不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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相続によって遺産を受け継ぐとその価値に応じて相続税が発生します。例えば亡くなった被相続人のための葬儀費用は、相続税の計算をするとき、遺産から差し引いて控除することが可能です。このページでは、相続税と葬儀費用の関係をまとめました。
ふつうは家族が亡くなったときは大なり小なり葬儀を執り行って故人を弔うことになるでしょう。言い換えれば、葬儀費用は故人が亡くなった時点で発生する必要経費のようなものとして考えることができます。
ただし、葬儀費用という名目さえあれば、なんでも控除されるというわけではありません。あくまでも「葬儀費用」として認められる一定範囲の金額が遺産総額から差し引きされるという点に注意してください。
例えば相続税の税率が10%として、葬儀費用に200万円がかかっていたとすれば具体的に軽減される税負担は以下のように計算されます。
※参照元:国税庁|No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
日本の伝統や社会的な概念において、亡くなった人を適切に弔う葬儀は、行われて然るべきものとして考えられています。そのため、被相続人のために執り行われる葬儀や、それにかかる費用は、相続人に責務があるとはいえないと考えられます。
喪主や関係者として葬儀を執り行うのは、相続人である家族が主となると思いますが、葬儀費用の経費については、相続人でなく被相続人の遺産から支払われると考えることが自然です。ですので、葬儀にかかった一定の費用については被相続人の遺産総額から差し引かれ、残額が改めて相続人へ相続されるという形になります。
葬儀費用は曖昧な言葉でもあります。なので、葬儀に関連する全ての費用が控除されるわけではありません。また、葬儀費用の範囲に含まれるものであっても、支払いの根拠や支払先を明示できる証拠資料を文書で残しておくことが大切です。誰にどのような目的で支払ったお金であるかを領収書や明細書できちんと記録を残しましょう。
葬儀費用の控除を求める場合、根拠資料のコピーを申告書へ添付して提出する必要があり、領収書や明細書をもらい忘れていると適正な葬儀費用であっても控除されることはありません。
相続財産の総額から控除できる葬式費用について正しく把握しておく必要があります。例えば香典返しで支払った費用は控除されないなどのルールを理解しておかなければ、後から トラブルになりかねません。
国税庁のホームページにおいて、葬式費用として考えられるものが例示されています。
※引用元:国税庁|No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
基本的に、埋葬に関連した火葬や納骨などの費用は葬儀費用として認められます。加えて、病院から自宅へ遺体を運んでくる遺体・遺骨の回送費用も控除対象です。
葬式とは一般的に告別式を指しますが、告別式の前夜にはお通夜が開かれます。そのため、告別式だけでなくお通夜を開くために支払った費用も、一定の範囲で葬儀費用として控除されます。
その他、葬式を執り行うに当たって、お寺の住職に読経などをしてもらった場合、そのためのお礼や戒名料といった費用も葬儀費用の一部です。
これらは仏教の場合であり、神道やキリスト教の家庭であると葬儀にかかる費用の質も変わってきます。
なお、事故や災害の後などで行方不明になっている人や遺体の捜索や、遺骨の運搬のためにかかった費用も控除対象です。
国税庁のホームページを参照すると、以下のような費用は葬儀費用として認められません。
※引用元:国税庁|No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
まず、最も注意すべきは「香典返し」が葬儀費用として認められないという点です。香典返しでは一般的に、故人の葬式で弔問客から香典を受け取った場合、後日に改めて弔問客へ来訪のお礼を行います。しかし、そもそも香典は相続人である遺族に対して支払われているものであり、香典返しもまた相続人らの責任によって行われるものです。そのため、被相続人の財産である遺産から香典返しの費用が控除されることはありません。
また将来的に墓石や墓地は、相続人らの資産として保有されます。そのため、墓石や墓地の購入、賃借にかかった費用についても被相続人の遺産から控除されることがありません。
初七日などの法事は、葬儀の後に行われる儀式であり、関連しているものの、葬儀に連結しているものではないため、葬儀費用としては認められません。ただし、初七日を繰り上げて葬式と同時に行った場合は「繰り上げ初七日」として費用を遺産総額から控除できます。
相続税の申告時に葬儀費用を控除されるためには、そこまで複雑な手続きはありません。基本的には葬儀費用の内訳をまとめて、それらの根拠資料のコピーを添付した上で、「相続税申告書」に必要事項を記載して提出します。
相続税の申告書として用意されている書式には「第1表~第15表」という種類が存在しますが、特に葬儀費用の申告に関しては「第13表:債務及び葬式費用の明細書」を利用することになります。
具体的な記載方法としては、「2.葬式費用の明細」の部分に金額や支払先、費用を負担した人の氏名と負担金額をそれぞれ記載していきます。支払金額と負担金額がそれぞれ分けられているのは、相続人が負担を分け合っている可能性があるためです。
続いて、「3.債務及び葬式費用の合計額」にはすでに支払い済みの葬式費用と、まだ確定していないものの、発生すると思われる葬式費用を記入します。そして、それらの金額を合計したものが、相続税の計算時に控除対象となる金額です。
申告書を提出する場合、記載している費用について領収書や明細書といった根拠資料のコピーを添付しなければなりません。根拠資料の用意がされていない場合、それらは法的に根拠のある費用として認められず、控除対象から除外されます。
葬儀費用が「必要なもの」かそうでないかの判断は、個人の思想や宗教概念などにも左右されるものであり、必ずしも各自の考えが国税庁や税務署の考え方と合致するとは限りません。また、同じ費用でも名目を工夫することで控除対象として認められる可能性もあります。
大切な人を亡くした直後は誰しも精神的に負担が大きくなり、冷静に計算することは困難です。相続税の計算時に葬儀費用の控除を受けるのであれば、法律や税金の専門家へ相談してサポートを受けることも無難です。
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