押さえておきたい!不動産相続の流れ

本ページでは、不動産相続の手続きの進め方や、期限が定められている事柄への注意すべきポイントなどを取りまとめてご紹介していきます。

知っておきたい、不動産相続の手続きや期限

親御さんやご兄弟、あるいはお子さん…身内の方が亡くなるというのは大きな精神的ダメージを受けるものですが、いつまでも悲しんでばかりはいられません。

とりわけ不動産相続に関しては、想像しているよりもはるかに膨大かつ煩雑な手続きを行わなくてはなりません。

ここでは時系列に沿って、やらなければならないことを確認していきましょう。

①相続の開始

まず被相続人が死去した場合、自動引落されている公共料金、税金、ローン会社などへ直ちに連絡し、健康保険や年金に関する手続きを行います。また銀行口座は、名義人死去を銀行が知った時点で凍結され預金や出金ができなくなります。銀行口座の解約には、相続人全員の自筆署名や実印の押印などによる手続きが必要になります。なお、これらの手続を行うと、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがありますので、ご注意ください。

②遺言書があるかどうか確認

公正証書遺言ならば公証役場にて確認できるので問題はありませんし、家庭裁判所の検認も不要です。他方、自筆証書遺言などの場合は、遺言書がどこにあるか、金庫、机、額縁の裏などしっかりと探す必要があります。加えて、自筆証書遺言が封印されている場合には家庭裁判所の検認を受けなければならず、独断で開封することは過料の対象になります。

③相続人の調査・確定

法定相続人が誰と誰になるのか、忘れている相続人はいないかなどを、戸籍の確認まで行った上で調査・確定しなければなりません。当事者だけでは難しい場合は、弁護士や司法書士などの助けを借りましょう。

また、法定相続人となる方の中で、未成年者や重度の認知症患者などがいる場合は、相続に関する手続きにあたり、家庭裁判所にて後見人等の選任手続きが必要です。

④相続財産・債務の調査

死去された方(被相続人)の名義だった不動産物件の評価額や、現金などの財産、債務の有無とその額を調査します。被相続人により保管されていた書類や郵便物の確認や、銀行やクレジットカードの個人信用情報の開示請求で相続財産および債務の金額を確定します。

⑤相続放棄・限定承認

遺産に債務が多い場合、相続放棄や限定承認で債務を相続しないという対応も可能です。ただし、相続放棄と限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に手続をしなければなりません。この期間を熟慮期間と言いますが、短期間では相続財産の把握が困難な場合等、特別な事情があれば、3ヶ月以内に対応できない場合でも相続放棄又は限定承認が認められる場合があります。

⑥所得税・消費税の申告(準確定申告)・納税

被相続人が個人事業主であった場合、相続開始から4ヶ月以内に、被相続人が生前に得ていた所得に対する所得税ならびに消費税の納税作業を行います。ただ、被相続人が一般的なサラリーマンであれば、勤務先による年末調整により、準確定申告は不要となる場合が多いといえます。なお、準確定申告を行う場合にも、相続人全員の署名等が必要となります。慌てないよう時間に余裕を持って対応するとよいでしょう。

⑦遺産分割協議書の作成

遺言書の内容や財産・債務の調査、法定相続割合などを踏まえ、遺産分割協議にのぞみます。その際は単純な遺産の総額だけでなく、相続税や所得税、消費税なども考慮すべきです。

相続人全員が合意したら、その内容を遺産分割協議書にまとめて全員で署名・実印による捺印を行います。

⑧遺留分減殺請求

被相続人の遺言書にて相続人以外の第三者や特定の相続人のみに遺産を相続させると書かれている場合、その他の相続人は、基本的に遺産を受け取れなくなります。ただ、このような場合でも、一定の法定相続人には、遺留分として一定の相続財産の取得が保障されます。この保障を受ける権利者の取り分は「遺留分」といい、遺留分権利者は、受遺者等に対して、遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈等の減殺を請求すること(遺留分減殺請求といいます)ができます。

遺留分減殺請求権は相続の開始と、減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間行使しないとき、もしくは相続の開始の時から10年を経過する前に請求しなければいけません。期間を過ぎると請求できなくなるのでご注意ください。

⑨不動産の名義変更(相続登記)の必要書類

遺産分割協議の内容に応じて、不動産の所定の登記申請書に加え、各種の必要書類も添付する必要があります。遺産分割協議を経て相続登記をする場合は、遺産分割協議書も必要となり、相続人全員が実印で捺印して相続人全員分の印鑑証明書も添付します。

