不動産相続トラブル【兄弟姉妹編】

このカテゴリーでは、不動産相続において、兄弟や姉妹間で起こりがちなトラブル事例を取り上げ、それぞれの内容や対処法などを取りまとめてご紹介します。

不動産相続において、兄弟姉妹間で起こりがちな揉め事とは?

遺産相続、特に分割が難しい不動産相続における兄弟や姉妹間の揉め事というのは一番起こりやすく、泥沼になりやすいと言えます。

それこそ、普段は仲がよかったとしても、いざ相続となれば、いとも簡単に対立関係となってしまいます。

特に注意したいのは、親が所有している実家を子どもが受け継ぐ相続問題です。

民法900条には「法定相続分」についての規定が設けられており、子どもや兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、子ども間、兄弟姉妹間では原則として相続財産を均等に分けることになっています。

ところが一般的には、法定相続人の間で遺産の相続割合を協議によって決める「遺産分割協議」が採用されることが多く、これがトラブルのもとになっているのです。

遺言書による指定がある場合は別ですが、もしそうでない場合、話し合いがうまくいかず、ついには訴訟沙汰になってしまうケースも少なくありません。

実際、最高裁判所が公開している「遺産分割事件数」によると、平成28年度に取り扱った遺産分割にともなう事件数は全国で「12,188件」。

もちろんすべてが兄弟姉妹間の争いとは言えませんが、相続問題の大半は子ども同士のもめ事であることが多いため、これに準ずる数の兄弟姉妹間のトラブルが起こっていると言っても過言ではないでしょう。

そして一度そうなってしまうと、当事者同士で決着をつけるのは困難です。第三者であり、また法律の専門家である弁護士に間に入ってもらうのが賢明です。

不動産の相続、弁護士に依頼すべきことについて詳しく見る>>

では、兄弟間での相続トラブルについて、代表的なものを見ていきましょう。

親と同居していた家の売却を兄弟から要求された

近年増加しているトラブルが、このパターンです。

親と同居していた方からすれば、実家は親の家であり、自分の家でもあるので、親が亡くなっても自分は引き続き住むことができると思ってしまうでしょう。

特に親の介護や面倒をみていた場合、その手間ひまを考えれば、独立して家を出て行った兄弟姉妹より分があると考えるのはある意味自然なことです。

しかし、法律上は被相続人である親が死去した時点で、その家は相続人全員による遺産共有状態となりますので、生前同居していた相続人に優先権があるということはありません。

同居していた方も、家を出て独立していた方も、法の上では同じ「法定相続人」であり、そこに格差は生じないというのが現行のルールなのです。

そのため、最終的には兄弟姉妹間で遺産分割協議を行い、実家をどうすべきなのか話し合うことになります。

ただ、実家にそのまま住み続けたい相続人と売却したい相続人では主張が真っ向から対立しますので、決着がつかない場合は家庭裁判所に持ち込むほかないでしょう。

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遺言書により格別な相続分の指定もないのに、相続不動産の登記名義
を単独の相続人の名義に変更された場合、どうすればいい?

そもそも相続不動産の登記名義を変更するには、相続人全員による協議を行い、相続人全員の署名と押印がされた遺産分割協議書が必要になります。

遺産分割協議書とは、法定相続人が全員で集まり、遺産相続について話し合った結果、全員一致で納得したことの証として作成されるものです。

1人の相続人が他の相続人に無断で単独名義の登記を行ったということは、遺産分割協議書を偽造したということに他なりません。当然、相続不動産の登記は無効です。

ただ、遺産分割協議は行わなければなりません。 一度こういったトラブルが起こった後では、当事者同士で納得のいく話し合いを行うのは困難です。

相続不動産の登記を無効にするための手続きにしても、専門家でなければわからないことが多いので、弁護士にする方が無難と言えるでしょう。

勝手に不動産の名義を兄の名前で登記された…について詳しく見る>>

相続時に、異母(異父)兄弟がいることが判明!相続はどうなる?

被相続人の子が相続人となり、その子にいわゆる腹違いの兄弟があっても、その兄弟は、れっきとした相続人であり、必ず遺産分割協議に参加させなければなりません。

そのような異母(異父)兄弟も遺産を相続できる権利を持つことに変わりはありませんので、異母(異父)兄弟がいると判明したのであれば、遺産相続の割合について対等に話し合う必要があるのです。

さもなければ、後々、訴訟沙汰にもなりかねないからです。決してないがしろにしてはなりません。

相続時に、異母(異父)兄弟がいることが判明!相続はどうなる?…について
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兄弟で実家を共有名義にすることにしたけれど良くない?

