不動産相続の疑問やお悩みについて、徹底解説
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不動産相続に関する問題は、いったい誰に相談すれば良いのでしょう?
相続に関する専門家といっても、弁護士、税理士、司法書士、銀行など、いわゆる「専門家」に該当する相手はいくつか挙げられます。どの窓口に相談すべきか判断に迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
こうした法的手続きは一般人には仕組みが理解しにくく、実際に相談にいってみたが、他の専門家に聞かないと手続きが進まない、といったケースも珍しくありません。どうすればスムーズに手続きができるのか、しっかり調べてから動き出すことが重要です。
ここでは、ケース別にどの専門家に依頼すべきなのかについて詳しく解説しているので、ご自分の状況に当てはめて参考にしてみてください。
東京スカイ法律事務所監修:田中健太郎弁護士(第一東京弁護士会所属)
このページは東京スカイ法律事務所の田中健太郎弁護士に監修していただいています。
同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持しており、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
メール・電話での相談やLINEからの予約にも対応しているので、気になる事があれば気軽に質問してみましょう。
結論から言うと、不動産相続の相談ができるのは、以下の4種類の専門家です。
それぞれがどのような業務を行うのか、順番に見ていきましょう。
弁護士が行う業務は以下の通りです。
弁護士に相談することで、遺産を分割させるときに交渉したり、分割方法を適切に選択することでトラブルを回避できます。相続時には遺産の分割で揉めることが多いのですが、法律の専門家が介入することで、正確で公平な手続きを進めることができるようになるのです。
また、遺産を調査したり放棄したりするときの手続きも弁護士に依頼できます。名義変更の手続きなど複雑な手続きをまとめて依頼することが可能です。
初めての相続だけでなく、二次相続やトラブルが起きたときに相談しやすいのも弁護士です。
もし、すでに相続に関するトラブルが起きており、相手方も弁護士を立てている場合には紛争がさらに激しくなる危険性もあるので、後々のトラブルを回避するためにも、経験豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
税理士が担当する業務は以下の通りです。
生前贈与を行って相続税を節税したいときや、相続人同士の話し合いを終えている場合には、税理士に依頼することで手続きを進めることができます。ただし、今後話し合いで揉める可能性があるのであれば、トラブルに備えて弁護士に相談しておく方がスムーズに問題を解決できるでしょう。
一方、相続税や事業継承に関わることを依頼するなら、税理士で対応可能です。
司法書士が担当する業務は以下の通りです。
司法書士が行う業務は、不動産登記の手続きです。相続した不動産を売却するにしても、保有するにしても、名義を変更する必要があります。名義変更の手続きは自分でも行えるのですが、不動産の買主が嫌がることもありますので、専門家に依頼する方が無難でしょう。
代をさかのぼって相続人を確定させたり、不動産が複数あったりする場合には、手続きの負担が多くなることから、司法書士に依頼することが考えられます。自分で手続きをする場合、書類不備があれば毎回法務局に行かなければならなくなり、手続きが難航してしまう可能性があります。
信託銀行が担当する業務は以下の通りです。
信託銀行が行えるのは、主にサポート業務です。実際の手続きを行うことはできませんが、遺言書の書き方や遺産分割に関する知識面でのアドバイスなど、個々の状況にあったサービスを提案してくれます。
大きな金融機関による総合的なサポートを受けられるという安心感がありますが、その分、実際の手続きを下請けの業者に依頼するので費用は高めとなります。
弁護士は多種多様な法律問題を取り扱える、法律の専門家です。司法書士を同じような業務内容と思っている方もいますが、実は業務範囲は大きく違いがあります。弁護士への相談は、主にトラブルを解決したいときに検討すべき方法です。
例えば、すでに相続についてトラブルが起きていることがあります。遺産相続をどのように分割するのか裁判で決めることを望んでいる場合などは、弁護士を頼るしかありません。裁判になった場合にも、裁判所で代理権を持っているのは弁護士だけです。
また、相手の相続人との交渉を依頼することができます。財産目録などを司法書士に作成してもらうことはできますが、交渉ができるのは弁護士です。裁判になる前に、弁護士に話し合いの間に入ってもらって交渉することも考えられます。第3者の弁護士が間に入ることでスムーズに話し合いを進めることができるのです。
税理士が行う主な業務は、税務申告に関する手続きです。もし3600万円以上の相続財産がある場合には、税理士に依頼することを検討してみると良いでしょう。
節税方法や税務調査の対策についても相談できますが、不動産相続の場合には、相続税が発生するケースはほとんどいないと言われています。
ひとつ注意しておきたいのは、全ての税理士が相続税に詳しいわけではないということ。実は、税理士試験では相続税は選択科目でしかありません。つまり、相続税について勉強しなくても税理士資格を取得可能。税理士の資格を持っているからと言って、相続税のことを詳しく把握していないことも考えられるのです。
