土地相続で税がかからないことはある?

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このページでは、不動産相続の中でも特に土地相続において、相続税が発生しないケースや条件について解説しています。常に土地相続について相続税の課税が免除されるわけではないからこそ、特定の条件などを正しく理解しておきましょう。

不動産相続や土地相続で相続税が課税されないケースもある

例えば被相続人と同居していた自宅を相続したり、被相続人が別の場所に所有していた物件や土地を相続したりする場合に、それぞれの評価額が高すぎて相続税の課税額が大きくなり、結果的に対象物件を売却しなければならないといったケースが存在します。

一方、一定の条件次第では家や土地といった不動産について、相続税の課税対象から外れたり、相続税が実質的にゼロになったりといったケースが存在することも事実です。

ここでは一般的に考えられる、「土地の相続税がかからないケース」を3つ、それぞれ解説していますので参考にしてください。

土地相続において相続税が発生しない
3つのケース!

土地相続において相続税がかからないと考えられるケースについて、代表的な3つを紹介します。

ケース1. 遺産の額が基礎控除以下で相続税がかからない
(申告不要)

土地の相続に関して相続税が発生しない代表的なケースとして、そもそも相続する土地の評価額など遺産の総額が低すぎて、相続税の基礎控除以下に収まっている場合が挙げられます。

そもそも相続税に関しては以下の非課税枠が基礎控除として定められており、その範囲に収まる相続財産については相続税を支払う必要がありません。

例えば法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円、法定相続人が3人になれば基礎控除額は4,800万円となり、この範囲内に遺産総額が収まっている場合は相続税が非課税です。

ただし、これはあくまでも相続財産の総額に関してです。例えば土地の評価額が基礎控除額の範囲内であっても、他に価値のある財産が存在しており、合算して基礎控除分を超過すれば相続税が発生します。なお、遺産総額が基礎控除額の範囲内であった場合、そもそも相続税を申告する必要もありません

相続税は基礎控除額を超過した分の相続財産にかかる

相続財産の総額が基礎控除額を超過した場合、相続税の課税対象となりますが、その際にも基礎控除は適応されます。つまり、相続財産から基礎控除を差し引き、残額に対して相続税が課税されることがポイントです。

例えば法定相続人が1人で、土地の評価額を含めた相続財産の総額が4,000万円であった場合、4,000万円から基礎控除の3,600万円を差し引いた400万円が相続税の課税対象となります。

遺言などで相続人が増えても基礎控除の範囲は増枠されない

相続税の基礎控除を算出する場合、基準となるのはあくまでも「法定相続人」です。そのため、例えば被相続人が遺言で第三者を相続人として指定していた場合であっても、その相続人に関しては基礎控除額の計算に反映されません。

なお、養子縁組などで法定相続人の数を増やすといった方法もありますが、安易に行うと後々に問題へ発展するリスクもあるため注意が必要です。

相続人の多くは相続税を支払っていない

上記の基礎控除額が存在するため、遺産相続において多くの相続人は相続税の支払い義務を免除されているという事実がポイントです。

言い換えれば、明らかに被相続人の保有していた財産や土地の価値が高いと思われる場合を除いて、相続税が課税されない可能性があるため、必ず詳細を専門家へ相談して確認するようにしてください。

ケース2.基礎控除を超えても配偶者控除で
相続税がかからない
(申告必要)

相続税に関しては、基礎控除の他にも「配偶者控除(配偶者の税額軽減制度)」が存在します。これは相続人が被相続人の死亡時に配偶者であった場合、相続によって取得する財産の一部または全部が非課税対象になるという制度です。

