土壌汚染された不動産を相続する際の必須知識!

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このページでは、土壌汚染された不動産の定義や調査方法、相続する場合に知っておきたい評価方法などについて解説します。

土壌汚染地とは

人体に健康被害を与える有害物質に汚染された土地を土壌汚染地と言います。 日本では、国民が土壌汚染により健康を害することがないように、環境省が土壌汚染対策法を制定しているのです。そのなかで土壌汚染地の定義やどのように対処すべきかといった詳細が規定されています。

では、土壌汚染地はどのような土地を指すのかをみていきましょう。土壌汚染地には以下の2つの定義があります。

ひとつ目は土壌汚染地から直接的に人体に被害を受ける可能性がある土地です。たとえば人に健康被害をおよぼす有害物質が、土壌汚染地から発生している土地を指します。

ふたつ目は土壌汚染地から間接的に人体に被害を受ける可能性がある土地。たとえば土壌汚染地に降った雨が地下水などを通して人体に健康被害をおよぼすような土地が該当します。

相続土地の減額要素

上記でご紹介したような「土壌汚染地」は土壌汚染されていない土地と比べると当然ながら価値が下がります。これには様々な理由があります。

まず土壌汚染地がどの程度、何に汚染されているのかを調査する必要があり、費用も発生します。さらに土壌汚染地は、そのままにしておくことができないため、土地の浄化や改善の必要があり、ここにも費用がかかります。加えて、使用用途が制限されることも価値が下がる理由です。

一般的に、相続した土地は、国税庁が発表している路線価によって評価されます。しかし、土地の評価は土地特有の事情を加味して行われているのです。たとえば、土地が道路に面していることは使用用途によってはプラス要素になり、住宅だと騒音問題などマイナス要素になることが考えられます。

このように土壌汚染地以外にも相続する土地の評価が減額される要素はいくつかあります。 家が立てにくい狭小地、土地の形がいびつな不整形地、道路に面していない無道路地、頭上に高圧線がある土地なども減額要素を持った土地となることも知っておきたいものです。

土壌の調査方法

続いて土壌の調査方法についてみていきましょう。

相続する土地が土壌汚染地の可能性がある場合、土壌調査を行う必要があります。しかし どの企業でも土壌調査を行なえるわけではありません。土壌汚染対策法に基づいて環境大臣や地方環境事務所長、都道府県知事がなどに指定されている調査機関に依頼する必要があります。

近くにどんな調査機関があるかを調べる場合は、以下に参考として記載している『土壌汚染対策法に基づく指定調査機関』環境省のページを参考にしてください。

※参考:『土壌汚染対策法に基づく指定調査機関』環境省

R2.1.28現在、指定調査機関は全国に720件あります。お住まいの地域を選択した後、「全国一覧・都道府県別一覧(五十音順)」・「環境省担当窓口別一覧」・「指定番号順一覧」といった3つの検索方法があります。

「指定番号順一覧」は知人などから業者を紹介された場合に、指定調査機関であるかどうかを調べるのに便利でしょう。

土壌の調査は環境省の土壌汚染地の調査方法の施行規則やガイドラインにもとづいて行われ、「土壌汚染状況調査結果報告書」が発行されます。 調査にかかる費用は約20万円~50万円の間が相場です。依頼する調査業者や土地の大きさによって異なるため、事前見積りも忘れずに依頼しましょう。

土壌汚染地の相続について

ここからは土壌汚染地を相続する際に知っておきたい評価方法について詳しくご紹介します。評価額を計算する方法は、原価方式、比較方式、収益還元方式の3つあり、一般的に用いられるのが原価方式と呼ばれるものです。

原価方式

原価方式で土壌汚染地を評価する手順は以下3つです。

1.相続する土地の通常(汚染がない状態)の評価額を計算

2.「浄化、改善費用に相当する金額」「使用収益制限による減価に相当する金額」「心理的要因による減価に相当する金額」とよばれる3つの減額金額を計算

3.汚染がない通常の土地の評価額から、2で算出した3つの減額金額を差し引く

次に、3つの減額金額が何を意味するのかを、かみくだいて説明します。

浄化、改善費用に相当する金額とは

土壌汚染地を汚染がない状態へ近づけるために発生する費用のことです。具体的には、土壌汚染を取り除いたり、土壌中に含まれる汚染物質を取り出す、または分解したりする作業費用が該当します。

浄化、改善費用に相当する金額は、原則として、指定機関が提示した見積額を使用して評価されます。しかし実際、汚染物質の種類や程度、範囲、浄化方法によって費用が変動するため、数百万円程度かかることもあります。

使用収益制限による減価に相当する金額とは

土壌汚染地には、浄化・改善後にもリスク管理がつきまといます。そのため、土地の使用用途が制限されることも少なくありません。

「使用収益制限による減価に相当する金額」とは、使い道が制限されることによって、得られなかった利益額のことです。金額はケースによって異なります。

心理的要因による減価に相当する金額とは

相続する土地が土壌汚染地、もしくは過去に土壌汚染地であった場合による嫌悪感によって引き起こされるマイナス要素です。浄化後は、時の経過とともに嫌悪感も減価も少なくなると考えられます。

金額の算出に明確な基準はないため、不動産鑑定士などがこれまでの経験や判例から判断するのが一般的です。

土壌汚染地の評価時の注意点

土壌汚染地であれば評価が減額されますが、課税時期に、指定期間により土壌汚染の状況が分かっている土地に限定されます。可能性だけでは減額対象となりませんので、早めに土壌調査を受けましょう。

また土壌汚染を引き起こした原因が第三者である場合は、浄化などにかかる費用を請求できることもあります。請求できる場合は、回収した費用も相続財産に加算されるので注意が必要です。

土壌汚染地の相続の計算方法

一般的に採用される原価方式以外の土壌汚染地の相続の計算方法を2つご紹介します。

比較方式

比較公式とは、評価対象となる土壌汚染と似た汚染を受けている土地の売買価格を集め、比較することで、評価額を算出する方法です。

メリットとして実情に即している半面、デメリットとしては、似通った汚染を受けている土地の売買価格を集めることが難しいことがあげられます。

収益還元方式

収益還元方式は、その土地を貸すことで得られる純利益とキャップレートとも呼ばれる還元利回りを基準に、計算する方法です。

土壌汚染地の評価額=純収益/還元利回り

土地を賃貸に出す場合は収益性求める評価方法がメリットの収益還元方式。しかし、細かに純利益や還元利回りを算出するのが難しいことはデメリットと言えるでしょう。

土壌地汚染の評価方法としては、非常に判断が難しく現実的でないことから先に紹介した原価方式が採用されるのが一般的です。ただし、収益性をシビアに考えないといけない土地売買や賃貸物件が多い地域の場合は、実情優先でこれらの方法を採用するケースもあります。

まとめ

土壌汚染地の相続は、土壌汚染がない土地と比較すると、相続額が大幅に上がったり下がったりすることが考えられます。相続額によって相続税も変動する為、どの計算方式を選択するかは判断が難しいものです。

相続する土地の近くに化学工場があったり、原子力発電所があったりする場合は、ひとまず相続前に土壌調査を行うようにしましょう。そうすることで、相続税を必要以上に払ってしまうことが避けられます。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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