不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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こちらのページでは、遺産として農地を相続する場合に直面しがちな問題点について取り上げ、その概要や対応策などについて解説しています。
農地には、一般的な住宅とは異なる決まりがあります。
実は所有する農地を他人に売却し、名義変更を行うという場合には、農地法第3条により、農業委員会の許可が必要です(贈与や貸借などでも必要)。実際に農業に従事している方でも、このことをご存知ないという方が意外と多いようです。
なぜかと言えば、これはある種の国策によるもの。簡単に農地が売却できる場合、農業をやめる人が増え、国としての食料自給率が下がってしまうため、それを防止するという意図があるのです。
実際、「相続した田舎の農地を売却しようとしたら、この農地法にひっかかり、目論見が外れた」という事例も、よく聞かれるとのこと。農業とは関係のない仕事をされていて、将来的に農地を相続する可能性のある方は、この点を予め踏まえておきましょう。
その一方で、農地の所有者が死去し、相続が発生したという場合は、農業委員会の許可は不要です。相続による農地を取得することは売買とは異なり、「被相続人の死亡により相続人がその権利義務を承継する」とみなされるからです。
ただし、これまたややこしいことですが、上記の通り相続の許可は不要ですが、平成21年以後は、農地を相続した場合は10ヶ月以内に農地委員会への届け出が必要というルールが課せられました。怠った場合には、10万円以下の科料に処せられる場合があります。これは「耕作放棄地」の増加という社会問題の改善を目的としているからです。
なお、農地を相続した相続人が農業を続ける場合には、納税に関する特例があります。
相続で農地を引き継ぐにあたり、相続人が農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合、一定の範囲で相続税が猶予されるというものです。さらにその猶予された分は、通常納税の義務自体は存在するものですが、次の条件となった場合、免除されるという特典もあります。
以上の通り、農地の相続には、農地ならではの決まりや、特例などがあります。判断に迷ったり、トラブルに直面した場合は、速やかに、弁護士などの専門家に相談するのが賢明です。
親が残した農地があるのですが、兄弟の誰も農業を引き継ぐつもりはありません。また転用できない土地ですから、誰も相続したい者がおりません。どのように処分したら良いでしょうか。
最初に考えられるのは相続放棄です。ただ相続放棄をするには相続財産管理人に報酬を支払う必要がある上に、時間もかかります。最初に裁判所に予納金を収める必要もあり、また予納金は農地の処分に際し余剰金がでなければ返ってこないこともあります。
となると、農地だけであれば、相続放棄よりも10年以上税金を払うほうが安上がりになるケースもでてきます。そして相続放棄をすれば、他の遺産も放棄することになるので他に有益な遺産があれば相続そのものを放棄するのはもったいない話です。それでは農地だけを手放すことはできるのでしょうか。
理想的な処分方法は農業をしたい人を探して売却することです。ですが、地方の農地はなかなか売れないケースも少なくありません。
そのような場合は、農地の貸出や寄付を検討してみましょう。使わない農地はどうしても「不良債権」としてのイメージが付きまといますが、誰にとっても活用できない土地ではありません。売却できるとは限りませんが市町村によっては農業委員会が斡旋してくれまし、農地バンクという仕組みもあります。
父が亡くなった際の遺産はほとんどが農地。また自分はずっと親と同居して農業を営んできました。ですが、親と一緒に住んではいない弟が平等に農地を分与してほしいと訴えています。弟は農地を売りたいと考えているようです。自分が農地を手放せば、ずっと農業を行って生活してきた自分が、これから困ることは目に見えています。どうやって兄弟に相続を諦めてもらえばよいでしょうか。
生計を立てている農地ということで、手放せないというのは理解できますが、もちろん弟さんにも相続の権利があります。農地を細切れにしてしまうと、生活ができなくなることをまずはしっかり話し合って理解してもらいましょう。
また、農業を維持するために協力してきましたし、生活の面倒も見ていたでしょうから寄与分が発生すると考えられます。寄与分を考えれば、法定相続通りに相談者と別居している弟が同額となるのはおかしいと主張することもできます。弟さんが納得されないなら調停や審判となる可能性もありますので、弟さんが納得できるよう対価を支払うなど穏やかに話し合って協議で解決するのが最もよい方法だと思います。
生産緑地とは、市町村の都市計画により農地として保全すべき地区とされている農地のことを指します。 生産緑地制度ができたのは、昭和49年。市街地で緑地が減少し、住環境の悪化が問題視されたため制定されました。そのため、生産緑地があるのは、ほとんどが三大都市圏です。
しかし、首都圏の都市化がさらに進んだことで土地が不足し、地価の上昇も歯止めがきかなくなる中、1992年には農地として保存すべき土地は残しながら、一部分は宅地への転用を進めていくという方向に法律が改正されました。
生産緑地として指定された土地は、農地として管理する義務があり、原則として宅地に変更すること等はできません。そのため、基本的には、その土地に建築物を建てられず、建てられるとしても農林漁業を目的とした用途の施設のみです。
一方で、宅地と比べて非常に固定資産税が安いことや、前述のような相続税の納税猶予を受けられるという優遇措置があります。
農地を継ぐ人がいない場合等の一定の場合には、市町村長に生産緑地の買取を申請することが可能ですが、市町村長に買取の義務があるわけではなく、買い取ってもらえないこともあります。
実際のところは市町村の財政上の理由により、ほとんどの場合、買い取ってはもらえないようです。その際は、申請から3ヵ月後に生産緑地の解除が行われ、農地以外での土地利用が可能となります。
しかし、生産緑地の解除については条件が厳しく、仕事の都合により農業への従事ができないといった理由では制限の解除はされませんので、生産緑地を所有することが大きな負担になっている所有者は少なくありません。
このように、農地として活用しない場合は買い取ってもらえず、転用もできないため、所有者にとって負担の大きい生産緑地。しかし、2022年には多くの生産緑地が宅地として売却可能になると予想されています。
上述の通り、生産緑地法は1992年に改正されましたが、そこには改正後から30年後、2022年に生産緑地所有者は市町村長に対し、当該生産緑地を時価で買い取るよう申し出を行うことができることが記されているからです。財政上の理由からほとんどの市町村長が買い取ることは不可能と思われますので、多くの生産緑地は指定を解除され、宅地として売却されると考えられています。
2015年版の都市計画現況調査によると、生産緑地は日本全国で13,442ヘクタール。この広さは東京ドーム2,860個分とかなり広大です。関東地方の状況は、東京都では3,296ヘクタール、横浜市では307ヘクタール、埼玉県では1,792ヘクタール、千葉県では1,175ヘクタール。この広さは1区画だけでも500平方メートル以上とまとまった広さがあるので、宅地だけではなく、マンション開発の候補地とすることも可能です。
2022年にこの広大な生産緑地が一気に市場に流出した場合、不動産価格の下落は避けられないと言われています。生産緑地以外に余分な土地のある方は2022年までに売り、反対に土地を買いたい方は2022年を待つのが賢い選択かもしれません。
生産緑地の所有者やその後継者でない方でもこの問題は無縁ではありません。例えば、自分は都心のマンションに住んでいても、両親が所有する実家が郊外の一戸建ての場合、その実家を両親から相続しても、2022年以降は売却しようにも売却できない状況も考えられます。人口の減少も2022年の地価の下落に拍車をかけるとも言われています。
現在生産緑地を抱えている場合は、2022年の指定解除の際にどうするか、できるだけ早めに対策することが大切です。
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