相続税に使える「物納」制度

相続税は非常に高額な支払いが生じることもある税金です。場合によっては、手元に支払える現金がなくて困ってしまう、ということもあるかもしれません。

ただ、相続税に関しては「物納制度」が設けられています。その名の通り、現金ではなく物で納税をできる制度ですが、利用するためにはさまざまな条件が生じてきますので、注意してください。

相続税の物納制度を使えるケース

「延納かつ相続税が払えない」場合に認められる

相続税に限ったことではありませんが、どうしても税金を支払えない場合、基本的には役所などに申告をして税金の支払いを待ってもらうことになります。

相続税に関してはもともと「延納」という分割納付の制度が用意されており、基本的にはこちらを利用することになります。

しかし、延納したとしても支払いが困難であるという場合に、初めて物納が認められます。なお、物納で補える額は、原則として現金での納付が困難な範囲内のみとなっています。

特定物納制度について

納税の延期「延納」をすることになり、それでも支払いが困難な場合にのみ活用できるのが物納制度ですが、納税に関わる状況が途中で変わることもあります。

そこで利用できるのが、「特定物納制度」。

いったん延納にしてもらったものの、やはり物納でないと納税が難しいという場合に申し出を行い、承認されることで利用できます。

なお、特定物納制度は申告期限から10年以内に申請しなければならず、手続きに関しても書類の提出しなければならないなどの要件がありますが、どうしても延納を続けるのが困難ということであれば、利用を考えてみることをおすすめします。

物納の種類は自分では決められない

物納をする際、複数の不動産があるケースなどでは、不動産の優先順位があるかもしれません。また、どうしても手元に残しておきたいものがあるから、それ以外のものから物納をしたい、という意向を持つ方もいることでしょう。

財産にはいろいろな思いがあるものが多いですから、そのような考えを持つ人がいることも少なからずいるはずです。

しかし、物納は金銭による納税が困難な人に対する例外的、救済措置的な意味合いを持つ手法となっているため、そのような納税者の意向は原則として聞き入れられません。

物納ができる財産には「相続財産」「日本国内にある財産」という二つの前提があります。そして、以下のように優先順位が定められています。

原則として、上位に該当するものほど価値の算出や換金がしやすいため、上位の財産から物納財産を選んでいくことになります。つまり、不動産や上場株式などを差し置いて、動産から物納をしていくということはできないというわけです。

なお、特定登録美術品は上記の順位に関係なく物納することができます。

管理・処分が難しい財産には例外処置がある

物納を行う際には財産に対して優先順位が付けられますが、場合によっては物納ができないものもあります。それが「物納不適格財産」と「物納劣後財産」です。

「物納不適格財産(または管理処分不適格財産)」は、その名の通り、物納に適していない財産を指します。

具体的には、下記のようなものが該当します。

物納後に現金化することが著しく困難であったり、物納に伴ってトラブルがついてまわったりする「管理・処分が難しい財産」では物納ができないということです。

もし物納した財産がこれらに該当していると認定された場合、申請は却下され、20日以内に他の財産で再申請をすることになりますが、再申請は1回限りとなるので、注意しましょう。

「物納劣後財産」は、他に物納できる財産がない場合にのみ承認が通る、極めて承認が下りにくい財産です。

「違法建築の建物もしくは敷地」「地上権・永小作権・耕作権などが付いている土地」「物納申請者以外の方が使用している建物もしくは敷地」「接道義務を満たしていない土地」「休眠会社の株式」などがこれらにあたります。

こうした財産は「物納不適格財産」ほどではないにせよ、使用や現金化に制限がかかるものばかりなので、よほどのことがない限り、物納は受け付けてくれません。

物納せず売却して納税したほうが得をすることも

現金での相続税納税が難しい場合に用いられる物納ですが、場合によっては、物納するものを売却し、現金化した方がより多くの納税をできることがあります。

なぜかというと、物納した財産の価額は時価ではなく、相続税評価額で決まるからです。たとえば、時価で2億円、相続税評価額が1億5,000万円という不動産を所有していた場合、物納であれば1億5,000万円の納税として扱われますが、2億円で売却できれば、それだけの納税資金を得られることになるからです。

もちろん売却に際して税金や手数料などはかかりますが、それでも売却した方が得であるケースはしばしばあるので、物納する不動産を所有しているならば、売却も検討するべきでしょう。

ただし注意点として、不動産の売却には長い時間がかかるため、場合によっては相続税の納付期日までに購入代金が入金されない、ということも考えられます。

また、売却が難しい、評価額より売却額が低くなるということであれば、そのまま物納した方がメリットは大きくなります。その場合、譲渡所得税などはかかりません。

物納が減少傾向にある理由

物納は金銭面に不安がある人にとっては心強い制度に感じるかもしれませんが、近年では物納の申請・許可件数は減少傾向にあります。

平成11年時点では7,000件申請がありましたが、近年では1年間で100件に満たない年もあるなど、物納の申請は目に見えて減っています。これは、2006年の税制改正によって、物納手続きの厳格化が図られたことが原因としてあげられます。

物納をする際には、「延納によっても相続税の納付ができない」ことを「金銭納付を困難とする理由書」によって証明しなければなりません。それまでだと「近いうちに家を建て替える予定がある」など、あまり厳格ではない理由であっても物納が認められてきました。貯金を残した状態で物納をしていたという人も少なからず見受けられています。

しかし法改正以降は最低限の生活費を超える預貯金がある状態での物納は、ほとんどの場合において承認が下りなくなってしまっています。つまり、金銭的な困窮が審査によって認められない限り、物納はできなくなっているということです。

もしどうしても物納以外での納税方法が難しいということであれば役所に申し出をして見るべきですが、基本的には借金をしてでも、あるいは不動産を手放してでも相続税の納付をしないといけない、と考えておくべきです。

納税で悩んだら早めに税務署・税理士へ相談を

物納制度は相続税の納税が困難な場合の代替手段として利用されてきたものです。状況によっては有効に使える制度となっているので、もしものときに備えて、情報を知っておくのは決して損にはならないでしょう。

ただ、さまざまな制約がかかる上、現在では審査が厳しくなっており、承認件数も減ってきています。基本的には現金で納付ができるのが一番ではありますが、どうしてもというときには税務署や税理士など、専門的な知識を持つ人にしっかりと相談し、アドバイスを仰ぐようにしてください。

不動産相続トラブル【兄弟姉妹編】

親と同居していた家の売却を兄弟から要求された

遺言書がないのに、勝手に不動産の名義を兄の名前で登記された

兄弟姉妹編の一覧を見る

不動産相続トラブル【夫婦編】

子供がいない場合、配偶者は全て相続できる?

内縁関係で同居していた家は遺贈してもらえる?

夫婦間の不動産の生前贈与による相続税対策はした方が良い?

夫婦編の一覧を見る

不動産相続トラブル【親子編】

両親と絶縁状態。亡くなった時に相続できる?

赤の他人に全財産を譲ると遺言書に書いてある。取り戻したい!

親子編の一覧を見る

このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(http://www.tsky.jp/)

このサイトは「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士に監修していただいています。同氏は弁護士と行政書士、両方の資格を所持し、弁護士になる前は司法書士として活躍していたという経歴の持ち主。不動産相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士です。
メール・電話での相談やLINEからの予約にも対応しているので、気になる事があれば気軽に質問してみましょう。