代償分割と不動産担保ローンについて

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このページでは、代償分割として他の相続人へ現金を支払いたくても必要なお金が手元にない場合に、不動産担保ローンを活用して代償分割の資金を調達する方法や、不動産担保ローンを利用するメリット・デメリットなどをまとめています。

不動産担保ローンを利用した代償分割とは?

代償分割とは?

代償分割とは、例えば特定の相続人だけが高額な不動産を相続した場合に、他の相続人との公平さを保つために、差額にあたる費用(代償金)を不動産相続者が他の相続人へ現金で支払うといった方法です。

例えばABCの3人の相続人がおり、Aが1千万円の不動産を相続して、BとCがそれぞれ100万円ずつの現金を相続した場合、Aの相続分だけが大きくなってしまいます。そこでバランスを保つために、AがBとCへそれぞれ300万円ずつを現金で支払い、結果的に全員が400万円分の相続を叶えるといった方法が代償分割です。

不動産担保ローンとは?

不動産担保ローンとは、文字通り不動産を担保として金融機関から融資を受けるローンです。

代償分割を実行しようにも、差額分をまかなえる現金が手元になくて支払いを行えない場合、相続した不動産を担保にして現金を融資してもらうといった方法があります。

不動産担保ローンは一般的に、無担保ローンと比較して金利が抑えられており、借入金の使途が限定されないという点も重要です。そのため、毎月の返済は発生するものの、無理のない範囲で不動産担保ローンを活用できれば、相続問題を速やかに解決して新しい不動産事業を承継できるといった可能性が広がります。

代償分割の支払いに不動産担保ローンを組むメリット

必要な現金を手元に用意できる

代償分割の支払いに不動産担保ローンを活用する大きなメリットは、現時点で手元に現金がなくても代償分割を完了できるという点です。

融資を受けている金融機関に対して、借入金の返済義務は発生しますが、相続問題が長期化すればさらに色々な問題が発生するリスクもあり、速やかな解決を目指せることは重要でしょう。

低金利で長期のローンも期待できる

不動産担保ローンは最初にしっかりと不動産を担保とするため、無担保ローンよりも金利が抑えられています。また、高額な融資や長期の返済期間といったことも実現しやすくなっており、毎月の返済金を少額で抑えられることは大きなポイントです。

不動産を所有したままでいられる

不動産担保ローンは、不動産を売却して現金化するのでなく、あくまでも金融機関からの融資です。そのため、不動産を所有したまま資金調達をできることは重要といえます。

不動産を所有しているからこそ、賃貸事業などへ速やかに活用することも可能であり、相続発生から早期の段階で不動産の収益化を図っていけることはメリットです。

代償分割の支払いに不動産担保ローンを組むデメリット

不動産の価値が低ければ十分な資金を調達できない

不動産担保ローンにおける融資額は担保として設定する不動産の価値によって左右されます。そのため、相続した不動産の価値が低ければ、不動産担保ローンを申し込んでも融資してもらえる金額はあまり大きくなりません。

十分な資金調達ができなければそもそも代償分割を実行することも困難であり、その場合は不動産を売却するか、改めて自分で代償分割のための現金を用意することが必要です。

諸費用が発生する

不動産担保ローンでは登記費用や事務手数料、不動産鑑定料といった諸費用が発生することもあります。融資条件や不動産の種類などによって諸費用の内訳や総額は変わってきますが、利息以外の支払い分が発生するかも知れないと考えておくことが大切です。

不動産を差し押さえられるリスク

不動産担保ローンでは不動産を担保として融資を受けているため、もし融資の返済が滞れば、最悪の場合その不動産を差し押さえられてしまう可能性もあります。

せっかく代償分割で不動産を手に入れたとしても、返済金が支払い困難になって不動産を手放してしまうことになれば本末転倒です。

代償分割で不動産担保ローンを組む上で注意すべきポイント

相続税の申告期限と不動産担保ローンの審査期間

相続税には申告期限が定められており、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に申告と納税を完了しなければなりません。

一方、不動産担保ローンを申し込んでも、金融機関によるローン審査が終わらなければ融資金が振り込まれることもありません。また、不動産担保ローンの審査は申込みから決定まで1ヶ月単位で時間がかかることもあります。

そのため、相続が発生してから速やかに不動産担保ローンの申請を行っていなければ、不動産担保ローンで資金調達をする前に相続税の申告期限が訪れてしまうといった状況も考えられます。

返済シミュレーションを事前に行う

不動産担保ローンを申し込む場合、金利に関して変動金利と固定金利のどちらを選択するか最初に考えることが不可欠です。

変動金利は社会情勢の変化などに応じて金利が変化するという契約であり、場合によっては金利が下がる可能性もありますが、逆に金利が増大して返済額が当初の予定より上がってしまうケースも考えられます。

反対に固定金利では、金利変動について考える必要がないものの、そもそもやや高めの金利設定になっている上、変動金利で金利が下がっても相変わらず同じ金利で支払いを続けなければなりません。

人生においてどのような出来事が発生するのか、事前に全てを予測することはできませんが、自分なりの将来計画やライフイベントなども考えながら具体的な返済シミュレーションを行うことは大切です。

信頼できる借入先から融資を受ける

不動産担保ローンは長期にわたって返済していく可能性もあり、融資元との付き合いも相応に長くなります。

そのため、金利の安さにばかり注目するのでなく、本当に信頼できる金融機関を選んで融資を申し込むことが重要です。

不動産担保ローンは相続税や遺留分の支払いにも活用可能

不動産担保ローンの特徴として、融資を受けたお金の用途が制限されないという点が挙げられます。そのため、代償分割の資金として支払えることはもちろん、相続税の納税や遺留分の支払いといった目的でも融資金を使えることがポイントです。

様々な用途で使える不動産担保ローンですが、当然ながら金利が発生して利息分はマイナスになるため、あくまでも適切な使い方やそもそも不動産担保ローンを活用することが必要なのかどうか、事前にしっかりと検討しておくことが欠かせません。

まとめ

不動産の相続は単に金銭的な価値だけで話し合いが進むものではありません。場合によってはどうしても不動産を現金化せず、そのまま相続したいと考える人もいるでしょう。そのため、代償分割や不動産担保ローンによって相続問題を解決できることは大切です。

しかし、代償分割のための資金を不動産担保ローンで調達するということは、相応の負債を抱えるということでもあります。

自分にとって不動産担保ローンの使用が本当に必要なのか、どの程度の融資額が将来的にバランスを保てるのかなど、しっかりと考えてプランニングするようにしてください。

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このページの監修
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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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