東京の「土地」を相続する際の注意点

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このページでは、東京で土地を相続する際の注意点について紹介しています。

土地の相続に際しては非常に多くの税金がかかることが多く、それが地価の高い東京であるならなおさらです。事前に重要なポイントを抑えておくことで、相続後に苦労するようなことがないよう備えるようにするといいでしょう。

東京では4人に1人が相続税を支払う必要がある

現在の相続税の規定では、相続税の控除額は「3000万円+600万円×相続人」とされています。この金額を上回る相続が発生する場合は、相続税の申告が必要となります。

東京においてこの条件に該当するのは、全体の25パーセントという試算がされています。これは東京の土地自体が他の道府県と比べて価値が高く、相対的に相続額全体が膨れ上がる傾向にあるからです。

相続額を抑えるための工夫

相続において、やはり大きなウエイトを占めるのは土地です。

すなわち、土地自体の価値を下げることができれば、相続の総額を圧縮して相続税の支払いを抑えられるだけでなく、場合によっては基礎控除内に留めることで、相続税そのものの支払いをしなくてもよくなるというケースもあります。

では、土地の価値を下げるにはどのようなことをすればいいのでしょうか。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、亡くなった人やその人と生活を共にしている家族が相続する土地について、条件を満たすことで評価額を減額してもらえる、というものです。

場合によっては80パーセントもの減額ができるケースもあるので、相続税支払いの際には必ず抑えておきたいものとなります。

小規模宅地等の特例を受ける条件

小規模宅地等の特例が適用されるためには、相続前の用途に加え、相続後の取得者や、利用状況についての条件を満たす必要があります。

相続前の用途

相続前の用途の条件となるのが、亡くなった人や一緒に住んでいた人が、事業用や居住用としてその土地を使用していた場合になります。

日常的に使用していることが条件のため、別荘などは該当しません。また、亡くなった人と生活を共にしていない親族が使用している土地も対象外となります。

相続後の宅地の取得者と利用状況

亡くなった人が居住用などで利用していた土地は、相続をした人も同じように使用する必要があります。

また、相続税の申告期限である相続開始の翌日から10カ月間、継続して利用していることも要件の一つとなることがあります。

亡くなった人の事業用の土地については、取得者はその事業を承継する親族であり、なおかつ引き続き土地を利用する必要があります。

家族の居住用の土地は、同居していた家族が引き続き住むことが条件です。

なお、居住用の土地に関しては、配偶者であれば、継続利用については問われません。

面積の要件

小規模宅地等の特例には、免責についても定められています。小規模宅地等の特例は、事業・居住のため土地を手放せない人を救済するための制度となっているため、大きな面積の土地については条件から外れるのです。

気になる面積の上限ですが、事業用宅地等(特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等)であれば400平方メートル、居住用宅地などであれば330平方メートルとなっています。

なお、両方に該当する土地の場合には、この二つを併用することができます。つまり、合計で730平方メートルまで適用することが可能となるのです。

小規模宅地等の特例を利用するコツ

もし、土地が複数ある相続の場合には、小規模宅地等の特例に関しては土地単価の高い土地に適用するといいでしょう。それによって、全体的な相続税の圧縮ができるようになるからです。

相続は早い段階から準備を

このように、相続をするにあたっては、準備を進めておくことで相続税の支払いを安くすませることができる制度があります。

ただ、この準備というのが意外に手間取るもの。被相続人が存命の場合、相続の話をすること自体に気が引ける、ということもあるでしょう。

被相続人が亡くなってしまってからでは、故人の遺志を100パーセント汲んだ相続はできません。また、相続の割合、相続税の支払いの割合など、きちんと話し合いをしておかなかったばかりに、遺族の間でトラブルが生じるというケースもあるでしょう。特に親子間での相続であれば、自分の残した遺産が理由で子どもたちが仲違いするということになれば、いたたまれません。

相続に関しては前もって準備し、適用を受けられる制度についてはフルで活用するようにしておくことで、相続人全体の負担が減り、結果として良好な関係を保ちながら相続を進めていくことができるようになるはずです。

可能であれば、被相続人が元気なうちに、明確な形で話し合いをしておくようにしましょう。それが、トラブルを避けるための最善の策となります。

東京の土地の相続事例

収益の出ていない土地の相続

ある70代の不動産オーナーの方には、奥さんと2人のお子さんがいます。300〜400坪程度の土地を複数所有していますが、有効活用できておらず、利益はあまり出ていない状態でした。