非課税となる相続財産の条件は以下の2つのうち、どちらか高い方となります。

例えば被相続人から相続する財産の総額が1億5千万円であった場合、配偶者の税額軽減制度を使えば相続税は課税されません。

ただし、長期的に見た場合、配偶者の税額軽減制度を満額利用することで結果的に損をするケースもあるため、実際に制度を活用する際には慎重に考えることが必要です。

配偶者の税額軽減制度を活用して得するケースと損するケース

例えば被相続人である夫から相続する財産の総額が2億円であったとして、法定相続人に配偶者である妻と子供が2人いたとします。そして遺言により、妻に対して配偶者の税額軽減制度の上限である1億6千万円が相続されたとします。この場合、配偶者の税額軽減制度を活用すれば、配偶者である妻の取得財産について相続税は発生せず、子2人の支払う相続税の額も少なくなるでしょう。

しかしその後に妻が亡くなった場合、子の2人は妻の遺産(1億6千万円)から基礎控除を差し引いた取得財産について、結果的に高額の相続税を支払うかも知れません。

一方、もしも妻が配偶者の税額軽減制度を法定相続分の範囲内(1億円)で活用していた場合、妻の死亡時に子2人が相続する遺産の総額も減っており、相続税の課税額が少なくなる可能性もあります。

実際に得をするのか損をするのかは条件によって変わりますが、少なくとも「配偶者の税額軽減制度を限度一杯まで利用することが必ずしもお得とは限らない」という点を覚えておいてください

ケース3.基礎控除を超えても小規模宅地等の特例で
相続税がかからない(申告必要)

「小規模宅地等の特例」とは、自宅のある土地や事業を行っていた土地について、被相続人の配偶者や同居の子が相続する場合に、税額計算時に評価額を最大80%まで減じられる制度です。

つまり、そのままであれば基礎控除の範囲を超えてしまうような価値を持つ土地であっても、小規模宅地等の特例に当てはめることで評価額を大幅に減額し、結果的に遺産総額で見れば基礎控除の範囲に収まってしまう可能性があります。

なお、小規模宅地等の特例の対象としては、「特定居住用宅地等」や「貸付事業用宅地等」といった諸条件があり、それぞれの土地の特性や目的によって減額割合も変動します。そのため、実際の金額はそれぞれのケースに合わせて計算するようにしましょう。

相続税を軽減させる3つの控除

相続税を軽減させる方法として、税制上の優遇制度や控除を利用するといったものがあります。ここでは相続税の軽減に活用できる3つの控除について解説します。

未成年者控除

未成年者控除は文字通り、主として相続人が未成年(18歳未満)である場合に適用される税控除です。

なお、令和4年3月31日以前の相続や遺贈に関しては、成人年齢が「20歳」であるため控除要件も「20歳未満」となります。

未成年者控除を受けられる人は「未成年者である」ことの他にも、法定相続人であることや、日本国内のおける住所の有無といった内容に関する要件があり、詳細は必ず国税庁や税務署、または税理士や弁護士などの専門家へ確認してください。

未成年者控除の控除額は「未成年者が満20歳になるまでの年数×10万円」となります。

障害者控除

障害者控除は法定相続人が85歳未満で、かつ障害者として公的に認定されている場合において適用できる控除です。

障害者控除の控除額は「障害者が満85歳になるまでの年数×10万円」となります。ただし特別障害者の場合、乗算する基準額が「20万円」となります。

相次相続控除

相次相続控除とは、最初の相続が発生してから、次の相続が発生するまでの期間が「10年以内」である場合に適用できる控除制度です。例えば被相続人である父親が死亡して相続が発生し、その10年以内に母親が被相続人として死亡した場合、法定相続人である子の取得財産については「(10年-前回相続時から今回相続時までの年数)×10%」が適用されます。

具体的には、例えば父親の死亡から2年で母親が亡くなった場合、「(10年-2年)×10%/年=80%」が控除されます。

まとめ

土地相続や遺産相続において相続税が発生しないケースは存在しており、中には相続税の申告そのものが不要であるといった場合もあることは事実です。しかし、実際に申告が不要になるかどうかは相続する土地の評価額だけでなく、その他の遺産についても正しく確認して計算した上で判断されるため、素人が安易に考えることは危険です。

安全かつ適正に節税対策を実行するためにも、相続や税について詳しい専門家へ相談して、プロの立場でアドバイスしてもらうようにしてください。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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