不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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被相続人が生前に再婚していたり、相続人で異母・異父の兄弟姉妹がいたりする場合、遺産相続においてどのような影響が出るのでしょうか。このページでは、再婚が相続問題に与える影響や、注意すべきポイントなどについて解説しています。
現行の日本の法制度では、被相続人の現在の配偶者は相続人として遺産相続の権利を持ちます。これは被相続人の性別にかかわらず、また配偶者が妻にせよ夫にせよ同様です。
しかし、婚姻によって結びついた配偶者との関係は戸籍上のものであり、実子との間にあるような血縁関係ではありません。そのため、例えば被相続人が亡くなる前に配偶者との離婚が成立していれば、その時点で前妻や前夫の相続権は消滅し、遺言書などで改めて指定されていない限りは遺産を相続することもできません。
反面、婚姻期間が極めて短くとも、被相続人が亡くなる前に再婚が成立していれば、新たに配偶者となった妻や夫にはそれぞれ相続権が発生し、相続人となることができます。
被相続人の息子や娘といった子供については、配偶者が誰であれ、被相続人との親子関係が生じることに違いありません。そのため、例えば被相続人と前妻との間に子供が2人いて、後妻との間にも子供が1人いた場合、3人の子は全員が均等の相続権を有することになります。
そしてこの際、それぞれの親である被相続人と各配偶者との婚姻期間や暮らし方などが、法的に相続権へ影響することもありません。
初婚や離婚、再婚などに関係なく、そもそも被相続人と一度も婚姻関係にない相手が産んだ子供であったとしても、それが被相続人の子供であれば相続権は他の嫡出子と同様に認められます。
かつては、嫡出子(父母の婚姻期間中に生まれた子)と非嫡出子(父母の婚姻関係がない状態で生まれた子)との間で相続権の格差があったこともありました。しかし、現在は法改正が行われ、平成25年9月5日に発生した相続において子供の間での相続格差は解消しています。
被相続人と再婚相手の配偶者、そして子供の関係について考える場合、再婚時に配偶者がすでに別の相手との子供(連れ子)を産んでいることもあるでしょう。
この場合、一般的には連れ子も被相続人にとって義理の息子となり、親子関係が成立していますが、一方で連れ子との親子関係においては相続権が発生しません。そのため、他の兄弟姉妹は全員が被相続人の遺産を受け取れたとしても、連れ子だけが何も相続できないといったケースも十分に起こりえます。
連れ子へ遺産を相続させようと思えば、以下のように大きく2つの方法が考えられます。
連れ子を相続人にする最も具体的かつ効果的な方法が、養子縁組によって親子関係を結ぶことです。養子縁組で被相続人の子になっていた場合、他の実子と同様に相続権を得ることができます。
また、養子縁組をしようとしても、手続きが間に合わなかったり、他の子供らの反対などでなかなか進められなかったりすることもあるでしょう。その場合、生前に遺言書を作成しておき、その中で連れ子も相続人として認めておくといった方法があります。
遺言書を作成して、自分の財産をどのように分配するか決めることは、全ての人に認められている権利です。そのため、連れ子であっても、全くの他人であっても、相続人として考えることはできます。
ただし、遺言書による財産の遺贈の場合、他の相続人の法定遺留分までを侵害することはできないため、全額を連れ子へ相続するといったことは難しいかも知れません。
連れ子との養子縁組で相続権を発生させることが可能ですが、養子縁組ではいくつかの注意点があります。
普通養子縁組は、一般的にイメージされる養子縁組といえるでしょう。被相続人は連れ子の養父となり、連れ子(養子)との間で親子関係が構築されます。また、他の子供と被相続人との親子関係は維持されており、結果的に相続人の数が増えるということになります。
なお、普通養子縁組では、連れ子の実親との関係が維持されている点も重要です。これにより、連れ子は被相続人からの遺産を相続できるだけでなく、実親からの遺産も相続できるようになります。つまり、連れ子(養子)は実の両親と、養親の、3名からの遺産を相続することが可能です。