それらの土地を使って効率よく収入を得ると共に、どのような形で相続するのがいいかを考えていました。

最初は平等に分割すれば問題ないと考えていたのですが、実際には財産の分け方を間違えると、節税ができないケースもあります。

そこで今回は、専門的な知識をもつアドバイザーに依頼し、財産分析書を作成してもらうことになりました。その中で収益性の低い土地を洗い出し、その土地の活用方法を相談。貸店舗(建設協力金方式)、定期借地、賃貸住宅、テナントビル、青空駐車場などさまざまなケースで綿密なシミュレーションを行い、結果として適した方法で運用をできるようになりました。土地の相続に関しては、所有している土地にどのような価値があるのかをしっかりと見極めなければいけません。

相続税対策という意味でもそうですし、相続された側の負担になってしまってもいけないからです。こうした点は、きちんと専門家に相談して進めていくべきでしょう。

相続された土地を放置していたケース

80代で、4人のお子さんがいる方の土地相続のケースです。ご主人を2年前に亡くしていたのですが、相続についての知識が全くなく、2年間にわたって一切の手続きをしていなかったそうです。

保有している資産は、駅近くにあるご自宅と700坪の農地。本来であれば10ヵ月以内に相続税を支払わなければいけなかったのですが、払わないまま期日は過ぎてしまっています。ただ、気づいたときに急に支払えるほどの現金はありません。

そして、相続をされた段階では自身とお子さん4人、ご主人のお兄さんと、6人が農地の権利を持っている状態となっていました。そのまま自身がなくなってしまえば、子どもたちや親族間でトラブルにもなりかねない状態です。

そこで、まず相続税の支払いについて確認し、すぐに納税。また、農地に関しては現金化することで話をすすめ、全員の承諾を得られたことから、滞りなく売却手続きを終えることができました。

相続に関しては、知らないでは済まされない問題がさまざまなケースで考えられます。相続をする際には、前もってどんな手続きが必要なのか、どのくらいの手間、そしてお金が必要になるのかを調べておくことで、いざというときに慌てず対処できるようになるでしょう。

持てあましている土地があった場合

50代後半の女性は、80歳になる母親と一緒に暮らしていました。父親は数年前になくなっています。近年は母親も体調が思わしくなく、認知症の疑いがあることから、この女性が介護をしている状態が続いています。

二人が暮らしている家は女性の名義となっており、また家と会わせて250坪の敷居も不動産として所有しています。ただ、収入はそれほど多くなく、介護費用などを考えると今後の生活に不安があるということでした。

そこで専門業者が調査をしたところ、土地の内半分ほどは有効活用されていない状態であり、賃貸アパートなどを建築することで土地を生かすことが可能であると分かりました。

ただ、介護費用などを考えた場合、継続的な収入よりもできるだけ早くまとまった資金を得たいということから、自宅部分の土地を除き、売却をすることにしました。

これによって大きな額を得ることができ、介護費用を捻出することができました。

土地に関しては、不要なものについては売却をするという選択肢もあります。土地はそのままでは複数の相続人がいるときにトラブルを招きやすいのですが、売却して現金化してしまえば、金銭として分けやすくなります。土地の扱いに困っているときは、売却をするのも一つの方法だと頭に入れておくようにしましょう。

相続した土地を手放せない

40代の女性は、20年ほど前に田舎の実家を離れ、東京都内で旦那さんとお子さんと暮らしていました。

母親は既になくなっており、田舎の実家では父親が一人で暮らしていたのですが、その父親とはあまり仲が良くなく、帰省することはほとんどなかったそうです。その父親が亡くなり、女性は400坪ほどの土地を相続することになりました。

ただ、女性は田舎に戻るつもりはなく、活用方法も分からないことから、そのまま固定資産税を払って所有し続けるよりも、売却して現金化したい、という意向を持っていました。

400坪となると一般の人に売却をするのは難しそうなので、業者に相談して調査をしてもらったところ、開発行為に必要な4mの道路を確保する必要があること、そして父親がこの土地を放置していて不法投棄などがあり、近隣住人の反発を買っていたことから、道路の確保の協力もしてもらえないということが分かったのです。こうなると土地の売却は非常に困難を極めます。

不動産の相続が発生しうる場合、事前にどのような条件・環境の不動産なのかということは、前もって調べておく必要があるでしょう。そして問題があるとわかったならば、すぐに手を打っていくことをおすすめします。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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