなってしまうため、大きな不公平が生じます。
そこで不動産を相続する側は、相続しない側に対し、不足分を補填する必要があります。これを代償金と言います。
ただ、不動産を処分できない以上、代償金は自分の資産から支払わなければならないため、金額が大きいと代償金が支払えず、トラブルに発展してしまう可能性があります。こうしたトラブルを防ぐには、生前から相続人の所有する不動産や金融資産を把握し、代償金の支払いに備えて資産を確保しておく方法が有効です。
それでも一括して支払えない場合は、金融機関が提供している遺産分割ローンを利用するという方法もあります。
代償金の支払いトラブルや遺産分割ローンについては弁護士がくわしいので、代償金を支払えそうにない場合は早い内にプロに相談することをおすすめします。
またもうひとつ、分譲マンションの相続ならではのポイントとして、相続したマンションに相続人が居住するのか、あるいは賃貸物件として第三者に貸し出すのかについても、しっかりと考えておくべきです。
もし賃貸物件として第三者に賃貸する場合は、物件の収益性をしっかりと見極めなければなりません。うまく運用できれば、家賃収入を安定して得られることになりますが、逆に入居者が見つからず空室の状態が続くようであれば、管理費や修繕積立費の支出ばかりを負担することになってしまいます。
くれぐれも、遺産分割においては様々な事情を熟慮した上で決定すべきです。知識やノウハウに長けた専門家に相談するのが望ましいでしょう。
マンションを相続した際に気になることのひとつが「相続したマンションの価値はどのように評価されるのか」「相続の際にどういう税金がかかってくるのか」ということです。
中でも「相続税がかかってくるケースはどのようなケースなのか」という点については特に気になるところでしょう。ここでそうしたマンション相続に関する気になる点を解決するとともに「相続手続きの終わったマンションを、その後どうするべきなのか」という点についても考えていきましょう。
マンションの評価方法は、土地と建物、それぞれで評価方法が異なります。
まず、土地の評価額は、国税庁が公表している路線価(路線=道路に面する標準的な宅地1㎡あたりの価格)に基づいて計算されます。
この計算式は一戸建てなら「路線価×宅地面積(㎡)」となりますが、分譲マンションは「ひとつの土地をマンション所有者全員で共有している」というスタンスなので、この計算式に持分割合の計算も加える必要があります。つまり「路線価× 宅地面積(㎡)×持分割合」という計算式、これがマンションの土地の評価方法です。そして建物の評価額は「固定資産税評価額=建物の評価額」となります。
固定資産税評価額を知るためのもっとも手軽な方法として挙げられるのは、毎年市町村から送付されている固定資産税評価明細書を確認することです。
「明細書が見当たらなくて固定資産税評価額がわからない」という場合は、各市町村で固定資産税台帳を閲覧して固定資産税評価額を確認するという方法があります。
固定資産税台帳は誰でも閲覧できるというものではありませんが、閲覧が許可されている人の中に「死亡した納税義務者の相続人」も含まれているため、相続人が閲覧することは問題ありません。
マンション相続時にかかってくる税金は登録免許税および相続税が挙げられます。
登録免許税とは、マンション相続における所有者移転登記(マンションの所有者が変わったという情報を登記簿に記載する登記)をするために必要な税金で、その計算式は「固定資産税評価額×0.4%」となります。
次に相続税ですが、こちらは「相続が発生したら絶対に支払う必要がある」というわけではありません。相続税には基礎控除があり、相続財産がその基礎控除額の範囲内でおさまっている状態であれば、相続税の申告・納税の必要はありません。
その気になる基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。つまり、相続人が2人の場合は、3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円が基礎控除額となります。
また、この基礎控除額を超えてしまった場合でも、相続したマンションが被相続人(故人)または被相続人と同一生計の親族の居住用であった場合や、そのマンションが事業用や貸付用であった場合は「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」が適用され、評価額が大幅に減額される制度があります。
あと、被相続人の配偶者には「配偶者の税額軽減」が適用され、こちらはなんと相続額が「1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方」まで、相続税がかかりません。
相続したマンションをどのようにするか、のおもな選択肢としては、
の3つが挙げられます。
この中でも特に迷うのは「相続人自身が相続したマンションに居住する気がない場合」です。賃貸に出すか売却するか、難しい選択を迫られます。
この時の選択のポイントとして挙げられるのは
の2点です。
