Q.差押え不動産の相続トラブル事例はある?

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不動産を相続することが決まっても、手放しで喜んでばかりもいられません。なぜなら、相続した不動産が差押さえられたものであった場合、トラブルに見舞われる可能性もあるからです。ここでは、そんな差押さえられた不動産の相続について、実際のトラブル事例を紹介しながらポイントを解説していきます。

差押さえられた不動産の相続トラブル事例

とある街に住んでいた二人の女性姉妹が経験した不動産の相続事例を紹介します。

あるとき、その姉妹は役所から通知を受け、自分たちが父親の残した不動産(マンション)の相続人になっていることを知ります。しかし、父親は二人が子供の頃に母親と離婚して以来、一度も会ったことがなく、二人を育ててくれた母親も既に他界しており、何がどうなっているのか、父親の財産状況を含め、詳しい話を聞ける人がいませんでした。

そこで困惑した二人の姉妹ですが、少しでも前に進もうと自分たちなりに調査を開始します。その結果、自分たちが相続することになったマンションは債権者によって差押さえられており、父親には借金(税金の滞納)があることも分かりました。もしも二人がマンションを相続すれば、父親の残した借金も受け継ぐことになるという状況です。

財産を相続すべきか、放棄すべきか、借金はどうなるのか二人は悩んだ末、役所から届いた通知書を持ってとある司法書士事務所へ駆け込みます。

以上が、差押さえられた不動産の相続トラブルの事例です。さて、この問題はどのように対処したらいいでしょうか。姉妹が頼った司法書士事務所の担当者はどのようなアドバイスを二人に授けたのでしょうか?

トラブルのポイント

解決編を紹介する前に、まずは今回のトラブル事例のポイントを押さえておきましょう。それはずばり、父親が残した借金(債務)と相続財産では、どちらの金額が上なのか?ということです。

相続財産のマンションを売却することにより、父親が残した全ての債務を弁済することができ、かつ財産が余るのであれば、迷わず財産を相続すればいいでしょう。しかし、財産の売却代金より債務が上回った場合、相続放棄した方が二人にとっては債務を背負わなくてすむので身の守りになります。

相続財産を取得すべきか?それとも放棄すべきか?そもそも相続放棄はできるのか?相談を受けた司法書士の解決方法を見てみましょう。

トラブルの解決方法

姉妹から相談を受けた司法書士の対応はとても適切だったようです。はじめに、問題の焦点となっている父親の債務について調査したのです。マンションの売却代金を上回るほどの借金があるのか、それともその逆なのか銀行や消費者金融を調べてみたところ、父親は業者からの借り入れを行っていないことが分かりました。いわゆる債務というのは税金の滞納のことで、その額は約120万円だったことが判明します。

ここで父親の残した債務は返せないほどの金額ではないことが分かりました。120万円は少ない額ではありませんが、マンションの売却代金はおそらくその額を上回ることが予想されます。

マンションの売却代金を調べてみると、2000万円前後(業者買取)で売却できると判明。ここで調査は一度終了し、司法書士は結果を姉妹に伝えます。そして姉妹は、相続放棄ではなくマンション売却を決断しました。

その後、司法書士は財産の差押さえ債権者になっていた役所と打ち合わせを行い、姉妹は無事に買い手を見つけて売却に成功します。姉妹は父親の借金を背負うことなくマンション売却を成功させ、プラスの財産を得ることになったのです。「債務と相続財産ではどちらの金額が上なのか?」という最も重要なポイントを突いた、司法書士の適切な対応が功を奏した結果といえるでしょう。

まとめ

今回の事例から何が学べるでしょうか?一つは、不動産を相続する場合、相続財産が差押さえられているケースもあるということ。そして、被相続者の債務によって差押さえられている場合、その金額によっては財産を相続すべきか否か、慎重な対応が求められるということです。

今回のケースでは、マンションの売却代金が債務をはるかに上回ったため、姉妹は相続放棄せず売却の道を選びました。債務が売却代金を上回る場合は、相続放棄する方が賢明な選択といえます。

不動産の相続では財産が差押さえられているケースがあり、そこに被相続人の借金が絡んでくることもあるので、同様のケースに見舞われたときは、慎重に対応する必要があります。

不動産相続の知識がなく、どうしていいか分からないときは、迷わず司法書士事務所や弁護士事務所などプロに相談しましょう。

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このページの監修
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引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(https://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
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