その他にも、不動産を相続する相続人の住民票や固定資産評価証明書なども必要になります。ご自分で行うことも可能ですが、かなりの手間暇がかかりますので、弁護士や司法書士のサポートを受けることが賢明です。

⑩相続税申告・納税

基本的には被相続人の死去を知った日から10ヶ月以内に行わなければなりません。手続きは、相続不動産や財産の範囲、評価額などが分かる資料を揃え、税務調査を受けた上で、相続税の申告、納税を行います。

なお、相続税を一度で払えないという場合には、数年にわけて納税する「延納」や、不動産等の物で納税する「物納」の申請も行うことができます。

以上の通り、不動産相続には、多くの手続き伴います。すべてを当事者だけで行うことも決して不可能ではありませんが、専門家の助けを借りた方がスムーズに行えるはずです。信頼できる弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

⑪相続税の軽減措置の適用

相続税は相続人や相続するものによって軽減措置を受けることができます。例えば相続人が被相続人の配偶者だった場合、配偶者が取得する遺産の課税価格が法定相続分もしくは1億6,000万円までのいずれか多い額までは配偶者には相続税がかからない「配偶者に対する相続税額の軽減」があります。

その他にも被相続人から宅地を相続した場合、特例として軽減措置を受けられる場合があります。事業の継続や相続した住居に住み続けるといった一定の条件を満たした場合、330㎡までの面積に限り相続税の課税価格に算入される金額について最大80%の減額ができる場合がありますので覚えておきましょう。

期限のある手続きだけを抜き出すと

相続放棄、限定承認(熟慮期間3ヶ月)

熟慮期間内に相続放棄または限定承認をしなかった場合、被相続人の債務を相続することになります。そうなってしまうと、債務を相続したものとして認識され支払請求を受けることになります。もし債務を支払わずに放っておくと、裁判を起こされ、判決により強制執行がなされる可能性もあります。そうなると給与や預貯金の差し押さえが行われて生活ができなくなる可能性もあるので、被相続人が亡くなった場合は債務がないかを必ず確認しましょう。また、相続人の事情によって相続放棄または限定承認の熟慮期間の伸長を請求し、家庭裁判所において伸長することもできます。

準確定申告(相続開始後4ヶ月)

準確定申告を期限内に行なわずに滞納してしまうと、税務署から差し押さえ予告通知が届きます。その後に準確定申告をした場合、期限内に申告しなかった時に発生する無申告加算税や、税金を決められた期限内に納付しなかったとして延滞税が発生。高い税率で痛い出費を支払うことになるかもしれません。準確定申告は後回しにしたりせず、期限内に必ず申告するようにしましょう。準確定申告には各相続人の名前や住所などを記した書類が必要となるので、申告の際は忘れずに提出してください。

遺留分減殺請求(相続が開始し、遺留分を侵害する遺贈等があったことを知ってから1年間)

被相続人の遺言が特定の誰かに全ての遺産を贈与するといった内容だった場合、期間内に遺留分減殺請求をしておかないと本来受け取れる筈だった一定の遺産すら受け取ることができなくなります。相続財産には土地や建物が含まれていることもあるので、相続人が住んでいる家が被相続人名義であって、その家が第三者に遺贈されると、受遺者から追い出されてしまう可能性も否定できません。遺留分減殺請求は弁護士に依頼すれば、弁護士から対応は可能ですので、自分で対応できない場合は弁護士に相談してみましょう。

相続税の申告、納税(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月)

相続税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告及び納税をしなければいけません。もし納付すべき相続税額があるにもかかわらず対応しないままに申告期限を過ぎてしまうと、税務署から相続税申告の督促書が届きます。これを放置してしまうと次は財産差し押さえの通知書が届き、遺産を差し押さえられる事態に発展。その後に相続税の申告をしても、無申告加算税と延滞税が課税されるので高額な納税をしなければならなくなります。

遺産が土地や建物で、10ヶ月以内に相続税を支払うことが難しいといった場合には、一定の条件を満たしていることで納税期限の延長もしくは物で納税することが可能です。

相続税の軽減措置の適用(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)

相続税の軽減措置を受けるためには、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行わなければいけません。遺産分割を行う場合、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらないと、配偶者や宅地による特例の軽減措置を受けられなくなってしまいます。