遺産分割協議で親名義の不動産をどうするか決着がつかないという場合に、妥協案として不動産を共有名義とすることがあります。しかし、これは問題の先送りにすぎず、将来のトラブルの火種にもなりますので、避けるべきです。

と言うのも、遺産分割協議では遺産分割協議書を作成することになりますが、これは法定相続人全員が内容に合意し、署名・押印しなければ遺産分割の効力を発揮しません。

つまり1人でも合意しなければ、遺産分割協議書は有効とならず、遺産分割の調停、審判が必要となります。

時間が経過すると、当該不動産の法定相続人は、自分の子や孫の世代の相続時に徐々に増えて、相続人全員の合意を得る遺産分割協議を行うことは至難の業となりますので、トラブルの芽は早めに摘んでおくことが大切です。

兄弟で不動産を共有名義で相続したけれど良くない?…について詳しく見る>>

親の生前に、1人だけ親から財産の贈与を受けていた
相続人の相続財産の取り分は減額できる?

親が生前、兄弟のうち誰か1人だけに多額の金銭などを渡していた…他の兄弟からすれば相続時に得られる財産が同等となるのは、納得しがたいことですね。そうした場合、贈与を受けていた相続人は「特別受益者」と定義され、その相続人の相続分は、生前の贈与分が控除されることになります。

つまり親の死後にもらうはずだった相続分の財産を、生前に贈与してもらったとみなされるわけです。

少額のプレゼントなどは対象外となりますが、まとまった金額や不動産を生前贈与されていた場合は特別受益の対象となります。

生前、1人だけ財産を多くもらっていた分は取り戻せる?…特別受益について
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親の面倒をみていたのは自分。他の兄弟より多く遺産をもらえる?

親の晩年の世話をした、介護をしたということ「だけ」で、他の兄弟よりも遺産を多くもらうのは難しいのが現実です。

親が亡くなった時点で、その子どもは同居の有無にかかわらず、同等の「法定相続人」となるからです。

その一方で、「被相続人の財産の維持や増加」に貢献した場合には、相続分が他の相続人よりも多くなる場合があります。これを「寄与分」といいます。

たとえば、「自営業だった父に代わって事業を行い財産を増やした」「親の生活費を援助した結果、財産が減らずに済んだ」などのような場合は、寄与分が認められることがあります。

ただ、そういった主張が認められるかどうかはまた別の問題となりますので、紛争になりそうな場合は弁護士に相談した方がよいでしょう。

親の面倒を見ていたのは自分。他の兄弟より多くもらえる?…寄与分について
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まず相続人となるのは誰なのか、法定相続人を確認する

「相続人」とは相続する人、「被相続人」とは死亡することで相続人に財産を残す人のことです。

「法定相続人」とは法律で被相続人の遺産を相続する権利が定められている人のことを指します。死亡した人の配偶者が生存している場合は、その生存配偶者は必ず法定相続人となります。それ以外の親族の誰が法定相続人となるかは、法律が定める優先順位により決定されます。

最も優先されるのは胎児(死産となる場合を除きます)を含む子供(直系卑属)です。親が死亡し、その子である相続人が親よりも先に亡くなっていると、親の遺産の相続権は、死亡している子の子供(被相続人から見ると孫)に受け継がれます。これを「代襲相続」と言います。例えば、被相続人Aの息子であるBがAよりも前に亡くなっており、BにはC・D2人の子供がいるとします。その場合、CとDは2人でBが生存していれば相続したはずのAの遺産を相続することができます。被相続人の子供も孫も被相続人よりも先に亡くなっている場合は同じようにひ孫が相続人となり、これを「再代襲相続」と言います。

法定相続分の例

配偶者と子供が相続人の場合

配偶者と子供が相続人の場合、法律では配偶者と子供が被相続人の遺産を1:1で相続することになっています。相続財産を600万円としていくつか例を挙げて説明します。

<例1>配偶者+子供2人の場合

→つまり、子供1人当たり150万円の相続となります。

<例2>配偶者+子供3人の場合

→つまり、子供1人当たり100万円の相続となります。

代襲相続となる場合

被相続人の子供Aが被相続人よりも前に死亡し、Aに子供がいる場合、Aの子供はAが生存していれば相続する被相続人の遺産の相続分をそのまま引き継ぎます。

<例3>配偶者+子供3人(被相続人の子供が三人兄弟で、そのうちの三男は被相続人よりも前に死亡し、その子供が2人いるとします)の場合

上記〈例2〉の場合、被相続人の遺産について三男の相続分は100万円です。その100万円を三男の子供が2人で相続する権利が生じます。したがって三男の子供1人当たりの相続額は50万円となります。

遺言書によって相続分について指定があると、その指定に基づく配分が優先されます

上述のように相続分が法律によって定められてはいますが、被相続人が生前に遺言書によって相続分を指定しているとその意思が優先されます。その結果、法律で定められている相続分を下回る相続分を遺言によって指定されたとしても、その指定に従わなくてはなりません。ただし、一定の法定相続人に認められる遺留分に反する指定は、遺留分減殺請求の対象となります。