当然ながら、被相続人の実子と、養子の実親に親子関係はないため、他の子供まで相続権が拡大されるといったこともありません。
特別養子縁組は、連れ子と実親との親子関係を消滅させた上で、改めて養子縁組を結んで養親・養子の親子関係を構築する制度です。この場合、抹消された親子関係に応じて、実親との間にあった相続権も消滅します。
ただし、特別養子縁組は親子関係を消滅させるという重大な制度であり、それが可能であるかどうかの基準は普通養子縁組よりも厳格です。そのため、相続問題を解決することだけを理由に養子縁組をするのであれば、基本的に普通養子縁組を選択します。
養子縁組を行える人数に上限はありません。そのため、当人らの同意があれば、養子の数を増やして相続権も細分化していくことは可能です。
しかし、相続税に関して税額控除を受けようとする場合、養子の数には制限が定められています。
相続税の控除に関する養子数の制限は、「実子がいる場合の養子は1人まで、実子がいない場合の養子は2人まで」として定められています。それ以上の養子がいても、基礎控除の計算に加えられないので注意してください。
離婚・再婚は、しばしば遺産相続でトラブルの原因になり得ます。
例えば、被相続人である男性には、生前に前妻との間に1人の実子Aがおり、さらに晩年に再婚した後妻との間にも1人の実子Bがいるとします。この場合、それぞれの子供は異母兄弟・姉妹の関係にあり、被相続人の子として同等の相続権を有します。
しかし、被相続人の配偶者として後妻へ受け継がれた遺産分は、やがて後妻が亡くなった際、全てが後妻と被相続人との子供である実子Bへ相続されることになるでしょう。
すると、結果として実子Aが受け取れる父親の財産は全体の4分の1となり、残りは実子Bが受け継ぐといった形になります。
このような場合、実子Aと実子Bや後妻との間で確執が生じるケースもあります。
その他にも、前妻との子供はすでに独立しており、後妻の連れ子が被相続人の晩年の世話を全てしていたものの、きちんと養子縁組をしていなかったことが原因で、最期まで被相続人に寄り添っていた連れ子が遺産を相続できないというケースもあり得るでしょう。
また、前妻と離婚する際に子供とも別れてしまって現在は所在不明という場合や、外国人の前妻が子供を連れて帰国してしまったような場合で、相続人の所在が確定できなければ、そもそも遺産協議を行えないといった問題もあり得ます。
相続権はあくまでも相続法が根拠となるために、離婚・再婚で問題が生じないよう被相続人は生前にきちんと対策しておくことが肝要です。
被相続人の死後、誰が相続人として権利を持つのか、被相続人の生前にきちんと把握しておくことが重要です。
子供がたくさんいて所在が不明な場合はもちろん、遺言書によって相続人を指定している場合でも、法定遺留分のことを考えれば、しっかりと相続人になり得る人物を特定しておくことは欠かせません。
また、養子縁組などの手続きも必要に応じて完了させておきます。
被相続人の遺志をまとめた遺言書は、相続問題のリスクへ対処する方法として有効です。
遺言書には複数の形式や作成法がありますが、一般的には被相続人(遺言者)が自ら作成する自筆証書遺言と、遺言者と公証人に加えて証人2名の立ち会いの下で作成される公正証書遺言があります。
被相続人の死亡時に受け取れる保険金について、あらかじめ被相続人が特定の人物を受取人として指定していた場合、原則として保険金は全て指定された人物へ支払われます。なお、当該保険金は遺産分割協議の対象にもなりません。
昭和時代と比較して、令和の現代では人々のライフスタイルも多様化が進んでおり、離婚や再婚といったケースも増えています。しかし、それに合わせて遺産相続のトラブルも増加傾向にあると考えられ、さらに複雑化することもあるでしょう。
特に家族間の確執や争いは経済的なストレスだけでなく、精神的・肉体的なストレスになることもあり、法的に認められた第三者として弁護士を介しながら、冷静かつ適正に処理していくことが肝要です。
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