期限はないがデメリットがあるもの

遺産分割

遺産分割に期限はありませんが、長期間放置すれば不都合が生じます。不動産登記や株券の名義変更、預貯金の払い戻しには遺産分割協議が成立した際に作成する遺産分割協議書が必要となります。そのため、遺産分割協議をしないままだと遺産分割協議書も作成できず、相続に伴う様々な手続きを行えないのです。特に不動産は登記名義を変更しないと売却や抵当権の設定ができないといったデメリットがあります。また、登記名義を変更しなくても固定資産税や都市計画税などは課税されるので注意が必要です。

不動産相続登記

相続人が不動産を相続した際、被相続人から登記名義を変更しないまま、その相続人自身も亡くなった場合、さらに不動産について権利を取得する相続人が多数人になることで、相続登記の際に多くの書類や資料が必要となってしまいます。

例えば被相続人の相続人である子が死亡し、祖父から孫へと不動産の登記名義を変更する場合は、権利の移転過程を示すため、被相続人の子に一度名義を変更しなければいけません。その上で被相続人の子から孫への登記名義の変更が必要となるため、相続登記についての手続的負担が大きくなるといえます。

そもそも不動産ってなに?

そもそも、不動産とは一体何を指すのでしょうか?

また、万が一不動産を相続することになった場合は何をすればよいのでしょうか?

不動産とは「動かせないもの」のことを指す

不動産を一文字ずつ読んでいくと、「動かせないもの」であるように読めます。この捉え方は、あながち間違ってはいません。

実際に民法の第86条からは以下のような意義が読み取れます。

「不動産とは、土地及びその定着物。その他の物は動産とする」

ここでいう土地は、単に土の表面だけを指しているのではなく、法令の規定により区画された地下や地上まで含まれています。

また、この場合の定着物というのは、建物(住宅)や木、植物、庭石など動かすことができないものを指します。

相続登記が困難な不動産は意外に多い

先祖代々承継してきた土地建物の登記名義の変更が行われないまま放置されていた場合、新たに登記名義を変更をするための書類が揃えることが困難になる可能性があります。

例えば、以下のようなケースです。

Aさんは、父親が他界したことで相続した、父親が所有していた実家の土地を売却することにしました。その土地は、Aさんの父親が祖父から相続した土地で、仮に、実家の土地の名義がAさんの祖父名義になっていたとします。

この場合、Aさん自身へ登記名義の変更を行わなければ実家を売却することはできません。

Aさんの土地として登記名義の変更を行うためには、もともと土地を所有していた祖父の相続人を確認する必要があり、祖父を相続したすべての親族から、Aさんの父親が実家の土地を取得したことについて了解してもらい、遺産分割協議書を作成の上、印鑑証明書をもらう必要があります。この場合、複数の相続を経ることで、数十名単位で祖父の遺産を相続した相続人が存在している可能性もあり、個人で手続きを行うのは非常に骨の折れる作業といえるでしょう。

相続時に確実に登記名義を変更することが重要

上記の例のように相続登記が困難となる事態を防ぐためには、どのような対策を行えばよいのでしょうか?

不動産の所有者が亡くなったタイミングで、必ず被相続人から相続人へ、登記名義の変更を行うことが重要です。

さらに、名義人となった相続人が死亡した際、その名義人を相続する相続人においても名義変更を適時に行えば、今回の例のような事態は防げる可能性が高くなります。

代々相続登記がなされていない不動産の相続については、専門家に協力を求める

上述のような作業は、個人で行おうとすると時間も労力も負担といえます。そのため、弁護士や司法書士などの専門家に対応を依頼することでスムーズに進められるはずです。

なお、Aさんの父親が亡くなってから3ヶ月以内であれば、相続放棄を行うことで固定資産税の支払い義務を免れることが可能です。

特別な事情がある場合には、被相続人の死後3ヶ月を経過していても相続放棄を行うことができる場合がありますが、被相続人と相続人が長期間にわたり没交渉であって、相続財産が全くないと信じ、相続人が相続財産を調査することも著しく困難な事情があったというような、あくまで例外的な場合に限られます。

不動産の相続に伴う手続きは、時間が経てば経つほどスムーズにいかなくなると考えられます。速やかに専門家に相談するのが一番だといえます。

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このページの監修
東京スカイ法律事務所

東京スカイ法律事務所公式HP

引用元:東京スカイ法律事務所公式HP
(http://www.tsky.jp/)

このページは、不動産相続に強い「東京スカイ法律事務所」の田中健太郎弁護士が監修しています。