遺言による分割方法の指定がなければ、相続人の話し合いで遺産分割を行うことができます

遺言による分割方法の指定があれば、それに従った遺産分割を行うこととなりますが、遺言による指定がなければ、共同相続人の協議により遺産分割を行うこととなります。

遺留分を知っておきましょう

遺言による相続分の指定が優先されると、法定相続人であるにも関わらず遺産をまったく受け取れない人が出てくるようにも思えます。例えば相続人が子供で、被相続人である父親が遺言で子供の相続分を無しとして指定するケースが起こりえます。これにより子供が遺産相続できないような事態を防ぐため、一定の法定相続人には「遺留分」として一定の遺産を受け取る権利が保障されます。

この保障により、遺言で指定された相続割合が遺留分より低くても、一定の法定相続人が遺留分を主張すると、遺留分として法律に定められる割合に応じ、遺産を相続することができます。遺留分の割合はケースによって異なりますが、法定相続人が子供だけの場合は被相続人の遺産の半分。これを子供の人数で均等割りした分が子供1人当たりの遺留分となります。

被相続人の財産の維持又は増加に特別な貢献をした相続人には寄与分があります

「寄与分」とは、被相続人の財産の維持又は増加に特別な貢献をした相続人が、他の法定相続人より多めに遺産を受け取ることができる制度です。兄弟が複数人いても「親の介護は1人でやっている」というケースも多いもの。精神的にも金銭的にも負担の大きい介護をしても、相続分は他の兄弟と同じというのは不公平ですよね。

本来被相続人が負担すべき医療費を負担した等、どのような財産的貢献をしたのかが明確であれば、寄与分として他の法定相続人より多めに遺産を相続することが可能です。財産的貢献の有無があいまいだと、寄与分として認められない恐れがありますので、しっかりと証明できる資料を保存しておきましょう。

寄与分が認められる場合の相続額

A・B・C3人の兄弟のみが相続人であり、Aが被相続人である父親の介護費用を負担していたとして、生前の被相続人の介護費500万円が寄与分として認められ、相続開始時の父親の財産総額が3200万円だとします。この場合、3200万円から寄与分の500万円を控除した2700万円が相続財産とみなされてABCで3等分した900万円ずつを各人が相続することとなりますが、Aさんについては、均等割りした相続分900万円に加え、寄与分である500万円を加えた1400万円が相続分となります。

特別受益は差し引かれます

「特別受益」とは「寄与分」と逆に、被相続人から生前に特別な財産的利益を受けた相続人の相続額から、特別な財産的利益の分が控除される制度です。複数の相続人のうち、ある相続人だけが生前の被相続人から特別に財産を付与されたり援助を受けたりしていた場合に適用されます。

兄弟の中で親から生前に財産の贈与を受けたり、援助を受けていた人がいた場合、兄弟間で相続額が同等となっては、他の兄弟にとって不公平感が生じるもの。そのため、特別受益者の相続分は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額に生前に贈与された価額を加えた額から法定相続分や遺言による相続分を算出し、特別受益を受けた分を控除した額となります。

特別受益が認められる場合の相続額

A・Bの兄弟のみが相続人で、兄Aが被相続人である父から生前に結婚資金として300万円の贈与を受けていたとします。相続開始時の被相続人の財産総額が2700万円だとすると、兄Aに贈与されていた300万円を加えた3000万円が相続財産とみなされ、法定相続分に従って2等分した1500万円がBの相続分となり、Aの相続分は、1500万円から300万円を控除した1200万円となります。

不動産の共有分割は最終手段

相続の対象となる遺産には、現金だけでなく所有している不動産や株式なども含まれます。不動産のような財産は物理的に均等に分けることが困難ですが、遺産分割の方法をいくつか紹介します。最もよく採られる方法が「代償分割」です。兄弟のうち1人が不動産を相続した場合、他の兄弟には相続分に値する金額を支払います。

次に「換価分割」。所有財産が不動産の場合、それを売却して現金化して、その現金を分割する方法です。代償分割では、不動産を引き継いだ人が代わりに代金を支払いますが、その代金を支払えない場合に換価分割の方法が採用されます。

土地や建物を複数の相続人で共有する「共有分割」という方法もありますが、たとえ兄弟姉妹であったとしても、他者と共有すると自分の都合で自由に処分することができなくなります。また、複数の相続人の共有とした財産は、時間が経過して相続人が亡くなった場合に、各相続人をそれぞれ相続する法定相続人が多数人になることにより、ますます権利関係が複雑になるため、おすすめできません。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(http://www.tsky.jp/)

このページは、不動産相続に強い「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士が監修しています。