相続時に知っておきたい書類「名寄帳」とは?

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不動産の相続の際、被相続人が所有している不動産を調査が必要です。被相続人が複数の不動産を所有している場合は、相続人はその不動産の把握だけでも大変な作業です。このとき、名寄帳を取得すると被相続人の所有する不動産を把握することができます。ここでは、不動産相続時に有用な名寄帳について詳しく解説しています。

名寄帳とは?

名寄帳は、固定資産税の課税のための市区町村が作成する固定資産税課税台帳を不動産の所有者ごとに整理したものです。相続時には、その市区町村の被相続人の不動産の所有者を把握するのに役立ちます。ここでは、相続時の名寄帳の有用さについて考えてみましょう。

被相続人の不動産を一覧で確認できる

名寄帳は、相続不動産の所在地の市区町村役場で閲覧できます。名寄帳を閲覧することで、その区域の被相続人の相続不動産を把握できます。被相続人が別の市区町村に不動産を所有している場合は、複数の市区町村から名寄帳を閲覧することが必要です。また、名寄帳は、書面として取得することも可能です。書面で取得するときは市区町村役場で異なりますが、数百円程度の手数料です。

納税通知書に未記載の不動産も分かる

名寄帳は、固定資産税の納税通知書に未記載の不動産を把握することもできます。例えば、被相続人が土地、建物の共有持ち分権者の場合、私道、農地、山林の固定資産非課税の不動産所有者である場合があります。

名寄帳は、本来は固定資産税の徴収のために作成されたものであるため、固定資産が非課税の不動産についても把握可能です。

名寄帳の見方のポイント

相続不動産の把握のために名寄帳を閲覧するとき、不動産の情報と固定資産税の情報をはじめに確認します。同一の市区町村内に複数の不動産がある場合は、その区域の役所の名寄帳を閲覧することで、被相続人の不動産の情報を確認できます。また、相続不動産の固定資産税の把握や不動産名義を変更するときの登録免許税の算出にも必要です。

相続時に名寄帳を請求できる人とは?

名寄帳は固定資産税の納税のために作成されているため、請求権者は限定されています。名寄帳の請求は、固定資産の納税義務者が原則です。しかし、相続時は固定資産の納税義務者は死亡しているため、納税義務者の相続人、請求賢者から委任された代理人が請求権者です。

名寄帳の取得方法

相続時の名寄帳の取得は、不動産の所在地の市区町村役場の固定資産に関係する窓口で申請します。納税義務者の相続人、請求権者から委任された代理人とでは、名寄帳の取得方法の添付書類が異なります。名寄帳の取得時の必要書類と申請方法について詳しく見ていきましょう。

名寄帳請求時の必要書類

納税義務者の相続人、請求権者から委任された代理人とでは、名寄帳の取得方法の添付書類が異なります。複雑な相続手続きで弁護士等の遺言執行者がいない場合は、相続人が名寄帳を請求するのが普通です。このときは、相続人と被相続人の関係、被相続人が死亡した事実、相続人の本人確認を証明することが必要です。

相続人が申請する場合

代理人が申請する場合

申請先・申請方法

不動産が所在する市区町村役場の固定資産税に関する窓口が申請先ですが、窓口を直接尋ねるほか、郵送で名寄帳の取得申請も可能です。郵送による請求の場合は、名寄帳請求の申請書、添付書類、手数料分の郵便定額小為替または普通為替を申請先に郵送します。

遠方の相続人の場合は、この郵送による名寄帳請求は便利ですが、それぞれの市区町村の申請先で手数料等が異なるため、請求前に確認が必要です。

名寄帳を確認する際の注意点

名寄帳を取得すれば、複雑な不動産相続も正確にできると考えるかもしれませんが、名寄帳による不動産相続も限界があります。ここでは、不動産相続で名寄帳を確認する際の注意点について考えていきます。

現在の所有状況と異なるケースがある

名寄帳に記載された固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日時点の不動産の名義人です。つまり、1月2日以降に不動産の名義人が変わった場合でも、名寄帳を取得する時点での不動産名義人は1月1日時点の名義人となるわけです。

名寄帳は名義人が変われば随時改訂されるわけではありません。被相続人の所有する不動産であるかが疑わしい場合、法務局で登記事項証明書を取得し、被相続人の死亡時でも被相続人の不動産であるかを確認することが必要です。

取得した自治体以外の不動産は載っていない

名寄帳は自治体の固定資産税に関係する係が作成します。そのため、名寄帳を取得した自治体以外の不動産は記載されていません。被相続人の不動産が複数の自治体に存在する場合は、複数の自治体に名寄帳を請求することが必要です。

もし、被相続人の不動産が明確でないときは、権利書、公図から周辺地域の調査、登記簿謄本の確認によって、相続不動産を確定します。複数の不動産を被相続人が所有していた場合は、正確に相続不動産を確定させるには素人では難しい場合もあります。こういう場合は、専門家に相談することも大切です。

名寄帳を作成していない自治体、取得できない自治体がある

名寄帳を作成していない自治体もあります。法令で名寄帳の作成が義務化されているわけではないからです。そのときは、固定資産課台帳が名寄帳を兼ねているので、固定資産の課税明細書の交付を受け、被相続人の不動産を確定することが必要です。こういう場合でも、名寄帳という名称ではありませんが、名寄帳請求といえば、自治体の担当者は適切に対応してくれます。

法人名義の不動産は載っていない

名寄帳は、法人名義の不動産は記載されていません。被相続人が起業経営者で不動産を法人名義で取得していた場合は、名寄帳を取得しても相続不動産を確定できません。こういう場合は、企業の顧問弁護士、企業の管理者に確認するとよいでしょう。

専門家に相談しよう

複数の不動産を被相続人が所有している場合など、複雑な不動産相続は素人が行うことは困難です。名寄帳の取得はできても、相続不動産を全て確定させ、固定資産税や不動産登記手数料を確定させることが難しいことも多いです。

複雑な不動産の相続手続きが必要なときは、相続の専門家に相談すれば、間違いのない相続手続きができます。相続手続きの専門家は、法律、登記、税務、不動産など、連携していることが多いため、複雑な不動産相続もワンストップで解決できます。煩わしい不動産相続は、相続の専門家に相談することをすすめます。

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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