また、弁護士と違って代理権を持たないため、相続で揉めてしまった時には頼ることができません。
司法書士が行うのは、不動産の名義変更です。不動産相続の場合には、そのまま保有するか売却するかを選択することになりますが、いずれにしても名義変更の手続きをしなくてはなりません。
不動産に担保が設定されている場合には抵当権抹消登記が必要になり、売却する場合は買主への名義変更が必要です。名義変更は自分で行うこともできますが、スムーズに進めるためには、専門家に依頼するのが賢明でしょう。
弁護士と比較した場合、比較的相談費用を抑えられることがメリット。弁護士に相談する場合は5,000円から20,000円くらいが相場ですが、司法書士はそれよりも費用が安く、無料で相談できる場合も多くあります。相続のトラブルが発生しておらず、名義変更のみの場合には司法書士に相談するという選択肢を検討してみると良いでしょう。
ただし、司法書士には代理権がないので、裁判の手続きや調停・協議などを代理で行うことはできません。
信託銀行に相談する場合、トータルの費用が高くなってしまう点に注意。大手の銀行に手続きをしてもらえば安心感は得られますが、実際の手続きは提携先の専門家に依頼する形になるため、その分の報酬も必要になります。それぞれの窓口に自分で相談するよりも費用が嵩んでしまうので、費用を抑えたい人にはおすすめできません。
また、相続に関して紛争が発生してしまった場合には、遺言執行者の業務ができないということも覚えておきましょう。
不動産相続の相続をする相手の選び方を解説します。その分野に強い専門家を探すことで、より円滑に手続きを進められます。
弁護士はそれぞれの事務所によって強みのある分野が異なります。当然、不動産相続については不動産相続に強い弁護士事務所を探す必要があります。これまで相続問題を解決してきた実績があり、相続問題に精通している弁護士なら安心して依頼できるでしょう。
基本的に、弁護士のホームページには得意としている分野が記載されています。相続問題に力を入れている事務所であれば、専用のホームページが用意されていることが多いはず。まずはネットで情報収集してみましょう。
その上で、相談実績や費用の目安などが判れば安心ですよね。初回相談を無料で行っている弁護士事務所もあるので、そこで気になることを聞いてみるのもおすすめです。
税理士に依頼する場合には、相続に強い税理士を探さなければいけません。事務所のホームページをよくチェックして、相続税問題の実績がある税理士に相談しましょう。
また、不動産の価値を正しく判断するために、現地調査をしっかりと行ってくれる税理士を選ぶことも重要です。正しい不動産の価値判断は、相続税を適切に支払うために必要です。周辺の状況や不動産を確認して、価値が下がるポイントがあるなら適用してくれる税理士に依頼すると、税金を節約することができます。
不動産以外の遺産についても相談に乗ってくれたり、解決策を提案してくれたりする税理士なら安心ですね。場合によっては無料相談を実施している税理士を探して、実際に相談してみると良いでしょう。
司法書士に依頼するのであれば、料金の説明がしっかりしている事務所が良いでしょう。司法書士は業務内容に合わせて費用を設定していますが、費用の説明が不十分だと、報酬を要求された時にトラブルになることがあります。どの業務にどのくらいの報酬が必要となるのか、具体的な説明をしてくれる事務所なら安心です。
さらに、税金に関する知識がある司法書士であれば、税金を節約できる可能性があります。もちろん専門は税理士になりますが、知識があれば有効なアドバイスをしてもらえることもあるので、できれば税金に詳しい税理士を選びたいものです。
また、コミュニケーションがとりやすい司法書士もおすすめです。連絡が取りやすかったり、進捗をすぐに報告してくれたりと、対応が早い司法書士は安心して依頼できます。逆に、すぐに連絡が取れなかったり、どこまで手続きが進んでいるのか教えてくれなかったりする司法書士に依頼すると、不安になってしまいますよね。
一般的に、信託銀行は不動産相続の相談で利用することはほとんどないでしょう。手続きを依頼しても直接業務できるわけではないので、実際の手続きは下請けに依頼することになり、費用も高額になるからです。
ただし、故人が信託銀行と付き合いが長い場合には、信託銀行に任せてしまうことを考慮すべきケースもあります。一時的なメリットよりも、長期的に良い関係を築いておきたいなら銀行を視野に入れても良いでしょう。
とはいえ、動産相続業務を信託銀行に依頼したとしても、手続きをする際に相続人が出向かないといけないことにメリットがありません。相続した不動産を信託銀行に預けて運用するなどがない限り、信託銀行で手続きをすることはおすすめできません。もしも不動産相続で揉めてしまった場合を考慮するなら、法律の専門家である弁護士に依頼する方がメリットが大きいと言えます。
不動産相続に関するトラブルに関しては、もっとも広い範囲で解決してくれる弁護士に相談しておくのが無難と言えます。もし相続人同士で揉めてしまった場合にも、先手を打っておけば安心です。
依頼する弁護士を選ぶ場合には、まず不動産相続に強い事務所であること、そして不動産登記まで取り扱っている事務所であることが重要です。
しっかりと情報を集めて適切な弁護士を味方を付けることができれば、相続をスムーズに進められるだけでなく、費用を節約することにも繋げられます。