この2つのポイントを両方ともクリアしているのであれば、賃貸に出す方が無難と考えられます。逆に「おそらく将来的に見ても自分がこのマンションに住むことはない」「近隣の賃貸物件を見てもそれほどニーズが高そうに思えず、今後もニーズが高まる気がしない」という場合は、売却も視野に入れて検討してみるといいでしょう。
マンションの遺産分割はいくつかの方法がありますが、できるだけ家族間トラブル無く相続するオススメの方法があります。
マンションの遺産分割方法は「換価分割」「現物分割」「代償分割」「共有分割」の4つ。その中でオススメの方法は「換価分割」です。
ここでは「換価分割」がなぜオススメなのか、特徴やメリット・デメリットに触れながら、注意点を含めて解説します。
該当のマンションを売却して金銭に変えて分割する方法です。明確な数字がでるので、他の分割と比較して公平性が高くなります。
売却することに抵抗を感じるご家族もいらっしゃるかと思いますが、
と比較すると明確にそして後に何も残さないためトラブルが起きにくくなります。
以下に、換価分割メリットとデメリットについて簡単にまとめるため、参考にしてみてください。
換価分割の最大のメリットは、売却した金額がはっきり確認できるため、公平に分割できることです。公平に分割できれば、家族間で争う原因が無くなるのでトラブルが起きることはほとんどありません。
また、その他には代償分割のように所有する人が現金を用意する必要がないため、家族の誰かに負担がかかることがありません。つまり、精神的に負担を感じることがないため、誰もがスムーズに相続遺産ができるわけです。
換価分割のデメリットは、マンションが無くなることです。現金が手に入るとはいえ、やはり不動産がなくなることは、大きなデメリットともいます。
ただ考え方を変えると、所有者を誰にするのか?例えば、賃貸にした場合、その収益の分配方法など、そのマンションをきっかけに、後々のトラブルに発展する可能性があります。そのリスクが減るのでメリットとも言えます。
マンションを換価分割すると決めたら、注意すべきことは一つの不動産会社の査定だけでなく、複数の会社で査定をすることです。
マンションがどれくらいの価値があるかはなかなか素人では判断できないため、一社のみの査定では適正価格かがわかりません。しかし、複数の不動産会社に依頼すれば、相場もわかり、さらに最も高値で売却が可能になります。
親から相続した大切なマンションを適正かつ高値で、そしてより円満に分割できるよう必ず複数社に査定を依頼しましょう。
遺産分割協議書とは、相続人の間で、誰がどれだけの財産をもらうことができるのか?の割合を詳細に記載したものになります。
法で定められている相続分とは違う割合で分割するときに用いられます。したがって、余計なトラブルにならないようにするためにも、しっかりと話し合うことが重要になります。
ちなみに、この話し合いのことは「遺産分割協議」と言います。それを記したものが、遺産分割協議書になるわけです。
当然、協議書となるため、必要な情報を全て記しておかなければなりません。適当に記載してしまうと、法的な効力が発揮できなかったり、それこそ、家族間でトラブルに発展してしまう恐れもあります。
せっかく協議したのに、元の木阿弥になってしまいます。遺産分割協議書の書き方があるため、調べて記載することも注意する点です。
「譲渡所得税」と言われる所得税が発生します。換価分割をするために、マンションを売却したときに手に入るお金は「譲渡益」となります。残念ながら譲渡益は課税対象となっており、税金を収めないといけません。
そもそも譲渡益とは、売却したお金のことを指すわけではありません。あくまでも、売却したときに手に入れたお金から、財産を手に入れるために発生した金額や費用を引いたお金のことを言います。
計算式を具体的に表すと次のようになります。「譲渡所得 = マンションを売って得たお金 – ( 譲渡に必要となったお金 + 財産を得るために発生したお金 )です。
つまり、換価分割をするためにかかった費用は経費のような位置づけになり課税対象にはならないわけです。だから、売ったお金に対して経費分を引き算しているのです。
換価分割で得た財産は、遺産分割協議書があれば贈与税は発生しません。換価分割で登記したものは、位置づけ的には便宜上なものと判断されるからです。
言い方を換えると、この遺産分割協議書がないということは、換価分割をしていないと判断されてしまい、贈与という状況になってしまいます。結果、贈与税が発生することになります。したがって、換価分割をするときは、必ず遺産分割協議書を用意することが注意する点です。
換価分割をするわけですから、マンションを売らないといけません。このときに、どうしても不動産業者へ仲介手数料を支払わないといけなかったり、登記の費用が発生したり、様々な「その他費用」が発生することは、頭に入れておきましょう。
マンションはもちろんのこと、土地や戸建てを売りに出したからと言って、すぐに買い手がつくわけではありません。
そのとき、相続税はどうなるのか?ですが、残念ながら売れ残っている場合でも、課税対象となり相続税を支払わないといけません。したがって、生前から定期的に物件の価格を知っておくとよいでしょう。